[index] CentreCOM ARX640S コマンドリファレンス 5.1.5

VLAN / LAN側設定


ポートの種類
ポートとVLAN
デフォルトVLAN
ポートVLAN
タグVLAN
ネイティブVLAN
上位層とのインターフェース


バーチャルLAN(VLAN)は、管理者の設定によって論理的にブロードキャストドメインを分割する機能です。本製品のLAN側スイッチポート(gigabitEthernet 2〜5)は、ポートVLANとタグVLAN(802.1Q)に対応しており、任意のグループ分けが可能です。

Note - 本製品は、WAN側Ethernetインターフェース上でもVLANタグを扱えますが、WAN側のVLAN機能は本解説編で説明するLAN側スイッチポートのVLAN機能とは独立した機能です。WAN側とLAN側に同一のVLAN IDのVLANを作成しても、両者は異なるブロードキャストドメインに所属します(レイヤー2の直接通信はできません)。WAN側のVLAN機能については「VLAN」の「WAN側設定」をご覧ください。

ポートの種類

VLANを利用するには、VLANを作成(定義)した後、各スイッチポートに対してどのVLANに所属させるかを指定する必要があります。特定のVLANに所属しているスイッチポートの集合を、該当VLANのメンバーポートと呼びます。メンバーポートには、次の種類があります。

ポートとVLAN

スイッチポートは少なくとも1つのポートVLANに所属していなくてはなりません。また、ポートは複数のVLANに所属できますが、所属先VLANの種類によって、いくつのVLANに所属できるかが異なります。基本ルールは次のとおりです。

■ ポートが複数のVLANに所属している場合、受信フレームの所属先は次の基準にしたがって決定されます。
スイッチポートがどのVLANに所属しているかは、show interface switchportコマンドで確認できます。


デフォルトVLAN

初期状態では、すべてのLAN側スイッチポートがタグなしポート(アクセスポート)としてvlan 1(デフォルトVLAN)に所属しており、スイッチポート間の通信(スイッチング)が可能になっています。


この状態では、本製品は次に示す3つのルーティング/ブリッジング用インターフェースを持つルーター(vlan 1は4ポートスイッチ付き)として機能します。

複数のVLANを必要としない場合は、ご購入時の状態のまま、VLANの設定を意識することなく本製品を使用できます。この場合は、LAN側スイッチポート全体を、「vlan 1」という名前のルーティング/ブリッジング用インターフェースとして使用します。vlan 1インターフェースは、WAN側Ethernetインターフェース(gigabitEthernet 0〜1)とほぼ同じように扱えます。

Note - VLANインターフェースは、LAN側Ethernetインターフェースとほぼ同等ですが、以下の点は異なります。ご注意ください。 (1) VLANインターフェース上ではPPPoEを使用できません。

複数のVLANを使用したいときやVLANタグを使用したいときは、明示的にVLANの設定をする必要があります。以下、VLANの設定方法について説明します。

ポートVLAN

ポートVLANは、スイッチポート単位でVLANの範囲を設定するもっとも基本的なVLANです。gigabitEthernet 2〜3はvlan 10、gigabitEthernet 4〜5はvlan 20、といったように設定します。

純粋なポートVLAN(タグなしポートだけで構成されたVLAN)の場合、1つのポートは1つのVLANにしか所属できません。特定のポートを複数のVLANに所属させたい場合は、次節で説明するタグVLANを利用してください。

次にポートVLANの設定方法を示します。
  1. vlan databaseコマンドでVLANモードに移行し、vlanコマンドで2つのVLAN(vlan 10, vlan 20)を作成します。

    *Router(config)# vlan database
    *Router(config-vlan)# vlan 10
    *Router(config-vlan)# vlan 20
    *Router(config-vlan)# exit
    


  2. 次にLAN側スイッチポートを前の手順で作成したVLANに割り当てます。スイッチポートごとにinterfaceコマンドを実行してインターフェースモードに移行し、switchport modeコマンドで該当ポートをアクセスポート(タグなしポート)に設定し、最後にswitchport access vlanコマンドで所属VLANを指定します。

    *Router(config)# interface gigabitEthernet 2
    *Router(config-if)# switchport mode access
    *Router(config-if)# switchport access vlan 10
    *Router(config-if)# exit
    *Router(config)# interface gigabitEthernet 3
    *Router(config-if)# switchport mode access
    *Router(config-if)# switchport access vlan 10
    *Router(config-if)# exit
    *Router(config)# interface gigabitEthernet 4
    *Router(config-if)# switchport mode access
    *Router(config-if)# switchport access vlan 20
    *Router(config-if)# exit
    *Router(config)# interface gigabitEthernet 5
    *Router(config-if)# switchport mode access
    *Router(config-if)# switchport access vlan 20
    *Router(config-if)# exit
    

    Note - 初期状態では、すべてのポートがアクセスポート(タグなしポート)に設定されているため、特に設定を変更していない場合は「switchport mode access」を省略できます。

設定は以上です。

このようにしてポートをデフォルトVLAN以外のVLANに割り当てると、そのポートは自動的にデフォルトVLANから削除されます。すなわち、上記の設定を終えるとvlan 1には所属ポートが1つもない状態になります。


これによりLAN側スイッチポートは、vlan 10、vlan 2という2つのグループに分割されます。この状態では、本製品は次に示す4つのルーティング/ブリッジング用インターフェースを持つルーター(vlan 10、vlan 20はどちらも2ポートのスイッチ付き)として機能します。

vlan 10と20は、gigabitEthernet 0と1がそうであるのと同じように完全に独立しており、このままでは互いに通信することができません。ルーティングの設定することで、初めて通信できるようになります。

■ VLANの設定を確認するには、show vlan-switchコマンドを使います。

*Router> show vlan-switch
VLAN Name                             MTU
     Port(s)
---- -------------------------------- ------------------------------------------
   1 Default                           1500(auto)
  10 VLAN0010                          1500(auto)
     gigabitEthernet 2,gigabitEthernet 3
  20 VLAN0020                          1500(auto)
     gigabitEthernet 4,gigabitEthernet 5


■ ポートをデフォルトVLANに戻すには、インターフェースモードに移行してから、switchport access vlanコマンドをno形式で実行してください。たとえば、gigabitEthernet 2をデフォルトVLANの所属に戻すには、次のようにします。

*Router(config)# interface gigabitEthernet 2
*Router(config-if)# no switchport access vlan


■ VLANを削除するには、vlanコマンドをno形式で実行します。VLANの削除は、所属ポートをすべて削除してからでないと行えません。たとえば、vlan 20を削除するには、次のようにします。

*Router(config)# interface gigabitEthernet 4
*Router(config-if)# no switchport access vlan
*Router(config-if)# exit
*Router(config)# interface gigabitEthernet 5
*Router(config-if)# no switchport access vlan
*Router(config-if)# exit
*Router(config)# vlan database
*Router(config-vlan)# no vlan 20


Note - vlan 1(デフォルトVLAN)は削除できません。

タグVLAN

タグVLANを使用すると、1つのポートを複数のVLANに所属させることができます。これは、イーサネットフレームにVLAN IDの情報を挿入し、各フレームが所属するVLANを識別できるようにすることによって実現されます(IEEE 802.1Q VLANタギング)。

タグVLANは、複数のVLANを複数の筐体にまたがって作成したい場合や、IEEE 802.1Q対応サーバーを複数VLANから共用したい場合などに利用します。

Note - タグVLANを使用する場合、接続先機器もタグVLAN(IEEE 802.1Q)に対応している必要があります。

ここでは、VLANタグを利用して、本製品とタグVLAN対応L2スイッチ(以下、L2スイッチ)の2台にまたがるVLANを作成します。


この例では、gigabitEthernet 2をタグ付きポート(トランクポート)に設定し、vlan 10、vlan 20両方のトラフィックが本製品とL2スイッチの間を流れるようにします。

以下、本製品の設定を示します。L2スイッチの設定については、製品付属のマニュアルをご覧ください。
  1. vlan databaseコマンドでVLANモードに移行し、2つのVLAN(vlan 10, vlan 20)を作成します。

    *Router(config)# vlan database
    *Router(config-vlan)# vlan 10
    *Router(config-vlan)# vlan 20
    *Router(config-vlan)# exit
    


  2. 次にタグなしポート(アクセスポート)をVLANに割り当てます。スイッチポートごとにinterfaceコマンドを実行してインターフェースモードに移行し、switchport modeコマンドで該当ポートをアクセスポート(タグなしポート)に設定し、最後にswitchport access vlanコマンドで所属VLANを指定します。

    *Router(config)# interface gigabitEthernet 3
    *Router(config-if)# switchport mode access
    *Router(config-if)# switchport access vlan 10
    *Router(config-if)# exit
    *Router(config)# interface gigabitEthernet 4
    *Router(config-if)# switchport mode access
    *Router(config-if)# switchport access vlan 20
    *Router(config-if)# exit
    *Router(config)# interface gigabitEthernet 5
    *Router(config-if)# switchport mode access
    *Router(config-if)# switchport access vlan 20
    *Router(config-if)# exit
    

    Note - 初期状態では、すべてのポートがアクセスポート(タグなしポート)に設定されているため、特に設定を変更していない場合は「switchport mode access」を省略できます。

  3. 最後にgigabitEthernet 2をタグ付きポート(トランクポート)に設定し、vlan 10とvlan 20のトラフィックだけを通すよう設定します。switchport modeコマンドで該当ポートをトランクポートに設定し、switchport trunk allowed vlanコマンドで所属VLANを指定します。アクセスポートと異なり、トランクポートは複数のVLANに所属させることができます。

    *Router(config)# interface gigabitEthernet 2
    *Router(config-if)# switchport mode trunk
    *Router(config-if)# switchport trunk allowed vlan 10,20
    *Router(config-if)# exit
    


設定は以上です。

これにより、各スイッチポートから送受信されるフレームは次のようになります。

表 1
gigabitEthernet 2 トランクポート 送信 vlan 10、vlan 20宛てのフレームをタグ付きで出力する。VLANタグにはVLAN ID(10か20)を格納する。ネイティブVLAN(vlan 1)宛てのフレームはタグなしで出力する
受信 受信したタグ付きフレームは、タグに格納されたVLAN IDが10であるか20であるかによって、vlan 10かvlan 20の所属と見なす。それ以外のVLAN IDを持つタグ付きフレームは破棄する。タグなしフレームを受信した場合は、ネイティブVLAN(vlan 1)の所属と見なす
gigabitEthernet 3 アクセスポート 送信 vlan 10宛てのフレームをタグなしで出力する
受信 受信したタグなしフレームはvlan 10所属と見なす。タグ付きフレームはvlan 10宛てのみ受け入れ、その他は破棄する
gigabitEthernet 4〜5 アクセスポート 送信 vlan 20宛てのフレームをタグなしで出力する
受信 受信したタグなしフレームはvlan 20所属と見なす。タグ付きフレームはvlan 20宛てのみ受け入れ、その他は破棄する


Note - タグVLANを使って複数の装置にまたがるVLANを作成する場合は、各筐体で同じVLAN IDを設定するようにしてください。

ネイティブVLAN

ネイティブVLANとは、タグ付きポート(トランクポート)で受信したタグなしフレームの所属先VLANのことです。初期状態ではvlan 1に設定されているため、タグ付きポートで受信したタグなしフレームはvlan 1の所属として扱われます。これを変更したい場合はswitchport trunk native vlanコマンドで別のVLAN IDを指定する必要があります。

■ 前記のタグVLAN設定では、gigabitEthernet 2はデフォルトVLAN(vlan 1)にも(タグなしポートとして)所属したままになっています(これをネイティブVLANと呼びます)。他にもデフォルトVLAN所属のポートがあってトラフィックが流れている場合、gigabitEthernet 2にもデフォルトVLANのブロードキャストフレームが送出されます。これが望ましくない場合は、switchport trunk native vlanコマンドを使って、gigabitEthernet 2のネイティブVLANをvlan 10かvlan 20に変更します。

*Router(config)# interface gigabitEthernet 2
*Router(config-if)# switchport trunk native vlan 10


上位層とのインターフェース

VLANインターフェースは、WAN側EthernetインターフェースやPPPインターフェースと同様のルーティング/ブリッジング用インターフェースとして扱われ、他のインターフェースとの間で、IPv4/IPv6パケットのルーティングや任意のプロトコルのブリッジングを行うことができます。

■ VLANインターフェースでIPv4パケットをルーティングするには、ip addressコマンドでVLANインターフェースにIPv4アドレスを設定します。

*Router(config)# interface vlan 10
*Router(config-if)# ip address 192.168.10.1/24


■ VLANインターフェースでIPv6パケットをルーティングするには、ipv6 addressコマンドでVLANインターフェースにIPv6アドレスを設定します。

*Router(config)# interface vlan 10
*Router(config-if)# ipv6 address 3ffe:b80:3c:10::1/64


■ VLANインターフェースと他のインターフェースの間でEthernetフレームをブリッジングするには、ブリッジ機能を有効化し、ブリッジグループを作成して、VLANインターフェースと他のインターフェースをブリッジグループに割り当てます。

*Router(config)# bridge irb enable
*Router(config)# bridge-group 1
*Router(config)# interface vlan 10
*Router(config-if)# bridge-group 1
*Router(config-if)# exit
*Router(config)# interface gigabitEthernet 0
*Router(config-if)# bridge-group 1
*Router(config-if)# exit


Note - VLAN間のブリッジングはサポート対象外です。


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PN: 613-001491 Rev.E