どこでもつながる時代に、なぜ私たちはまだ電源を探しているのか

会議室へ移動するとき、外出先で少し作業するとき、ノートPCの電源ってどうしていますか?軽いはずのアダプターも、ずっと持ち歩いているとじわじわ重く感じますし、とりあえずコンセントのある場所を探してしまうこともあります。どこでも仕事ができるくらい便利になったのに、電源まわりにはまだ少し面倒くささが残っている。今回は、そんなところから始まった電源の話です。

目次

きっかけは、ノートPCの充電器探し

最近、ノートPC用の電源まわりを少し整理したくなりました。きっかけは単純で、社内を移動するたびに電源アダプターを持っていくのが、地味に面倒だったからです。
会議室に移動するときも、外出先で少し作業するときも、できれば荷物は減らしたい。PCもスマートフォンも、なるべく同じ充電器やケーブルで済ませられたら楽ですよね。

でも、いざ探し始めると、これが意外とややこしい。
65W、100W、240W、PD対応、EPR対応、eMarker搭載。見れば見るほど、ただ充電したいだけなのに確認することが多いな……となってきます。しかも、同じUSB Type-Cに見えても、どれも同じように使えるわけではありません。

電源って、普段はあまり意識していないだけで、意外と私たちの行動を左右しているのかもしれない。充電器を探しながら、そんなことを考えるようになりました。

“電源アダプターを持って移動するの、地味に面倒”

ノートPCは軽くなったし、クラウドサービスやWeb会議ツールも使えて便利になりました。ネットワークにつながれば、社内でも外出先でも、たいていの業務は進められます。でも、電源アダプターだけはなかなか手放せません。
会議室に移動するだけでも、念のため持っていくか迷うし、フリーアドレスの席に座る前には、コンセントがあるかどうか、その位置をなんとなく確認している。外出先であっても、PCのバッテリー残量を見ながら、次に電源を取れる場所をなんとなく気にしている。

正直、ひとつひとつは大したことではありません。でも、こういう小さな確認が積み重なると、電源って思っている以上に仕事のしやすさに関係しているのだと感じます。
ネットワークはどこでも使えるようになってきた。でも、電源はまだ探している。PCは軽くなったのに、鞄の中には電源アダプターがある。身軽になったようで、まだ電源に縛られている感じがしませんか?

電源がややこしいのは、「ある/ない」だけではない

ノートPCの電源について少し調べ始めると、気にすることは単に「コンセントがあるかどうか」だけではないのだと分かってきました。

① 場所:近くに電源があるとは限らない

分かりやすいのは、場所ではないでしょうか。コンセントが近くにあるのか。ケーブルが届くのか、といったことが問題になりますよね。
社内であれば、会議室やフリーアドレス席のどこに座るかで、使いやすさが変わりますし、外出先であれば、そもそも電源が利用できる場所があるかどうか、それを気にしなければなりません。

必要なとき、電源が近くにあるとは限らない。だから、念のためアダプターを持っていくし、なければバッテリー残量を気にしながら仕事をすることに・・・。

② 状態:そのまま使える電気とは限らない

次は、電気をどう機器に届けるかという話です。コンセントから来る電気を、PCやスマートフォンがそのまま使っているわけではありません。アダプターや充電器を通して、それぞれの機器が使える状態に変えています。
同じ「電源」でも、コンセント、ACアダプター、USB充電器、モバイルバッテリーでは、使い方・役割が少しずつ違います。
コンセントや充電器があっても、それが機器に合っていなければ使えないことがあります。「挿せるのに充電できない」「つないでいるのに動かない」そんな経験、ありませんか?

③ 量:足りる電力は機器によって違う

最後に、量の問題です。スマートフォンなら十分に充電できる充電器でも、ノートPCには足りないことがあります。モバイルバッテリーも、容量が大きければ安心というわけではありません。スマートフォンを充電したいのか、ノートPCを動かしたいのか、複数の機器を同時に使いたいのか。使い方によって、必要な出力は変わってきます。
電源は、挿せば終わりに見えます。でも実際には、場所・状態・量が合っていないと、思ったようには使えません。ここが、電源まわりを少しややこしくしているところなのだと思います。
念のため追記しておくと、電気機器を安全に使うには、たこ足配線を避ける、コードを束ねたまま使わない、使わない機器のプラグを抜くなど、基本的な注意も必要です。東京消防庁でも、電気器具からの火災を防ぐための注意点として、コンセントやコードの扱いについて案内しています。

ミニコラム:ACとDCって、何が違う? 

ちょっとだけ、ACとDCの話も整理しようかなと思います。

若かりし頃に学んだように、ACは交流、DCは直流ですよね。家庭やオフィスのコンセントから来る電気はACで、バッテリーや多くの電子機器の内部で使われる電気はDCです。難しく言うと波形の話になりますが、ここではざっくり「DCは同じ向きに流れる電気」「ACは向きが周期的に変わる電気」と捉えておけばよさそうです。

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種類ざっくり言うと身近な例
AC:交流電気の流れる向きが周期的に変わる家庭やオフィスのコンセント
DC:直流電気が一定方向に流れるバッテリー、スマートフォン、ノートPC内部

ノートPCのACアダプターは、コンセントから来るACを、PCが使えるDCに変換しています。普段なんとなく「充電器」と呼んでいるものも、ただ電気を流しているだけではありません。機器に合うように電気を変えながら、必要な分を届けています。

なので、機器ごとにアダプターが違ったり、USB充電器でも「何W出せるか」を確認する必要があったりします。

電源は、挿せば同じように見えます。でも実際には、機器に届くまでの変換や出力が少しずつ違います。だから、充電器やケーブルを選ぶときに「たぶん大丈夫」と言い切れない感じが出てくるのだと思います。

電源にもいろいろある

① コンセントだけが電源ではない

電源といっても、思い浮かべるものはひとつではありません。コンセント、ACアダプター、USB充電器、モバイルバッテリー、ポータブル電源、UPS、PoE。並べてみると、意外といろいろあります。
どれも「機器を動かすための電気を届けるもの」ですが、使いやすい場面は少しずつ違います。

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電源の種類よく使うシーン便利なところ気にすること
コンセントオフィス、家庭、会議室安定して使える場所に縛られる
ACアダプターノートPC、小型機器機器に合った電力を供給できる持ち歩きが面倒
USB充電器スマートフォン、タブレット、PC共通化しやすい出力や対応規格を見る必要がある
モバイルバッテリー外出先での充電電源を持ち運べる容量と出力に限りがある
ポータブル電源屋外、仮設拠点、非常時複数機器を動かせる重さ、充電、保管が必要
UPSサーバー、ネットワーク機器停電時の急停止を防げる長時間運用向きとは限らない
PoE無線LAN AP、IPカメラ、IP電話LANケーブルで通信と電源をまとめられる対応機器や電力設計が必要

そう考えると、PoEも少し面白い存在です。LANケーブルで通信だけでなく電力も届けられるので、アクセスポイントやIPカメラのような機器では、電源の取り方そのものを変えられます。IEEE 802.3btでは、4ペアを使ったPoEの拡張も規定されています。

② 使う場所や機器によって、向いている電源は変わる

こうして並べてみると、電源は「ある/ない」だけで片づけられるものではないと分かります。同じ電源でも、使う場所や機器によって、向いているものが変わります。
コンセントは安定していますが、その場所に行かなければ使えません。モバイルバッテリーは持ち運べますが、いつかは残量がなくなります。PoEはネットワーク機器には便利ですが、対応している機器や供給できる電力を確認する必要があります。

電源の手間は、「電気があるかないか」だけではなく、どの形で、どれくらい、どこで使えるかにもあります。だから、充電器ひとつ選ぶだけでも、意外と考えることが多くなるのだと思います。

③ USB充電器で迷った表記

今回、充電器を探していて「うーむ、わからん」となったのが、USB充電器やUSB Type-Cケーブルの表記です。
65W、100W、240W、PD対応、EPR対応、eMarker搭載。なんとなく「高性能そう」とは分かっても、実際に何を見ればいいのかは少し分かりにくいところです。

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表記どこで見かける?
65WモバイルノートPC
100WノートPC充電や複数機器の同時充電で見かける高出力クラス
240WUSB PD 3.1で拡張された高出力領域
PD対応USB Power Delivery対応
EPR対応100Wを超える高出力給電に関わる
eMarker搭載ケーブルの能力を機器に伝えるチップを搭載
5A対応高出力充電で確認したいケーブル側の表記

調べてみると、USB Type-Cまわりは思っていた以上に高出力化が進んでいました。USB-IFによると、USB Power Delivery Revision 3.1では、USB Type-C経由で最大240Wまでの給電が可能になり、28V、36V、48Vといった電圧も定義されています。

ただ、ここで大事なのは、細かい規格を全部覚えることではありません。
同じUSB Type-Cに見えても、充電器、ケーブル、機器側の対応がそろっていないと、期待した通りに充電できないことがあります。電源まわりは共通化が進んでいます。でも、「何でも同じ」と言えるほど単純にはなっていません。

便利になったからこそ、まだ確認することが残っている。その少しちぐはぐな感じが、今の電源まわりのややこしさにもつながっている気がします。

便利な電源って、たぶん意識しなくて済むこと

電源が便利になるというのは、単に高出力になることだけではないと思います。
社内のどこに移動しても、同じようにPCを充電できる。会議室に行くたびに、アダプターを持っていくか迷わなくていい。外出時に、何本もケーブルを持ち歩かなくていい。

電源を意識する時間が減ること。それが、電源まわりの本当の便利さなのかもしれません。 電源を「探すもの」ではなく「そこにあるもの」と考えると、少し話は飛びますが、EVの給電インフラの話も気になってきます。国土交通省は、EV普及に向けた給電インフラに関する技術公募を行っており、NEXCO東日本は、館山自動車道本線での走行中無線給電の実証実験に向けた取り組みを発表しています。

これは夢物語というわけではなく、有線でつながずに電力を送る「ワイヤレス電力伝送」は、総務省の資料で言及されていて、EV向けの85kHz帯ワイヤレス電力伝送についても、制度化の状況が示されています。

もちろん、それをそのままオフィスやPCの電源環境に置き換えられるかは分かりません。ここで言いたいのは、EVの技術をそのままPCやオフィスに応用しよう、という話でもありません。
ただ、電源を“探すもの”ではなく、必要な場所に自然にあるものとして考えると、少し見え方が変わると思いませんか?

そんなことがEVで考えられているなら、PCやオフィスでも似たようなことができたら楽なのに、と思ってしまいます。もちろん、実際にできるかどうかは分かりませんが・・・。
でも、会議室に座ったらPCが充電できる。フリーアドレスの席を移動しても、電源アダプターを持ち歩かなくていい。外出先でも、コンセントを探さなくていい。
そんなふうに、電源が“持ち歩くもの”や“探すもの”ではなく、必要な場所に自然にあるものになれば、日々の小さなストレスはかなり減る気がします。持ち歩かない。探さない。迷わない。 必要なときに、必要な機器が、必要な時間だけ動く。そういう状態がつくれると、働き方はかなり楽になるはずです。

ネットワークも、結局は電源の上で動いている

そしてこの話は、ノートPCだけに限りません。
アクセスポイントも、ルーターも、ネットワークカメラも、IP電話も、サイネージも、電源がなければ動きません。Starlinkのように通信できる場所を広げる仕組みが出てきても、その機器を動かすための電源は必要です。空が開けた場所でも、電源がなければ通信機器は動きません。
ネットワークは無線化し、クラウドによって働く場所は広がりました。でも、機器そのものは電源がなければ動きません。
ネットワークにつながることと、機器が動き続けることは、別の話です。これは、ネットワーク機器の話でもあり、日々の働き方の話でもあります。

便利になったはずなのに、外出前に念のためアダプターを鞄に入れている。会議室へ移動するだけでも、電源を持っていくかどうしようかと少し迷っている自分がいる。

電源って、やっぱりちょっとめんどくさい。

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S.S.

モンスター狩猟と肉焼き、音楽&映画でインドアを極める超インドア派。
この業界に身を投じたのはSDNが広まる少し前のこと。ITに携わるようになってから、某電脳アニメがより面白く感じられるように。
IT全般に関する情報や、アライドテレシスの製品・サービスの価値、そしてその先にある可能性を、どう伝えるべきかを考えながら、日々奮闘しています。

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