小中学校・高校におけるGIGAスクール構想の現状と課題|成功のポイントを解説

GIGAスクール構想により、小学校から高校まで1人1台端末の整備が進みました。しかし、ネットワークの不安定さといった課題も浮き彫りになっています。
特に探究学習やBYODが導入される高校では、小学校とは異なる高度なICT環境が不可欠です。
本記事では、GIGAスクール構想の現状と課題を整理し、次の段階「NEXT GIGA」を成功させるためのポイントを解説します。

目次

GIGAスクール構想の概要と現状

GIGAスクール構想は全国の学校に大きな変化をもたらしましたが、その取り組みは今、大きな転換点を迎えています。
ハード整備が完了した今、本当に問われるのはICT環境の質です。本章では、構想の概要から、小中学校・高校における現状の課題までを整理して解説します。

GIGAスクール構想とは?

GIGAスクール構想とは、2019年に文部科学省が提唱した、未来の教育を創造するための国家プロジェクトを指します。
その柱となるのは、「1人1台の学習端末」と「高速大容量の通信ネットワーク」というICT環境を全国の学校に整備し、活用することです。

このICT環境を通じ、生徒一人ひとりに応じた「個別最適な学び」と、他者と協力する「協働的な学び」を両立させ、すべての子どもの可能性を最大限に引き出すことを目指しています。
これは、単なるデジタル化に留まらず、学びのあり方そのものを変革する国家的な取り組みなのです。

小中学校・高校における達成とNEXT GIGAに向けた課題

文部科学省の調査(※)によると、2023年3月末時点までに小中学校の端末配備はほぼ完了し、ハード面の整備は大きく進みました。しかし、その一方で多くの学校が運用面の課題に直面しています。

「ログインに時間がかかる」「動画が途切れる」といったネットワークの不安定さが授業の進行を妨げるなど、導入したICT環境を十分に活かしきれていないのが実情です。
高校においても端末整備は進んでいますが、その活用方法は探究学習での利用が中心の学校から、一部の教科での利用に留まる学校まで、大きな差が見られるのが現状です。

こうした中、GIGAスクール構想全体は、導入された ICT環境の改善・強化とさらなる活用を図るGIGAスクール構想第2期「NEXT GIGA」と呼ばれる次のフェーズへと向かっています。これには、端末の物理的な更新だけでなく、教員のICT活用指導力の向上や校務DXといったソフト面の進化も含まれます。
ハードという「器」が揃った今、それを効果的に活用するためのインフラの「質」が、小中学校・高校すべてにおいて問われているのです。

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NEXT GIGAの実現に向けた高等学校の役割

NEXT GIGAの実現を目指す上で、特に高等学校にはどのような視点が求められるのでしょうか。
高校では探究学習やBYODなど、小中学校とは異なり要件が格段に複雑化するため、先行事例をそのまま当てはめることはできません。

多くの高校関係者が「自校に最適なICT環境とは何か」という問いに直面しています。
また、高校のICT化を考える上では、文部科学省が推進する「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」といった国の動きも踏まえた整備が重要となります。
この事業は、情報や数学などの教育を強化し、将来のデジタル社会を支える人材を高校段階から育成することを目的としています。

これらの高度な学びを支えるICT環境を構築するには、まず小中学校との根本的な違いを深く理解することが不可欠なのです。

小中学校・高校におけるGIGAスクール構想の違いとは?

高校でのICT環境整備は、小中学校の先行事例をそのまま当てはめるだけでは成功しません。学びの目的や活用する端末が根本から異なるため、求められるインフラ要件も大きく異なります。
ここでは、その成功の鍵を握る「学習目的」「端末環境」「ネットワーク要件」の3つの決定的な違いを解説します。

学習目的の違い

小学校や中学校では、ICTに慣れ親しみ、その基本的な使い方を身につけることに重点が置かれています。
これに対し高校では、生徒自らが問いを立てて探究する活動や、専門教科でのCAD・プログラミングなど、より高度で専門的な活用が中心となります。

例えば、工業高校での3D CAD設計や商業高校での会計ソフト利用など、より多くの通信量を必要とする専門的な活用が想定されます。
社会で通用する実践的なICTスキルが求められるため、学びの質そのものが変化するのです。

端末環境の違い

小中学校が自治体主導で全員に同じ機種を配布する画一的な環境であったのに対し、高校では生徒自身の多様な端末を持ち込むBYODを採用するケースが増えています。

OS(Windows, macOS, ChromeOS等)や性能が異なる端末が混在するため、管理の複雑さは格段に増し、ウイルス感染や情報漏えいといったセキュリティリスクも増大します。
学校側は、それら多様な私物端末をいかに安全に接続させ、公平な学習環境を担保するかという新たな課題を抱えることになります。

ネットワーク要件の違い

そして、こうした学びの高度化と端末の多様化は、ネットワークに求められる要件をも根本から変えます。小中学校で重視されたのは、一斉アクセス時の「安定性」でした。

これに対し高校では、安定性に加え、さらに3つの高度な要件が必須となります。
動画編集などの大容量通信に耐える「高帯域」、探究学習を止めない「高可用性」、そしてBYOD環境を前提とした「強固なセキュリティ」です。

例えば、探究学習で複数の生徒が同時に4K動画資料をストリーミング再生しながら分析したり、海外の姉妹校とリアルタイムでビデオ会議を行ったりする場面を想像すれば、その重要性は明らかです。
もはや大学や企業に近い、より高度なネットワーク設計が求められるステージなのです。

高等学校におけるGIGAスクール構想|成功のポイント

探究学習やBYODが本格化する高校でGIGAスクール構想を成功させるには、小中学校とは異なる視点が必要です。
本章では、単なる端末更新に留まらない、これからの学びを支えるICT基盤に不可欠な「通信環境」「セキュリティ」「運用管理」という3つの重要ポイントを解説します。

高品質な通信環境を整備する

高校の探究学習では、動画視聴やオンラインでの共同作業が日常的に行われるため、小中学校時代のような不安定さは致命的です。
成功への第一歩は、この課題の本質に向き合い、高品質で安定した通信環境を整備することです。そこで重要になるのが、専門家による「ネットワークアセスメント(電波調査)」です。

これにより、建物の材質や構造に起因する電波の強度や死角、近隣からの電波干渉などを可視化し、最適なアクセスポイントの機種・台数・設置場所を科学的に導き出すことができます。
特に、コンクリート壁や体育館など、学校ごとに電波環境は全く異なるため、こうした固有の環境を無視した設計では期待した性能は発揮できないのです。

堅牢なセキュリティを確保する

生徒自身の端末を持ち込むBYOD環境では、OSや性能の異なる多種多様な端末が校内ネットワークに接続されます。
これによりウイルス感染や不正アクセス、個人情報や成績データといった機密情報の漏えいリスクが格段に増大します。

そのためには、「校内は安全」という従来の考え方を改め、全ての通信を信用しない「ゼロトラスト」の思想でセキュリティを構築することが不可欠です。
許可された端末のみを接続させるネットワーク認証や、危険な端末を接続させない検疫システムなどを導入し、多層的な防御で学校全体を保護することが求められます。

シンプルな運用管理を実現する

端末の多様化は、ICT担当者の運用負荷を大幅に増大させます。ICT支援員の不足も指摘される中、専門のIT人材が潤沢とは言えない学校現場にとって、この負担増は極めて深刻です。

そのためには、ネットワーク全体を直感的に可視化し、専門家でなくても容易に管理できる統合管理ソリューションの導入が、持続可能な運用体制の鍵となります。
トラブル時に問題箇所を迅速に特定でき、全体の通信状況を把握できる仕組みがあれば、多忙な教員の時間を奪うことなく安定した学習環境を維持できます。

まとめ

GIGAスクール構想は、小中学校から高校まで1人1台端末環境を整備し、現在はICT環境の改善・強化とさらなる活用を図る「NEXT GIGA」のフェーズへと向かっています。
特に探究学習やBYODが本格化する高校では、小中学校とは異なる視点での環境構築が不可欠です。

本記事で解説した「高品質な通信環境」「堅牢なセキュリティ」「シンプルな運用管理」という3つのポイントを押さえることが、これからの教育を支える持続可能なICT基盤の実現に繋がります。

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この記事を書いた人

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S.A.

IT初心者やエンドユーザーに向けて、「難しいことをわかりやすく」をモットーに執筆中。
仕組みの背景や用語の意味など「いまさら聞けない」ことも丁寧に説明するスタイルが信条です。
普段は猫と静かに過ごすのが好きなインドア派。

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