IoTによる監視とは?行政機関・学校・病院に注目される理由や導入時の注意点を解説

近年、行政機関・学校・病院において、防犯対策の強化や設備保全、快適な環境維持などを目的として、IoTを活用した監視の導入が検討されるようになりました。
本記事では、IoTによる監視の基礎知識や行政機関・学校・病院が導入を進める背景、導入するメリットについてわかりやすく解説します。

目次

IoTによる監視の基礎知識

IoT(Internet of Things)とは、「物のインターネット」と直訳される通り、電子機器・家電製品・車・建物などをインターネットに接続して、データ収集や遠隔操作を可能とする仕組みです。
身近な例では、デバイスに「電気をつけて」「音楽をかけて」と話しかけることで、特定の電子機器を遠隔操作できる製品が挙げられます。近年は、こうしたIoT技術が監視業務の分野でも活用されています。

IoTによる監視とは?

IoTによる監視とは、特定の場所にカメラやセンサーを設置して、ネットワーク経由で対象を遠隔からリアルタイムで監視する仕組みです。
IoTを活用することで、以下のような高度な監視業務が可能になります。

  • 不審者の自動検知などの防犯強化
  • 設備の稼働状況の確認
  • 異常時の自動停止や遠隔操作の実現
  • 異常の発生予測や検知

これにより、異常が発生しても被害の拡大を防ぎやすくなるほか、複数の場所や設備をIoT機器で監視できるため、業務効率化にもつながります。

IoTによる監視システムの仕組み

IoTによる監視は、まずインターネットに接続されたカメラや各種センサーが監視対象のデータ収集を行い、サーバーやクラウドにリアルタイムで送信します。
次に、送られてきたデータを管理システムやAIが分析し、異常や故障の検知に活用します。また、蓄積されたデータは検知精度の向上のために、分析モデルの改善に活用される場合もあります。
そして、データの分析結果をもとにあらかじめ設定した条件に応じてアラートを通知したり、必要に応じて設備を停止したりします。
この仕組みによって、人間では検知できない微細な異常や見落としやすい問題を発見しやすくなります。そのため、IoT機器を監視業務に導入すると、高い精度での防犯対策や設備保護、施設内の快適な環境維持などが可能になるのです。

IoTを活用した監視が注目されている理由3選

IoTによる監視は、行政機関・学校・病院・企業など、幅広い業種で需要が高まっています。以下では、IoTによる監視が注目されている背景を、3つの理由に分けて解説します。

DX推進とデータ活用の拡大

昨今は、国や自治体によるDX推進に伴い、多くの施設で通信環境の整備が進んでいます。これにより、IoTに対応した機器やセンサーの導入ハードルが下がり、広範囲でのデータ収集が現実的となりました。
また、収集したデータをAIなどで分析する取り組みも広がっており、ビッグデータを防犯や設備保全に活用できるようになりました。
これにより、監視業務は「トラブルが起きてから対応する」「設備は壊れてから直す」といった事後対応から、異常の予兆を事前に予測・検知して問題の発生自体を防止するものへと変化しつつあります。
そのため、施設の安全性の向上やサービスの質の向上といった観点から、IoTによる監視が注目されているのです。

人手不足の解消

インフラ施設や鉄道などの交通機関では管理対象が多岐にわたり、設備の設置個所も広範囲に及びます。また、学校や病院などでは利用者の安全を守るため、特にきめ細かな監視が求められます。
しかし、近年は労働人口の減少により、監視業務を行うスタッフの確保が難しくなっています。そこで、IoTによる監視業務の自動化・遠隔化が注目されているのです。
IoTを活用することで、少数の人員でも十分な監視体制を構築できます。また、人による常時監視の負担を軽減し、異常発生の通知を受けてから担当者が駆けつけるオンコール体制への移行にも期待されています。

障害時や災害時の迅速な復旧対応と情報連携

突発的な障害や災害による行政機関・学校・病院の機能停止は、人命や住民生活に深刻な影響が発生するため、迅速な復旧対応が求められます。
従来では、設備が故障した場合、現場で故障の原因を調査してから復旧作業を行うのが一般的でした。
しかし、IoT機器を監視業務に導入することで、センサーにより電圧の変化や振動の発生などの異常を検知・記録することができます。稼働状況のデータから故障原因の推測が可能となるため、その後の復旧作業がスムーズになるのです。

特に、災害時は設備の稼働状況や道路・河川・港湾の状況などを的確に把握し、関係機関が情報連携をすることで、被害を最小限に抑えることが重要になります。
そこで、IoT機器を監視に活用することで、以下のような防災が可能になります。

  • 住民への避難情報などの発信
  • 緊急車両などが通行できるルートの確保
  • 要救助者がいる地域、被害が大きい場所の把握

災害時には通信インフラが損傷する可能性もあります。IoT機器と監視拠点の間、監視拠点と関係機関の間などにバックアップ回線も用意しておくと、より強固な対策につながるでしょう。
監視制御ネットワークの回線を 冗長化 した事例や、災害時に役立つStarlinkについてもご紹介していますので、こちらも合わせてご覧ください。

IoT機器を監視業務に導入する際の注意点3選

行政機関・学校・病院におけるIoTによる監視の導入は様々なメリットがある一方で、IoT機器特有のセキュリティリスクや運用面での課題も存在します。
以下では、IoTによる監視を導入する際に確認すべき3つの注意点を解説します。

サイバー攻撃の起点になりやすい

IoTによる監視に使用されるカメラやセンサーはネットワークに接続されるため、設置や管理が不十分な場合、サイバー攻撃の起点にされるリスクがあります。
IoT機器が攻撃を受けると、映像データが外部に流出したり制御システムに侵入されたりして、甚大な被害を受けることが考えられます。

特に、行政機関・学校・病院は、住民情報や児童生徒の情報、医療情報といった重要な個人情報を扱っており、業務停止時の社会的影響も大きいです。そのため、近年ではこれらの機関をターゲットに、サーバー上のデータを暗号化して金銭を要求する ランサムウェア 攻撃が増加しています。
サイバー攻撃を防ぐには以下のようなポイントに注意して、IoT機器自体を監視・管理することも欠かせません。

  • IoT機器が不審な挙動をしていないか?
  • IoT機器の設置場所をすべて把握しているか?
  • IoT機器の ファームウェア などの更新は行っているか?
  • トラフィック 量の大きな変化やエラーの発生しやすい箇所はないか?

実際に、日本国内でもサイバー攻撃の被害が発生しているため、IoTによる監視を導入する際はデータの暗号化やアクセス制御などの対策を徹底し、強固なセキュリティを構築することが不可欠です。

ネットワーク環境の確認が必要

IoT機器によるリアルタイムな映像送信などでは大量の通信トラフィックが発生するため、遅延が少なく安定したネットワーク環境が欠かせません。
無線で接続する場合は、電波の届きやすい環境であるか確認が必要です。行政機関・学校・病院では、建物に強固な鉄筋コンクリート造を採用しているケースが多く、防火壁や金属製ドアも多用されています。これらは、電波の遮断や反射を起こしやすく、IoT機器の無線接続が不安定になる原因となります。
特に、病院では医用電気機器や医用テレメータをはじめ、多種多様な電波利用機器が使われるため、機器同士の電波干渉も発生しやすい環境です。

有線接続でIoT機器を使用する場合は、配線環境の確認が欠かせません。エアコンやエレベーターなど大きな電力を扱う設備の周辺では、電源ケーブルやモーターなどから発生する電磁ノイズにより、通信エラーやパケットロスが起こる可能性があります。
また、基幹システムと同じ有線ネットワークを共有する場合は、大容量の映像データなどが通信帯域を圧迫する可能性があるため、通信の優先度を管理する帯域制御が必要です。

特にサイズの大きな映像データを扱う監視カメラのネットワークについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

監視対象に応じた異常の基準を明確にする

監視業務でIoT機器を活用すると、これまで以上に軽微な変化を検知しやすくなります。しかし、些細な変化まで通知対象にすると、監視業務の負担が増加し、重要な異常への対応が遅れる原因にもなります。
そのため、監視対象ごとに設備専門のスタッフと相談しながら異常の基準を明確化して、アラートを出す条件や対応レベルを定義することが必要です。また、通知やアラートが発生した場合の現場の対応手順も定めなければいけません。
IoTによる監視を効果的に運用するには、「些細な異常で現場が混乱する」「異常を検知できても現場の対応が不十分」といった事態に陥らないようにしましょう。

IoTによる監視の導入を成功させるための4つのポイント

行政機関・学校・病院でIoTによる監視を成功させるには、導入前の準備から導入後の運用に至るまで、4つの重要なポイントがあります。

IoTによる監視の導入目的を明確にする

行政機関・学校・病院などの施設では、現場ごとに解決したい課題が異なることが多いです。IoTによる監視を導入する際は、「何となく便利そうだから」ではなく、監視業務の効率化や防犯面の強化、設備の保守などの目的を明確にしましょう。
目的によって、導入にかかる費用や選ぶべき機器、必要なセキュリティ対策、構築すべき運用体制なども大きく変化します。IoTによる監視を成功させるには、施設が抱える課題を整理し、導入後のゴールを明確に設定することが重要です。

適切なネットワーク環境を整備する

IoT機器を適切に運用するには、施設内のネットワーク環境を適切に整備することが重要です。
まず、監視用のIoT機器とその他のシステムを同じネットワークで運用する場合、双方のトラフィックが集中し、通信速度の低下や業務への支障につながる可能性があります。そのため、帯域制御によって通信量を調整し、必要な通信が安定して行える環境を整えなければなりません。

またネットワーク障害や停電が発生した場合でも、IoT機器のデータ通信が途切れない仕組みを整えておくことも欠かせません。複数のネットワーク回線を確保して通信経路を冗長化させたり、無停電電源装置の設置などによる電源の冗長化を図ったりすることで、安定した監視体制を維持しやすくなります。

さらに、IoT機器がサイバー攻撃の起点となるのを防ぐには、アクセス制御も大切です。IoT機器が不要な機器やシステムに接続できないよう、IPアドレスや通信先の制限などを行い、必要な範囲でのみ通信ができる状態にしましょう。

監視用のIoT機器は様々な種類があり、設置場所も広範囲になりがちです。
機器ごとにバラバラに管理するより、ネットワークにつながることを活かしてまとめて管理すれば負荷を抑えることができます。
アライドテレシスのネットワーク管理ソリューション「AMF PLUS」と「Vista Manager シリーズ」は、ネットワークの接続状態と一緒にIoT機器もマップ上で可視化してアクセス権限の管理などを行えます。

小規模から導入して段階的に拡大する

IoTによる監視を導入するには、IoT機器やネットワーク機器の購入費用、システム設計の費用などが発生します。そのため、最初から全ての場所や設備にIoT機器を導入するのは、コスト面から現実的ではありません。
まずは、「人の出入りが多い場所」「サーバールームの空調」など、重要な設備や場所を絞って導入するのが現実的です。
小規模からスタートすれば、万が一選定したセンサーが現場の環境に合わなかった場合でも、最小限のコストでプランや機器の変更が可能になります。また、段階的に導入を進めることで、現場のスタッフが新しい監視業務の手順に適応するための時間を確保しやすくなるというメリットもあります。

導入後の効果検証を行う

IoTによる監視は、導入直後から最適な運用ができるとは限りません。そのため、導入後も以下のようなポイントを中心に効果検証を行いましょう。

  • 誤検知の有無を確認し、通知やアラートの最適化を行う
  • 人件費や労働時間の削減にどの程度の効果があったかを検証する
  • トラブル発生から復旧までの時間がどの程度短縮されたかを確認する

導入拡大を進めるにあたっては、蓄積されたデータや事例から効果検証を繰り返し行い、IoT機器や運用体制を最適化させることが重要です。

まとめ

昨今では、DX推進や人手不足の解消、災害時の迅速な情報連携などを背景に、行政機関・学校・病院や企業などでIoTによる監視の需要が高まっています。
しかし、導入にあたってはセキュリティ対策やIoT機器自体の適切な管理、有線・無線それぞれの特性に応じたネットワーク環境の整備などが必要です。
まずは明確な目的を設定し、小規模な導入から効果検証を繰り返して、運用を最適化していきましょう。

  • 本記事の内容は公開日時点の情報です。
  • 記載されている商品またはサービスの名称等はアライドテレシスホールディングス株式会社、アライドテレシス株式会社およびグループ各社、ならびに第三者や各社の商標または登録商標です。

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IT初心者やエンドユーザーに向けて、「難しいことをわかりやすく」をモットーに執筆中。
仕組みの背景や用語の意味など「いまさら聞けない」ことも丁寧に説明するスタイルが信条です。
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