昨今は、デジタル技術の発展にともない、教育現場でのDX化が進められています。しかし、教育現場でのDX推進はまだまだ途上段階であり、地域差も大きいのが現状です。教員の中にはDX推進の恩恵を実感できていない方も多いでしょう。
そこで、本記事では、「DX推進におけるネットワークの重要性」に注目しながら、DXの活用事例や教育関係者に与えるメリットについて解説していきます。
DXとネットワーク整備の重要性に関する基礎知識
まずは、DXに関する基礎知識と、ネットワーク整備の重要性について解説します。
DXとは?
DXとは、デジタル技術を活用して人々の生活をより良いものに変革するという概念です。デジタル庁の設置以降、行政・産業・教育などのあらゆる現場でDXを推進させることが国策となりました。
身近なDXの事例としては次のようなものがあります。
- 遠隔操作が可能なスマート家電の普及
- マイナポータルを通じた行政手続きのオンライン化
- 小売業界における顧客データの分析と仕入れの自動化
このように、DXは単にデジタル技術を導入することにとどまらず、デジタル技術によって新しい「価値観」「ビジネスモデル」「組織体制」などを構築する目的があるのです。
DX推進にはネットワーク整備が重要
DX推進の根幹には、これまで人間の力だけでは処理できなかった膨大な量のデータ(ビッグデータ)をクラウドに統合し、AIに分析させて有効活用する目的があります。クラウドやAIなどは全てネットワークでつながることによって機能するため、DX推進においてネットワークの整備は不可欠な要素です。
そのため、DX推進では次の要素を満たすネットワーク整備が重視されています。
- 大量の端末との「安定した接続」と「十分な通信速度」の確保
- 機密性が高い情報を扱えるだけのセキュリティの確保
- 新しいアプリケーションやクラウドサービスの追加に対応できる拡張性の確保
これらの要素を満たしたネットワークの事例には、各自治体間で住民情報や税務データを共有して行政サービスの向上を図る「総合行政ネットワーク(LGWAN)」や、各医療機関で患者のカルテや処方箋を共有して安全な医療の実現を図る「地域医療情報連携ネットワーク」などがあります。
DX推進では、第三者が自由にアクセスできる一般的なネットワーク回線とは異なり、特定の組織や関係者のみがアクセスできる「閉域ネットワーク」を構築することが共通基盤となっているのです。
DX化によるビッグデータの活用事例
DX化によるビッグデータの活用は、既に私たちの身近な生活に様々な恩恵をもたらしており、以下のような事例が挙げられます。
- アマゾンによる高速配達の実現
大手通販サイトのアマゾンでは、世界各地の倉庫の在庫状況や顧客の購入履歴などのデータをクラウドに統合して、「顧客が次に購入しそうな商品」をAIに予測させています。
この予測に基づき、次に購入しそうな商品を顧客の最寄りの倉庫にあらかじめストックさせておくことで、高速配達が実現しているのです。 - JR東日本の保線管理システム
JR東日本では、鉄道の線路や車両にセンサーを設置して、運行データをクラウドに統合しています。運行データをAIが分析することで、従来よりも素早く正確に線路の故障の予測・発見が可能になったため、安全性の向上や運行コスト削減が実現しました。
これらの事例は、いずれも安定したネットワーク基盤の整備が成功を支えています。今後は、教育現場などでもビッグデータを有効活用するために、ネットワーク基盤の整備を進めることが不可欠になっているのです。
教育現場でもDX化とネットワーク整備が進んでいる
2020年、文部科学省が「文部科学省におけるデジタル化推進プラン」を発表したことにより、教育現場でもDX化が急速に進められています。
その背景には、次のような要因があります。
- コロナ禍をきっかけとした、通学不要の教育を提供する必要性の増加
- 将来を見据えたIT人材育成の重要性
- 教育現場の業務効率化の要請が高まっている
特に、小中学校では「GIGAスクール構想」に基づき、生徒1人につき1台の端末を配備して、校内のネットワーク環境の整備が行われました。それにともない、教科書や問題集などの教材を統合して、生徒の学習履歴(学習時間、利用した教材、問題の正答率など)を収集できる「学習eポータル」というプラットフォームが開発されました。
また、「MEXCBT(メクビット)」の開発により、オンライン上でのテストやアンケートが実施できる環境も整備され、教育データの活用が広がりを見せています。
今後は、教育現場のネットワーク基盤をさらに整備し、学習eポータルやMEXCBTを活用することで、次のような取り組みを実現していきます。
- 収集した成績や学習履歴から、生徒の苦手分野の発見や克服をサポートする
- 出席状況や活動状況を把握して、不登校の兆候などの早期発見と解決を行う
- 学校や教員間での成功事例やノウハウを共有して、教育の質を向上させる
さらに、教育のDX化は、学校と保護者や地域が密に連携した新しい学びの環境づくりにも期待されているのです。
教育のDX化とネットワーク整備で教員の働き方はどう変化する?
以下では、教育のDX化とネットワーク整備によって、教員の働き方の改善が期待されている3つのポイントを解説します。
統合型校務支援システムによる校務時間の削減
教育のDX化は、これまで問題視されてきた教員の激務や長時間労働の改善に役立ちます。そのカギとなるのが「統合型校務支援システム」の導入です。
統合型校務支援システムは、生徒の成績・保健情報・指導要録など、これまで紙媒体などでアナログ管理されてきた校務情報を1つのプラットフォームに統合したものです。これにより、成績処理や時間割作成などの校務が自動化されるため、校務の効率化が実現されます。
実際に、札幌市が導入した事例では、教員1人あたりの校務時間を年間に103時間削減できたと報告されています。自動化はヒューマンエラーの防止にも効果的であるため、DX化によって教員が教育活動に専念できる環境を整えるとともに、働きやすさの向上につながるのです。
経験に依存しない高度な教育の実現
先述している学習eポータルやMEXCBTの導入により、教育の方法はデータに基づいた科学的アプローチに変化しつつあります。
これまで可視化されにくかった生徒一人ひとりの学習方法や理解度を把握しやすくなるため、若手教員であっても経験や熟練度に依存しない高度な教育を実現しやすくなるのです。
また、教育データを活用することで、教材や教育方法の課題も明確化され、短いスパンで改善点を授業に反映できるようになります。DX化は、教育の質を高める循環を作り出す点でも大きな役割を持っています。
ネットワーク整備による教員のリモートワークの可能性
これまで教員のリモートワークが難しかったのは、次のような事情があったためです。
- 校務に必要な情報が紙媒体や校内限定のネットワークで管理されていたこと
- 秘匿性が高い生徒の個人情報は一般的なインターネット回線で扱えないこと
そこで、教育現場のDX化にともない、教育委員会や学校間のみをつないで特定の関係者だけがアクセスできる閉域ネットワークの整備が行われています。
外部から独立した強固なネットワークが構築されることで、従来の制約が解消されて教員のリモートワークが可能になるのです。
教員の業務特性から完全なリモートワーク対応は難しいと考えられますが、校務や教材作成などがリモートワークに対応すると、教員が柔軟に働けるようになります。ネットワーク整備は、そのために欠かせない基盤なのです。
まとめ
本記事では、DX推進におけるネットワーク整備の重要性に注目しながら、DXの身近な活用事例や教員の働き方に与えるメリットについて解説しました。
DXは、AIやビッグデータを活用して、人々の生活をより良いものに変革する取り組みです。現在は、教育現場でもDX推進に取り組んでおり、教育の質の向上や教員の働き方改革に期待されています。ネットワーク整備は、その基盤を支える重要な役割を担っているのです。
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