製造業DXを後押しするIoTのためのインフラとは?包装容器業界のリーディングカンパニーの「データ活用高度化」事例に学ぶ成功の秘訣

製造業におけるデジタル化・IoT化の波は、競争力強化と新たな価値創出の鍵を握ります。本記事では、包装容器のリーディングカンパニーである東洋製罐グループが実施した製造現場のDX化とデータ活用高度化の取り組みをご紹介。ネットワークやWi-Fiのソリューションを活用し、リアルタイムなデータ収集と運用負荷軽減を実現した事例を通じて、製造業のDX推進に役立つヒントをお届けします。

目次

“見えない技術が支える日常”——缶とネットワークの共通点

缶と一口に言っても、食品用や飲料用、化学薬品用など、その種類は実に多様です。日本では日本産業規格(JIS)に基づき、内容量だけでなく内径や高さも細かく定められており、それらは構成や主要材料、缶内の圧力により分類されます。海苔やペンキ、色鉛筆などの身近なスチール缶は一般缶、そのほかだと、コーラなどの飲料缶や ツナ缶・トマト缶といった缶詰専用缶、ドラム缶に一斗缶(18リットル缶とも)などがあります。衝撃や熱に強いもの、漏れないよう完全密封するものなど、中身に合わせた工夫が凝らされているのです。こういった規格や設計があるからこそ、わたしたちは安心して缶を手に取ることができます。中身は見えないけれど、消費者の心をつかむたくさんのこだわりが詰まっている——それは、製造業におけるネットワークにも通じるものがあります。

ネットワークもまた、セキュリティ、安定性、拡張性といった多くの要素が緻密に設計されています。利用者が意識することなく快適に使えるのは、裏側で支える技術と、それを守る人たちがいるからこそ。缶もネットワークも「見えないけれど、なくてはならない」存在と言えますね。

製造業DX推進のカギを握るのは、競争力を支える“見えない基盤”

近年、多くの製造業でIoT化が急速に進展しています。その主な目的は、リアルタイムでのデータ収集やその分析を通じて、生産現場の可視化や最適化を図ることにあります。たとえば、食品工場の製造ラインでは、各工程にセンサーを設置し、温度や湿度、機械の稼働状況、さらには原材料の投入量など、IoT機器を活用しデータをリアルタイムで取得・分析することで、製品の品質を安定させるとともに、異常の早期検知によって廃棄ロスの削減やライン停止の回避につなげています。

こうした取り組みは、単なる技術導入にととまらず、社会や産業構造そのものの変革を促す契機にもなっています。まさに、DXが目指す方向性と重なるものです。DXとは、デジタル技術を活用して仕事のやり方やサービスの提供方法だけでなく、組織の仕組みや社会の制度、さらには人々の考え方や暮らしまで、広く変えていこうとする動きです。単にITを導入するだけでなく、社会全体の在り方を見直すようなより本質的な変革を目指しています。そこで製造業においては、IoTやAI、クラウドなどの技術を活用することで、従来の生産方式を見直し、より柔軟で効率的な体制へと移行することが求められています。

国際競争のなかで生き残るためには、生産性の向上やコスト競争力の強化は喫緊の課題でもあり、加えて、慢性的な人材不足への対応や、新たな付加価値の創出といった観点からも、IoTの導入とともに、DXの考え方を踏まえた変革が、企業の持続的成長に向けた重要なテーマと位置づけられています。しかしながら、製造業では情報の一元管理が難しく、結果として部分最適に陥ってしまうケースも少なくありません。さらに、ネットワークの安定稼働やセキュリティ対策、運用・管理の効率化といった課題も、現場の負担を増加させる要因となっています。こうした背景の中、真の意味で製造業DXを実現するためには、現場の実態に即したインフラの整備が欠かせません。

製造現場では、センサーや装置から膨大なデータが日々生まれています。それらをリアルタイムで収集し、分析・活用するには、単にIoT機器を導入するだけでは不十分です。データが滞りなく流れ、必要な情報が必要なタイミングで届くようにするための“土台”――それが、IoT運用を支えるインフラです。製造業におけるインフラは一般的なITインフラとは異なり、現場のスピードや多様な機器との連携に対応できる柔軟性と安定性が求められます。工場全体を見えないところで支える存在、それがIoTインフラと呼ばれるものです。

そして今、あらためて問われているのは、製造業が抱える構造的な課題です。それは単なる現場の効率や技術の遅れといった表面的な問題ではなく、部門間やシステム間、あるいは人とデータの間に生じる「分断」が、DXIoT化の推進を妨げる大きな要因となっているのです。今回は、包装容器製造のリーディングカンパニーである東洋製罐グループが取り組んだIoT基盤構築の事例をもとに、製造業におけるDX推進に役立つヒントを探っていきます。

こんなお悩みがある方におすすめの記事です!

  • データ活用を進めたいが、システムが分断されていて困っている
  • 製造業でIoT化を進めたいが、どこから手をつけるべきか悩んでいる
  • 現場のネットワークが不安定で、業務効率に支障が出ている
  • ネットワーク監視の強化やセキュリティ対策を求めている
  • 他社の成功事例から、自社の取り組みのヒントを得たい

製造業における構造的な課題——製造業ならではの「分断」

多くの製造現場では、工場ごと、製造ラインごとに業務のやり方や使用するシステムが異なっていることが一般的です。導入された時期や製品も拠点ごとにばらつきがあり、個別最適の積み重ねの結果、データ連携やシステム統合が難しくなっているのが実情です。結果として、現場に眠る膨大なデータを全社的に活用することが難しく、経営の意思決定に十分に反映されていないケースも少なくありません。

このような分断は、組織構造や人材配置にも見られます。製造、品質、保守、情報システムなどの各部門がそれぞれ独立して動いており、部門ごとに重視する目標や評価の軸が異なるため、部門横断で連携しながら共通の目的に向かって取り組むことが難しくなっているのです。

たとえば、

  1. システムの分断:システムごとに異なる仕組みやソフトウェアが使われていることが多く、データ形式や管理方法が統一されていない
  2. 業務プロセスの分断:同じ製品を扱っていても、拠点ごとに作業手順や品質管理の基準が異なる
  3. 情報の分断:現場で収集されたセンサーデータが中央のシステムに連携されず、分析や活用が限定的
  4. 部門間の分断:製造部門と保守部門が別々に設備情報を管理しており、故障予測やメンテナンス計画に活かされていない
  5. 人材の分断:IT担当者と現場技術者の間で使う言葉や考え方に違いがあり、その結果、現場との足並みがそろわず取り組みが進まない

などが挙げられます。

製缶工場が推進した全体最適化の実現例から紐解く製造業DXのすすめ

分断を防ぎ、全体最適化を実現するには

前述した製造業における「分断」は、現場の非効率や情報の断絶を引き起こし、全体最適の大きな障壁となっています。これを根本から解消するためには、製造現場に散在するデータやノウハウを集約し、一元的に管理・活用できる仕組みの構築が不可欠です。これにより、品質の安定化や業務の標準化を実現し、担当者の異動や退職といった人材の変動にも柔軟に対応できる体制を整えることができます。

こうした背景のもと、現場・部門・人をつなぐ基盤として注目されているのが、IoT機器のデータを統合・活用するためのデータソリューションシステムです。この仕組みにより以下のような分断の解消が期待されています。

  1. システムの分断:異なるシステム間のデータを統合・標準化し、全社横断でのデータ活用が可能。経営判断のスピードと精度が向上する。
  2. 業務プロセスの分断:作業手順や品質基準をデジタルで標準化・共有し、拠点間のばらつきを抑制。教育や応援派遣もスムーズに。
  3. 情報の分断:センサーデータをリアルタイムで一元管理し、異常検知や予兆保全などの高度な分析が可能に。
  4. 部門間の分断:設備データを共通基盤で管理し、製造・保守・品質が同じ情報をもとに連携。メンテナンスの最適化が進む。
  5. 人材の分断:現場でも使いやすいUIや可視化ツールを導入し、ITと現場の共通理解を促進。協働による改善が進む。

このように、データソリューションシステムは単なる技術導入ではなく、分断された現場・部門・人をつなぎ、製造業の全体最適化を支える基盤として機能しています。

デジタル化が現場にもたらした、確かな成果と手応え

包装容器製造の東洋製罐グループは、長期経営ビジョン「未来をつつむ」のもと、製造現場のIoT化とデータ活用の高度化を推進しており、その中核を担うのが、IoT・ロボット推進室です。東洋製罐グループでは、以前から製造現場のデジタル化に積極的に取り組んできましたが、各工場や部門がそれぞれの目的に応じてICT機器やデータ収集の仕組みを導入し改善活動を進めた結果、形式や管理方法がバラバラであったため全体最適には至らず、データ管理が分散しノウハウの共有や自動化が進みにくい状況にありました。

東洋製罐グループはこうした課題を解決するため、分散したデータを統合・標準化し、全社的に活用できる自社開発データソリューションシステム<SaTeras(サテラス)>の導入を進めました。しかし、東洋製罐グループの場合、生産スピードは1分間に2,000製品。高速かつ多様な生産ラインでは、製造工程の一つひとつが秒単位で進行していきます。そのような高速生産に対し、リアルタイムにデータを収集するには、ソリューションシステムの導入はもちろんのこと、そのシステムを支えるより高度で強靭なネットワーク基盤の構築が不可欠です。そこで、データソリューションシステムの導入と併せて、製造現場の実態に即したIoTインフラの構築にも取り組みました。

高度で強靭なネットワーク基盤の検討ポイント

  • 高速大容量データの安定収集
  • 設備管理の可視化
  • 無線LANの導入による運用の効率化
  • 現場担当者でも直感的に扱える管理システム

これらの課題に対し、東洋製罐グループは統合管理ソリューションと無線LANソリューションを組み合わせた当社の提案を採用しています。特に下記が導入の決め手となりました。

  • 高速・安定した生産ラインに対応
    1分間に2,000製品を処理する高速な製造ラインに対応するためのネットワーク基盤を構築。
    リアルタイムでのデータ収集が可能となり、生産現場の可視化と迅速な対応力が向上しました。
  • 現場業務の効率化と柔軟性の向上
    ウェアラブルデバイスと無線LANの導入により、現場作業者が設備の状態をその場で確認ができるように。
    「機械のデータを見るために自分の足を動かしてラインの端から端まで見に行く必要がなくなった」と現場の作業効率が大幅に改善しました。
  • 管理負荷の軽減と運用の自動化
    ネットワーク機器の死活監視や自動復旧機能を備えたシステムにより、専門知識がなくとも現場での管理が可能に。
    遠隔からの状態確認も実現し、総務・工務部門の負担を軽減しています。

IoT・ロボット推進室の中山氏は、「製造現場のリアルタイムなデジタルデータ化を実現できたのは、現場のニーズに寄り添った提案のおかげ」と語っています。製造現場の特殊な環境や業務への深い理解をもとに、安定稼働を支える強靭なネットワーク基盤を構築できたことが、今回の成功のカギとなりました。

さらに導入事例の詳細を知りたい方はこちら!

製造業のDXを推進する上で、現場の課題に寄り添ったネットワークインフラ整備は欠かせません。今回の事例では、IoT化によるデータ活用の高度化と、運用・管理の効率化を両立させるヒントが詰まっています。東洋製罐グループが自社開発したデータソリューションシステム「SaTeras」のや、弊社の統合管理ソリューション「Vista Managerシリーズ」と無線LANソリューション「AWC」など、より詳しい導入事例については以下よりご覧いただけます。

導入事例の詳細はこちら

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R.N.

これまで沢山のお客様へ当社の魅力を発信してきました。
データシートやカタログの数字だけでは伝わらないアライドテレシスらしさを、自分の言葉で皆さまにお伝えできたらと思います。
好きなものは小説とドラマと深夜ラジオ。特技は焼き魚を綺麗に食べること。

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