無線LANの調子が悪く、作業が止まったりリモートの音声が途切れたりして仕事にならない。その原因は、無線LANに他の電波が干渉しているからかもしれません。
本記事では、電波干渉が発生する原因を業種ごとに特有の様々な要因に触れながら解説し、電波環境を改善するためのポイントについてもわかりやすくご紹介いたします。
無線LANが途切れる・遅くなる!その原因は電波干渉
無線LANにおける電波干渉とは、自分の使う無線LANと同じ周波数帯域を利用している電波同士が互いにぶつかったり混ざったりすることです。
電波干渉は、複数の機器が限られた帯域を奪い合った結果、同じ周波数の電波が重なることで起こります。電波が干渉されると、データを正しく読み取れなくなり、通信が不安定になります。視聴している動画が止まったり、オンライン会議の音声が途切れたりするなど、業務に様々な悪影響を及ぼすことも珍しくありません。
無線LANは、主に2.4GHz帯や5GHzを利用することが多く、特に2.4GHz帯は多くの機器が集中するため、電波干渉が起こりやすくなっています。
また、複数の無線LANが同じ周波数を利用する以外にも、家電などの電磁波が無線LANの電波に重なることで、電波干渉が発生している可能性も考えられます。
様々な業種で無線LANに電波干渉が起きる原因とは?
電波干渉は、一般的な原因のほかにも、業種特有の要因によって引き起こされることもあります。
ここでは、電波干渉の一般的な原因に加えて、学校や病院、エンタープライズ企業、製造現場といった業種ごとの原因についても解説いたします。
電波干渉の一般的な原因
電波干渉の原因として、まず複数の機器が同じ周波数帯を利用していることが挙げられます。特に、2.4GHz帯は電子レンジやBluetooth機器など、多数の電子機器が利用するため、電波干渉が起こりやすいです。
次に、アクセスポイントの不適切な設置が挙げられます。例えば、間隔が狭すぎる設置や、壁や金属などの遮蔽物の影響を無視した設置では、干渉が発生する可能性が高くなります。
無線LAN自体に適切な設計・管理がされていない場合も、電波干渉の原因となるので注意が必要です。チャンネル設定や電波強度が不適切でないかなどについても、確認するようにしましょう。
学校で電波干渉が起こる原因
学校では、教室ごとにアクセスポイントが設置されており、隣接した教室が無線LANを同時に利用することが多いため、電波干渉が起きやすい環境となっています。加えて、教室ごとにアクセスポイントの電波強度に差があると、強い電波が他教室の無線LANに干渉することもあります。
また、教室ごとに独立した帯域を構築することは難しく、電波干渉を防ぎきれないのが現状です。
加えて、学校ごとに環境条件が異なり、その学校特有の要因によって電波干渉が発生することもあります。特に、住宅地の真ん中にある学校では、周辺住宅にある無線LANの電波に干渉されることも少なくありません。
児童・生徒や来校者のスマートフォンのWi-Fi機能が有効になっている場合も、電波干渉が起こる原因となるでしょう。
病院で電波干渉が起こる原因
病院には医用テレメータやナースコールなど多くの医療機器が稼働しており、電波干渉が起こりやすい環境となっています。さらに、アクセスポイントを病室ごとに設置している場合、病室が多数であるほど電波が干渉しあう可能性が高いです。
病院の構造自体も、電波干渉の原因である可能性があります。病院内は天井や床などに電波を遮断しやすい素材が多く使われているほか、電波の反射や回り込みが複雑に起こるからです。
一方で、廊下など見通しの良い場所では、電波が遠くまで届いて別フロアの電波に干渉する恐れもあります。
患者のポケットWi-FiやBluetooth機器が、電波干渉の一因になることも少なくありません。
エンタープライズ企業で電波干渉が起こる原因
エンタープライズ企業では、Bluetoothをはじめ多くの無線機器を企業内で使う場面が多く、電波干渉が発生しやすくなっています。
また、オフィスが入る複合ビルの設備が電波干渉の原因となることもあります。実際に、ビルに備え付けられたエアコンによって電波が干渉されていたこともありました。
周辺環境の影響も見逃せません。オフィスエリア内にある企業の場合、ビルとビルの間隔が狭いことがあり、外部の電波が届いて無線LANに干渉してしまうこともあります。
ビルの構造に使われた素材や、壁やドアなどのレイアウトが電波を遮蔽・反射などを起こし電波が重なってしまうことも、よくある事例の一つです。
製造現場で電波干渉が起こる原因
製造現場は、電波環境が厳しいことが多いです。主な原因に、製造現場で使用される製造機器やモーターが発するノイズが、電波に干渉することが挙げられます。このため、多様な機器が稼働している現場であるほど、電波干渉が発生しやすい環境となっています。
製造現場自体の環境も、電波干渉の原因となります。現場となる工場では、機械やラック、鉄板など多くの金属があり、電波が反射して干渉が起こりやすくなっています。広い空間や仕切りも多いため、電波が届きにくい箇所ができやすいことにも注意が必要です。
産業用無線リモコンをはじめ、多くの無線機器が同じ周波数帯を利用する場面が多いことも、電波環境が厳しい一因となっています。
無線LANを電波干渉から守るためのポイント
電波干渉によって業務に悪影響が出ている場合、どのような対策をとれば電波環境を改善できるのでしょうか。
ここでは、無線LANを電波干渉から守るポイントについて、詳しくご紹介していきます。
周波数帯とチャンネルを最適化する
まずは、無線LANの使用する周波数帯を最適化することが大切です。
周波数帯は、混雑しやすい2.4GHzではなく、5GHz帯やWi-Fi 6E規格で利用可能になった6GHz帯を利用しましょう。ただし、近年は5GHz帯に対応する端末が増えているため、環境によっては有効でない可能性もあります。
やむを得ず2.4GHz帯を利用するのであれば、チャンネル設定の最適化を行いましょう。互いの周波数帯を重複しないよう設定できるチャンネルには、1chや6ch、11chなどが挙げられます。
周辺の電波環境に合わせて、手動で固定設定することも有効です。
アクセスポイントの設置を適切にする
適切なアクセスポイントの設置も、電波干渉を防ぐ重要なポイントです。
アクセスポイントの設置を適切にするには、電波測定ツールの利用をおすすめします。電波測定ツールでは、設置予定エリアの電波強度や干渉状況を正確に把握することが可能です。
教室や病室にアクセスポイントを設置する際は、隣接する部屋のアクセスポイントと適切な距離を保ちましょう。
製造現場など、金属が多い箇所や電波が届きにくい箇所がある場合は、アクセスポイントの増設や補助アンテナの設置を検討しましょう。逆に、電波が広範囲に届きやすい病院の廊下や吹き抜けでは、指向性アンテナを活用して狙った箇所に電波が届くように調整することが大切です。
電子レンジや医療機器、ビル設備のエアコンの近くなどは干渉が発生しやすいので、極力アクセスポイントを設置しないようにしてください。
周辺環境も考慮したアクセスポイントの設置を行う
アクセスポイントを設置する際は、周辺環境からの影響も見逃せません。
周辺住宅や隣接するビルなど他施設から届く電波も、電波測定ツールを使うことで視覚的に把握することができます。
近隣から強い電波が入ってくることが確認されたら、測定結果を基にアクセスポイントのチャンネルを再度設計したり設置場所を工夫したりして、電波干渉を回避しましょう。
電波強度を適切にする
アクセスポイントの電波強度は適切に調整し、他フロアと重ならないようにしましょう。
部屋が隣接しており設置間隔が狭すぎる場合は強度を落とすなど、距離や配置によって調整を変えることも有効です。
特に、廊下といった開放的な空間は電波が届きすぎるため、他の電波と重ならないように出力を抑えることが大切になります。
通信品質や電波環境の監視、運用管理を行う
無線LANを快適に利用するためには、常に通信品質や電波環境を監視し、問題点があれば改善や対応などを行うことが重要です。
基本的には、電波測定ツールを利用して、電波強度やチャンネルの利用状況を常時測定しましょう。電波干渉が起きていれば、その周波数帯や時間帯を特定し、適切な対応を行うことで電波環境を改善することができます。
電波調査も定期的に行い、チャンネルの重複や干渉がある箇所や電波が届いていない、または過剰な箇所がないかチェックすることも重要なポイントです。
アクセスポイントのチャンネル設定や電波出力の調整も定期的に実施し、環境の変化に応じて最適化を施すことも、電波干渉を防ぐ対策になります。
外部の方の端末利用に一定のルールを設ける
外部の方が持ち込んだスマートフォンのテザリングやBluetooth機器の使用も電波干渉の一因となるため、端末の利用に一定のルールを設けることが必要です。
学校の場合は来校者の多い参観日のお知らせなどに、授業中はスマートフォンやBluetooth機器の電源を落としてもらうよう周知しましょう。病院では、来院者に対してポケットWi-Fiやスマートフォンのテザリングの利用に一定の制限を設けることが大切です。
また、外部の来客者向けにゲストWi-Fiを提供することで、より効果的に電波干渉を防げるでしょう。特に、打ち合わせ時にパソコンを使うことが多いエンタープライズ企業や製造業では、社員と来客者双方の通信が安定することで、業務の円滑化にもつながります。
無線LANを電波干渉から守るには、「導入支援サービス Net.Pro」がおすすめ!
電波干渉を防ぎ安定した電波環境に改善するためには、原因の調査やアクセスポイントの適切な設置が必要となります。
しかしながら、電波環境の調査やアクセスポイントの検証は、非常に手間がかかります。加えて、学校や病院、オフィスビル、製造現場は建物構造や環境が複雑であることが多く、原因の特定や電波の調整が難しい傾向にあります。
アライドテレシスでは、こうした電波干渉にお悩みの企業に向け、「導入支援サービス Net.Pro」の診断サービスの1つとして「無線LANサーベイ」を提供しています。
無線LANサーベイでは、電波測定ツールで電波調査を行い、観測された結果を基にアクセスポイントの設置台数や、電波干渉を防ぐのに最適な設置ポイントを提案しております。適切な設置場所を見つけることが難しい環境であっても、最も効率的な設置場所を割り出し、安定した通信環境の構築をサポートいたします。
定期的な調査も実施しており、電波干渉が起きやすい箇所を特定し、迅速に対応することも可能です。
実際に、無線LANの切断や中断が頻発していたパラマウントベッドインドネシア様の事例では、無線LANサーベイの結果を基に最適な設置場所や電波設計の提案を行い、電波環境の改善をいたしました。
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