[index] CentreCOM ARX640S コマンドリファレンス 5.1.5

IPルーティング / 経路制御(BGP)


基本設定
設定項目詳細
経路選択プロセス
経路フィルタリングとポリシー設定
設定や状態の確認


ネットワークの規模が大きくなると、手動で経路情報を登録するスタティックルーティングでは管理の手間が大きくなり、設定ミスなどによる通信障害が起きやすくなります。ダイナミックルーティングは、ルーター間で経路情報を自動的に交換しあう「ダイナミックルーティング(経路制御)プロトコル」を用いて、経路情報の管理を自動化する方法です。本製品では以下のダイナミックルーティングプロトコルを使用できます。


ここでは、BGPの設定手順について解説します。RIPの設定については「IPルーティング」の「経路制御(RIP)」を、OSPFの設定については「IPルーティング」の「経路制御(OSPF)」を、スタティックルーティングの設定方法については「IPルーティング」の「経路制御」をご覧ください。また、経路フィルタリングについては「IPルーティング」の「経路制御(フィルタリング)」をご覧ください。

Note - BGPを使用するにはフィーチャーライセンスが必要です。

基本設定

BGPを使用するための基本的な設定手順について説明します。

  1. BGPルーティングプロセスの設定を行うため、router bgpコマンドを実行してBGPモードに移行します。このとき、自AS番号を指定します。

    *Router(config)# router bgp 65010
    


  2. 自身のBGP識別子(ルーターID)を設定します。

    *Router(config-router)# bgp router-id 10.10.10.1
    


  3. 自らが提供する経路情報を設定します。たとえばインターフェース直結経路と静的経路をBGPで通知したいときはredistributeコマンドを使って次のようにします。

    *Router(config-router)# redistribute connected
    *Router(config-router)# redistribute static
    


    なお、通知するプレフィックスを明示的に指定したいときは、networkコマンドで該当プレフィックスを指定します。

    *Router(config-router)# network 192.168.10.0/24
    


  4. 接続相手のBGPスピーカー(BGPピア)を指定します。相手のIPアドレスと相手の所属AS番号を指定してください。remote-asパラメーターに指定した番号が自ASと同じならiBGPピア、違うならeBGPピアとなります。

    *Router(config-router)# neighbor 10.10.10.5 remote-as 65050
    


設定は以上です。

設定項目詳細

BGPのおもな設定項目について説明します。

■ 自AS番号の設定は、BGPルーティングプロセスの設定を開始するときにrouter bgpコマンドで行います。

*Router(config)# router bgp 65010


■ 初期設定では、インターフェースに設定されたIPアドレスの中でもっとも大きなものがBGP識別子(ルーターID)として使われます。ただし、bgp router-idコマンドでルーターIDを明示的に指定した場合はその値が使われます。また、明示的に指定していない場合でも、ループバックインターフェース(loop 0、loop 1)にIPアドレスを設定している場合は、そのアドレスがルーターIDとして使われます。


■ BGPで通知する経路情報はredistributeコマンドで指定します。インターフェース(直結)経路、スタティック経路、RIP経路、OSPF経路のそれぞれについて、BGP経路表への取り込み時にルートマップによる取捨選択や属性設定が可能です。

*Router(config-router)# redistribute connected
*Router(config-router)# redistribute static route-map imp_static


■ BGPで通知する経路情報の設定は、経路種別ごとではなく、プレフィックスごとに行うこともできます。これには、networkコマンドを使います。redistributeコマンド同様、ルートマップを指定することによって取り込み時の取捨選択や属性設定も可能です。

*Router(config-router)# network 172.16.10.0/24
*Router(config-router)# network 172.16.20.0/24
*Router(config-router)# network 10.0.0.0/12 route-map imp_net10


初期設定では、networkコマンドで指定したプレフィックスがIP経路表(RIB。show ip route databaseコマンドで表示)に登録されていなくても、該当経路をBGP経路表に登録します。network synchronizationコマンドを実行している場合は、networkコマンドで指定したプレフィックスがIP経路表に登録されていないと、該当経路はBGP経路表に登録されません。

■ 経路情報を集約したいときは、aggregate-addressコマンドを使います。同コマンドで指定したプレフィックス(集約経路)よりも具体的な経路(マスクが長い経路)がBGP経路表に現れた場合、BGP経路表に集約経路が追加されます。summary-onlyオプションを指定した場合は集約経路だけが通知され、個別経路は通知されません(使用が抑制されます)。summary-onlyオプションを指定しなかった場合は集約経路と個別経路の両方が通知されます。

*Router(config-router)# aggregate-address 172.16.0.0/16 summary-only


■ BGPピアの指定はneighbor remote-asコマンドで行います。このコマンドでは、BGPピアのIPアドレスと所属ASを指定してください。BGPピアの所属ASが自ASと違うならeBGPピア(外部ピア)、同じならiBGPピア(内部ピア)となります。

*Router(config-router)# neighbor 10.10.10.5 remote-as 65050


■ BGPピアの有効・無効(BGPセッションの開始・切断)はneighbor shutdownコマンドで行います。通常形式でセッション切断、no形式でセッション開始ができます。

*Router(config-router)# neighbor 10.10.10.5 shutdown
*Router(config-router)# no neighbor 10.10.10.5 shutdown


■ BGPピア固有の各種設定はneighbor xxxxコマンドで行います。

*Router(config-router)# neighbor 10.10.10.5 distribute-list AS65050_in


変更内容を反映するには、clear ip bgpコマンドをsoftオプション付きで実行してください(ソフトリセット)。

*Router# clear ip bgp 10.10.10.5 soft


Note - softオプションを付けずに実行すると、BGPセッションがいったん切断されるのでご注意ください(ハードリセット)。softオプションを付けた場合は、BGPセッションを保持したまま経路情報を更新します。詳しくはclear ip bgpコマンドの説明をご覧ください。

経路選択プロセス

BGP経由で学習した経路情報の中には、同じプレフィックスを持つものが複数存在する可能性があります。一般的にこれは、該当プレフィックス宛ての経路が複数あることを意味しますが、この場合どの経路をシステムの経路表に取り入れるかが重要になってきます。

あるプレフィックスへの経路が1つしか存在しない場合は、その経路を使用します。しかし、複数の経路が存在する場合は、次の流れにしたがって1つの経路に絞ります。

  1. 内部的なウェイト(重み付け)の大きい経路を優先
    ウェイトは1台のルーター内でのみ意味を持つ内部的な属性値で、neighbor weightコマンドやルートマップのset weightコマンドで任意の値を設定できる。

  2. LOCAL_PREF属性の大きい経路を優先

  3. ローカルで発信された経路を優先
    networkaggregate-addressredistributeコマンドによって学習したローカル経路を優先する。
    networkredistributeコマンドによるローカル経路のほうが、aggregate-addressコマンドによるローカル集約経路よりも優先される。

  4. AS_PATH属性の短い経路を優先
    ただし、bgp bestpath as-path ignoreコマンドを実行している場合は、AS_PATH属性の比較を行わず、次のステップに進む。

  5. ORIGIN属性。次の順序で優先
    (1) IGP
    (2) EGP
    (3) INCOMPLETE

  6. MULTI_EXIT_DISC(MED)属性の小さい経路を優先
    ただし、bgp bestpath medコマンドでremove-recv-medオプションを指定している場合は、MED属性を使わずに次のステップに進む。
    初期設定では同一ASから学習した経路間の比較にのみMED属性を使うが、bgp always-compare-medコマンドを実行している場合は、異なるASから学習した経路間の比較にもMED属性を使う。
    また、初期設定ではMED属性が付加されていない経路のMED値を0(優先度最高)と見なすが、bgp bestpath medコマンドでmissing-as-worstオプションを指定している場合は、MED値無限大(優先度最低)と見なす。

  7. iBGPピアから学習した経路よりもeBGPピアから学習した経路を優先

  8. BGPネクストホップへのIGPメトリックが小さい経路を優先

  9. 先に学習した経路(学習してからの経過時間の長い経路)を優先
    ただし、bgp bestpath compare-routeridコマンドを実行している場合は、学習してからの経過時間ではなく、学習元BGPピアのルーターIDが小さい経路を優先する。

  10. CLUSTER_LIST属性の短い経路を優先

  11. 学習元BGPピアのIPアドレス(BGPセッションで使用しているアドレス)が小さい経路を優先

経路フィルタリングとポリシー設定

BGPの運用においては、どの経路情報を受け入れるかといったフィルタリング機能、また、特定の経路情報に付加的情報を追加するポリシー設定機能が重要な意味を持ちます。

BGP経路のフィルタリングやポリシー設定については、「IPルーティング」の「経路制御(フィルタリング)」をご覧ください。

設定や状態の確認

BGPの設定や各種状態を確認するコマンドを紹介します。

■ BGPの全体設定を確認するには、show running-configコマンドでセクション名「bgp」を指定するとよいでしょう。

*Router# show running-config bgp


■ フィルタリングに用いる標準IPアクセスリスト、IPプレフィックスリスト、ルートマップは、それぞれshow running-configコマンドでセクション名「access-list」、「prefix-list」、「route-map」を指定して確認します。

*Router# show running-config access-list
*Router# show running-config prefix-list
*Router# show running-config route-map


■ BGPピアの情報を確認するには、show ip bgp neighborsコマンドやshow ip bgp summaryコマンドを使います。

*Router> show ip bgp neighbors
*Router> show ip bgp summary


■ BGP経路表を確認するにはshow ip bgpコマンドを使います。

*Router> show ip bgp


■ IP経路表(RIB)を確認するにはshow ip route databaseコマンドを使います。
IP経路表(RIB)は各種情報源から得た経路情報を蓄積するデータベースで、この中から管理距離(AD:Administrative Distance)的に最適と判断された経路がシステムのIP転送表(FIB)に登録されます。

*Router> show ip route database


■ IP転送表(FIB)を確認するにはshow ip routeコマンドを使います。
IP転送表(FIB)は、IPパケットの転送判断時に参照するデータベースで、各宛先に対する最適な経路だけが登録されています。

*Router> show ip route


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