毎日耳にしないことはないほど、AIという言葉が身近になっています。すでに実際の業務で活用を始めている現場も少なくはないはずです。働き方や業務の進め方が変化する中で、AIは特別な存在というより、既に日常の延長線上にある技術になっているのではないでしょうか。一方で、AIをどのように活用すべきか、いまの使い方で十分なのか、はたまたこの内容を鵜吞みにしても良いものか、などと迷う声も多く聞かれ、新しい話題やサービスが次々と登場する中で、AIの全体像や立ち位置が見えにくくなっていると感じている人も多いのではないでしょうか。
前回の記事では、「変革」というキーワードを軸に、現代社会で起きている変化を取り上げました。今回はその流れを受け、変革の手段として注目されるAIについて、仕事や日常の視点から見ていきます。
AIは何でもできる存在ではなく、良き相棒(道具)
2015年頃からAIは世の中で急速に普及し始めました。「AI」という言葉から、多くの人は「すごい技術」や「何でもできる存在」を思い浮かべるかもしれません。しかし実際のAIは、人がこれまで行ってきた判断や作業の一部を、コンピューターが代わりに担うあくまでも仕組みであり、道具として使われています。
そこで、現在のAIの働き方を大きく下記の2つに分けて考えると分かりやすくなります。

答えを選ぶAI
過去のデータをもとに、あらかじめ用意された選択肢の中から最も可能性の高い答えを導き出します。売上予測や異常検知、画像認識などが代表的な例で、人が経験や勘に頼っていた判断を、より安定して行うことが得意です。
答えを作るAI
文章や画像、音声などを新しく生み出します。文章作成や要約、画像生成など、近年注目されている生成AIはこちらにあたります。新しいものを生み出しているように見えますが、過去のデータから学んだパターンをもとに、それらしい答えを組み立てています。
どちらのAIも、人のように考えたり、意図を持ったりしているわけではありません。過去のデータや与えられたデータを仕組みに従って処理を行うだけであり、使い方や目的を決めるのは常に“人”の側であることを忘れてはなりません。
AIの内部では、機械学習(ML)や自然言語処理(NLP)といった技術が使われていますが、名前を覚える必要はありません。重要なのは、AIが何を得意とし、どこまで任せられるのかを理解することです。AIを特別視しすぎず、道具として捉えることが大切です。
| 技術名称 | どんなことをする技術か | 主な活用例 |
|---|---|---|
| 機械学習 | データの傾向を学習し、予測や分類を行う | 売上予測、需要予測、不正検知 |
| 深層学習 | 複雑なデータを高精度に学習する仕組み | 画像認識、音声認識、自動翻訳 |
| 自然言語処理 | 人の言葉を理解・生成する技術 | 文章要約、チャットボット、翻訳 |
| 画像・映像認識処理 | 画像や映像から特徴を検出する | 顔認識、外観検査、行動分析 |
| 生成AI | 文章や画像などを新たに作り出す | 文章作成、画像生成、音声生成 |
情報が溢れる世の中で、誰もが抱える時間と人手不足
AIが注目されている理由は、「流行っているから」だけではありません。仕事の現場では、やるべきことが増え続ける一方で、時間や人手には限りがあります。情報は増えているのに、それを十分に整理し判断する余裕がないなど、こうした状況に多くの人が直面しています。

そしてこの悩みは、働く人だけのものではありません。例えば、学生の立場でも調べるべき資料は多く、レポートや課題に取り組もうとしても、どこから手を付けるべきか迷ってしまうなど、情報が多すぎることで判断が難しくなる点については、立場が違っても共通しています。
そこで、AIが期待されているのは、こうした「人の限界」を補う存在として使えるからではないでしょうか。大量の情報を短時間で収集し整理したり、判断の材料を示したりすることで、人が考えるための余裕を生み出します。AIがすべてを決めるのではなく、人の判断を支える役割を担う点に価値があります。
業務におけるAI活用も、生産性の向上や人手不足への対応など目的はさまざまですが、その本質は共通しています。人だけでは回しきれなくなった部分をAIで補い、人はより判断や工夫が求められる仕事に集中できるようになる、そのための手段としてAIが使われます。
その際の導入にあたっては、決して使うこと自体を目的にしないことが重要です。何に困っているのか、どこで負担が大きくなっているのか、しっかり状況と課題を把握し、その目的と求める効果によってAIの役割も大きく変わってきます。
業種別にみたAI活用の代表例
| 業種 | 主な活用目的 | 活用例 |
|---|---|---|
| 一般企業(オフィス業務) | 業務効率化、情報整理 | 資料作成補助、社内問い合わせ対応 |
| 製造業 | 品質向上、作業の自動化 | 外観検査、設備の異常検知 |
| 流通・小売 | 需要予測、顧客対応 | 在庫予測、問い合わせ対応 |
| 医療・ヘルスケア | 負担軽減、見落とし防止 | 診断支援、事務作業の補助 |
| 教育・研究 | 学習支援、情報整理 | 教材作成支援、レポート要約 |
職種別にみたAI活用の主な効果と具体例
| 職種 | 主な効果 | 活用例 |
|---|---|---|
| 事務・管理 | 定型業務の効率化、作業時間の削減 | 書類作成の補助、データ入力の自動化 |
| 営業・企画 | 情報整理と提案精度の向上 | 提案資料の作成支援、顧客情報の分析 |
| マーケティング | 分析の高度化と意思決定の迅速化 | 市場分析、顧客傾向の可視化 |
| カスタマー対応 | 対応品質の平準化、負担軽減 | チャットボットによる問い合わせ対応 |
| 製造・品質管理 | 見落とし防止、品質の安定化 | 画像認識による外観検査 |
| 研究・学習 | 情報収集・整理の効率化 | 文献要約、レポート作成支援 |
AIには得意分野があり、目的に応じた選択が必要
AIというと、まず思い浮かぶのがChatGPTのような生成AIかもしれません。文章を書いたり、質問に答えたりする様子を見ると、「これ一つあれば何でもできそうだ」と感じるのではないでしょうか。しかし、AIを活用するうえでまず押さえておかなければならないのは、100%の万能なAIは存在しないという点です。
AIにはそれぞれ得意分野があります。文章の作成や要約が得意なAIもあれば、画像を生成したり、映像の中から特定の対象を見つけたりするのが得意なAIもあります。さらに、数値データを分析して傾向を読み取ることに向いたAIや、音声を文字に変換することを得意とするAIもあります。一口にAIといっても、できることは大きく異なります。
学生や個人がAIを使う場面では、「文章作成が楽になる」「調べ物が早く終わる」といった使い方が中心になるかもしれません。この段階では、使いやすさや手軽さが重視されることが多く、結果の正確性よりも作業の効率性を上げることを目的とするケースは少なくありません。
一方、業務でAIを使う場合は選び方が変わってきます。どの業務で、何を効率化したいのかによって、選ぶべきAIやサービスは変わります。文章生成が必要なのか、データ分析なのか、画像認識なのか、目的を明確にしないまま導入すると、「思ったほど役に立たない」という結果になりがちです。
また、仕事でAIを使う場合には、データの扱い方にも注意が必要になります。どの情報を入力してよいのか、AIがどこに接続されているのかといった点は、個人利用では意識しにくい部分です。しかし、業務利用ではこうした点が重要な判断材料になります。
AI選びの出発点は、「何ができそうか」ではなく「何をしたいのか」です。目的に合ったAIを選び、適切な形で使うことで、はじめてその価値が発揮されます。
主なAIサービスの分類(用途別)
実際のサービスでは、下記のようなAI機能が単独で提供されるだけでなく、文章生成・画像生成・音声処理など複数の機能が組み合わされ、より実用的に提供されるケースも多く見られます。
文章生成AI
メール、レポート、ブログ記事、広告文などの作成・要約ができることが特徴です。
(主な例:ChatGPT、Gemini、Claude、Microsoft 365 Copilot など)
画像生成AI
テキスト指示からイラストや写真、デザイン画像を生成できることが特徴です。
(主な例:Midjourney、DALL・E、Stable Diffusion、Adobe Firefly など)
動画生成AI
テキストや画像から動画コンテンツを生成できることが特徴です。
(主な例:Sora、Runway、Luma Dream Machine など)
音楽・音声生成AI
音声合成、ナレーション、楽曲の生成ができることが特徴です。
(主な例:ElevenLabs、Suno AI、Udio など)
会話AI・チャットAI
人の質問や指示を理解し、文章による対話を通じて情報提供や文章作成、アイデア出しなどを行えることが特徴です。
(主な例:チャットボット、バーチャルアシスタント など)
音声認識AI
音声を文字に変換し、内容を整理できることが特徴です。
(主な例:ElevenLabs、Suno AI、Udio など)
業務特化型AI
特定業務に特化して自動化・効率化できることが特徴です。
(主な例:AI-OCR、スケジュール管理、コード生成支援 など)
その答え信じていいのか?便利さの裏にあるリスクを理解する
AIを使うとき、まず立ち止まって考えたいのが、「そのまま信じてよいのか」「そのまま使ってよいのか」という点です。AIの出力は自然で分かりやすいため、正しそうに見えてしまいますが、必ずしも正解とは限りません。
生成AIは、もっともそれらしい答えを返す仕組みなのです。よって、事実と異なる内容や、根拠のあいまいな情報が混ざることもあり、レポートや資料、業務文書に使う場合は、内容を確認し、必要に応じて裏取りを行うことを欠かしてはなりません。
シャドーAI:気づかずに使っているかもしれない“無自覚”なAI活用
もう一つ注意したいのが、知らないうちにAIを使っている状態、いわゆる「シャドーAI」です。無料サービスや個人アカウントでの利用が、いつの間にか業務や学業に持ち込まれてしまうケースは少なくありません。どの情報を入力してよいのか、どこにデータが送られるのかを意識しないまま使ってしまうと、思わぬリスクにつながります。
これは学生にとっても同じです。課題やレポートを作成する際にAIを使う場合、著作権や引用の扱いには注意が必要です。便利だからといって、そのまま提出することが適切かどうかは、状況によって異なります。
AIは正しく使えば心強い道具ですが、使い方を誤ると問題を引き起こします。大切なのは、禁止することではなく、どの場面で、どのように使うのかを意識することです。
ハルシネーション:学習データの限界から生み出されるAIの“誤情報”
最近、「ハルシネーション」という言葉を耳にする機会が増えてきましたが、みなさんはこの現象を知っていますか?
ハルシネーションとは、本来は存在しない情報を、AIがあたかも事実のように生成してしまう現象のことです。もともとは「幻覚」や「幻影」を意味する言葉で、AIが誤った内容を自信ありげに出力してしまう様子を表しています。
AIは自然で分かりやすい文章を生成するため、つい正しい情報だと誤解してしまいがちになってしまいます。あいまいな内容であっても、もっともらしく整理された文章として提示されることで、違和感に気づきにくくなることもあります。
この現象の要因には、学習データの限界(データが足りない・データが古い・偏ったデータ)や、AIが「分からない」と正直に言えないように設計された評価システムなど、複数の要因が複雑に絡み合っています。AIはユーザーの質問に対して必ず回答を生成しようとするため、その過程で誤情報が生まれてしまうのです。

実際に、この生成AIによる誤情報が原因となり、裁判にまで発展した例もあります。AIの出力を十分に確認せずに使用してしまうことが、思わぬトラブルにつながる可能性もあるのです。便利な技術だからこそ、その答えをそのまま使うのではなく、人が内容を確認し、背景や根拠を踏まえたうえで、最終的に判断することが欠かせません。
次の章では、進化し続けるAIと、今後どのように向き合っていくべきかを見ていきます。
AIは画面の中から現実世界へと
AIは、画面の中で質問に答える存在から、少しずつ役割を広げています。
これからのAIは、指示を待つだけでなく状況に応じて動く存在へと変わりつつあります。
ここでは、その代表的な例を3つ紹介します。
AIエージェント
AIエージェントとは、与えられた目的に対して、必要な作業を自ら考え、複数の処理を組み合わせながら進める仕組みを指します。単に質問に答えるだけでなく、業務や作業を一連の流れとして支援する点が特徴です。
細かな指示を与えなくても目的に応じて動くAIのため、やりたいことを伝えると、必要な作業を考え、順番に進めていく。こうした仕組みは、業務の補助や日常の作業を支える存在として注目されています。
エッジAI
エッジAIとは、クラウド上ではなく、端末や機器の近く(エッジ)でAI処理を行います。通信の遅延を抑えられるほか、データを外部に送らずに済むため、リアルタイム性やプライバシーの面でメリットがあります。
その場で判断・処理を行うAIのため、素早い反応が可能になり、通信量を抑えられる点やプライバシー面での利点もあり、さまざまな場面で活用が進んでいます。
フィジカルAI
フィジカルAIとは、カメラやセンサーなどから得た情報をもとに、現実世界の状況を理解し、判断や動作を行うAIを指します。ロボットや自動運転、産業機器など、物理的な「身体」を持つシステムと結び付く点が特徴です。
目や耳、手足を持つAIも現実のものとなりつつあり、工場のロボットや自動運転など現実世界での活用も広がりつつあります。
AIは今後も形を変えながら進化していきます。
重要なのは、どんな技術があるかを追いかけることよりも、どのような場面で役立つのかを考えることです。
AIと向き合い続けることが、これからの変革に
AIは、すべてを解決してくれる魔法の道具ではありません。一方で、正しく使えば、人の仕事や学びを支える心強い存在になります。重要なのは、AIそのものをどのような目的で、どの場面に使うかという視点であり、変化のスピードが速い時代だからこそ、新しい技術に振り回されるのではなく、自分たちにとって何が必要かを考え続けることが大切です。
AIはその答えを与えてくれるものではありませんが、考えるための余裕を生み出す手段や道具になるはずです。
これからのAIは、画面の中だけにとどまらず、仕事や生活と現実世界のさまざまな場面に広がっていきます。指示を待つだけでなく、自ら動き、人の判断や作業を補う存在として、より一層身近なものになっていくでしょう。
まとめ
今回はあらためて、「AI」そのものについて深堀してみました。AIとどう向き合うかは、人それぞれ、組織それぞれです。小さな活用からでも構いません。目的を意識しながら使い続けることで、AIは日々の仕事や学びの中で、確かな変革を支える存在になってくはずです。
変化の早い時代だからこそ、AIとどう向き合うかを考え続ける姿勢が、これからの変革を支える鍵になるのではと感じています。
最年長の備忘録
編集メンバー最年長が、日常の「ふとした疑問」をきっかけに、気になるテーマを掘り下げるミニコラムです。
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