銀行ネットワーク冗長化の実践アプローチ――止められない業務にどう備える?

いまや、日々の業務を支えるネットワークだからこそ、トラブルが起こる前の備えが重要になります。しかし、保守期限や多拠点運用、夜間切り替えなど、気になることはあっても「大きく変えるのは難しい」と感じ、なかなか踏み出せないといったケースも多いのではないでしょうか。そうした見過ごされがちな不安に、どう備えるか。――実は、大きな変更を伴わなくても、業務を止めないよう工夫した構築例もあります。

目次

単なる入れ替えでは終わらない、ネットワーク更改で問われる視点

拠点間の通信、業務システムへのアクセス、ファイル共有、無線利用の拡大など、どの業種もネットワークに依存し、 「つながっていて当たり前」が前提になってきています。その一方で、普段は問題なく見える環境でも、保守期限の到来や機器の経年劣化、拠点増加による構成の複雑化が、将来のリスクとして表面化しやすくなっているのも実状です。

自治体や医療機関、教育機関、製造業など業種はさまざまですが、ネットワークが止まれば窓口業務や診療、授業、現場の連携といったそれぞれの業務に必ず影響が出ます。民間企業においても、ネットワーク障害は顧客対応や社内業務の停滞につながる可能性があります。加えて、限られた担当者で複数拠点を見ている現場では、障害が起きたときに「誰が、どこを、どう確認するのか」が属人的になりやすい点も見過ごせません。

こうした状況で重要なのは、単に新しい機器へ入れ替えることではなく、どこに停止してしまうリスクが残っているかを洗い出し、業務を止めないためにどう手当てするかを考えることです。特に、冗長化が不十分な箇所、監視しにくい箇所、夜間や遠隔地での対応負荷が大きい箇所は、平常時ほど見落とされます。本記事では、ある金融機関の取り組みを例に、実際どのような観点でリスクを捉え、見直しを進めていくのかをもう一歩踏み込んで整理します。ネットワーク更改で問われるのは、「どれだけ新しくするか」ではなく、継続して使い続けられる構成になっているか――その視点をもって見直していくことが重要です。

既存基盤を活かす、清水銀行が選んだネットワーク更改の考え方

静岡県を中心に79店舗を展開する清水銀行は、本部を含む広範囲の通信ネットワークを日常業務の基盤として運用しています。今回の更改の直接的なきっかけは、導入からおよそ7〜8年が経過したネットワーク機器の保守期限でした。ただ、当時は大きな障害もなく安定して稼働しており、全面刷新を急ぐ状況ではありませんでした。そこで重視されたのが、「これまで安定して運用してきた環境をどう活かすか」です。同行 事務部・統括役の勝見貴郊氏は、長年問題なく稼働してきた構成そのものに価値があり、その土台を大きく変えることは新たなリスクにもなりうる、と判断したと語っています。

結果として、更改の軸になったのは「刷新」ではなく「継承」でした。既存構成を踏まえながら、必要な箇所に絞って冗長化と監視性を強化する。派手さよりも、業務を止めない確実性を優先した進め方です。今回の取り組みは、既存基盤を活かしながら、銀行ネットワークの冗長化と可視化を着実に進めた点に特徴があります。何もかもを入れ替えるのではなく、長く安定してきた構成を前提に見直しをかけ、将来のリスクに備えた形です。

保守期限と多拠点運用の負荷にどう向き合ったのか

更改の背景には、保守期限や経年劣化への不安に加え、一部の構成で冗長化が十分とはいえないという点がありました。そのため、障害が起きたときに業務停止などの深刻な影響につながりかねないリスクが残っている状況でした。

こうした状況を踏まえ、清水銀行では本部から営業店まで一貫して冗長構成を基本に見直しを進めています。全システムの通信を集約する本部の中核部分だけでなく、ATMやファイルサーバーなど利用頻度の高い領域にも手を入れました。同行 事務部・次長の片瀬智尋氏は、「一台の故障で業務が止まる状態は銀行として許容できない」と話しており、その考えから冗長化の範囲を広げています。

また、移行の進め方もポイントでした。営業店ネットワークの切り替えは、ATMを止めないことを前提に21時半以降の夜間作業で実施されています。限られた時間内に作業を完了させるには、事前の工程設計と役割分担が欠かせません。加えて、関係者同士がすぐに相談・判断できる体制が築けたことも、こうした更改を進めるうえで大きな基盤となっています。

自動復旧と可視化で変わる、ネットワーク障害対応のかたち

更改後、大きく変わったのは障害への備えです。構成面だけでなく、運用面でも改善が進みました。清水銀行では、ネットワーク機器の一括管理や自動設定、障害時の迅速な復旧を支援する仕組みを活用し、従来の運用を活かしながら復旧性を高めています。これにより、設定を手作業で一から行う負担が減り、現地対応者のスキルに依存しすぎない体制が整いました。多拠点を抱え、夜間対応が前提になりやすい環境では、この差は決して小さくありません。

加えて、24時間365日のネットワーク監視とポータル上での機器の可視化により、ネットワーク全体を見渡しやすい環境も整いました。単にアラートを受けるだけでなく、「どこで何が起きているか」を関係者間で共有しやすくなり、初動判断のスピードも変わってきます。

成果は、派手な数値で示されるものではありません。ただ、ネットワーク障害が経営層に報告されるような事態が起きず、現場からの問い合わせもほとんどないという状況は、日常業務が止まらず回っていることの表れです。勝見氏は、「蛇口をひねれば水が出るのが当たり前であるように、ネットワークも『使えて当たり前』の状態を維持することが最も難しい」と語っています。

止められない現場の更改を考える人に参考になる視点

ネットワーク更改を考えるとき、どうしても新機能や大きな変化に目が向きがちです。しかし、止められない業務を抱える現場では、「変えないほうがよい部分」を見極める視点も欠かせません。清水銀行の取り組みは、長年の運用を活かしながら、保守期限や冗長性、監視のしづらさといったリスクを認識し、しっかりと手を打っている点がポイントです。

これは金融機関に限らず、多拠点運用を支える企業や自治体、医療機関、教育機関、製造業にも当てはまります。全面刷新が常に最適解とは限らず、既存基盤をどう評価し、どの範囲を優先して見直すかによって、更改の難易度も現場負荷も大きく変わります。提案する側にとっても、新しさを強調するだけではなく、「なぜ変えるのか」と同時に「なぜ変えないのか」を整理できるかが重要です。

保守期限が近づいているが、現時点では大きな不具合は出ていない。拠点が多く、夜間作業や遠隔対応の負担が重い。障害対応が現場任せになりがちな構成が残っている——。そうした状況に心当たりがあるなら、清水銀行の事例は具体的な判断材料になるのではないでしょうか。どこを継承し、どこに手を加えたのか。実際の進め方を確認することで、自社・自組織で見直すべきポイントが見えてくるはずです。

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R.N.

これまで沢山のお客様へ当社の魅力を発信してきました。
データシートやカタログの数字だけでは伝わらないアライドテレシスらしさを、自分の言葉で皆さまにお伝えできたらと思います。
好きなものは小説とドラマと深夜ラジオ。特技は焼き魚を綺麗に食べること。

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