電子カルテや医療機器、部門システムなど、医療現場ではさまざまな仕組みがネットワークを前提に動いています。そのため通信が止まれば、診療や業務にも影響が及びます。一方で、実際の現場では障害そのものだけでなく、「異常が起きていることに気づけない」という課題を抱えるケースも少なくありません。今回は新東京病院の事例をもとに、医療現場で求められるネットワーク運用のあり方について考えます。
24時間動く現場だからこそ、ITも止まれない
オフィスであれば、夜間や休日に一時的な障害が発生しても、翌営業日に対応できる場合があります。しかし病院は違います。救急外来や病棟業務は24時間365日続き、電子カルテや検査システム、医療機器も常に利用されています。
ネットワークは普段意識されることの少ない存在ですが、実際には診療を支える重要な基盤です。もし通信障害が発生すれば、必要な情報を参照できなくなったり、業務が滞ったりする可能性があります。だからこそ医療機関では、「止まらないこと」が重要視されてきました。
しかし近年は、もう一つの課題も見過ごせなくなっています。
それは、障害が発生した際に「いつ気づくのか」という問題です。
障害は起きる。問題はいつ把握できるか
多くの組織では、利用者からの問い合わせがきっかけで障害に気づくことがあります。
「つながらない」「システムが遅い」「画面が開かない」こうした連絡を受けて確認し、原因を調査する流れです。
もちろん、それでも運用はできます。しかし、もし夜間に障害が発生した場合はどうでしょうか。利用者から連絡がなければ、異常に気づくのが翌朝になるかもしれません。
特に医療機関では、病院だけでなくクリニックや関連施設も含めて限られた人数で運用しているケースが少なくありません。システム管理者がすべての機器や回線の状態を常に監視することは現実的ではなく、「問題が起きたら対応する」という受け身の運用になりがちです。
そのため近年は、障害そのものを防ぐだけでなく、異常を早期に把握できる仕組みづくりが重要になっています。
求められるのは「見える運用」
ネットワークの更新というと、性能向上や機器の更改に注目が集まりがちです。
もちろん老朽化対策は重要です。しかし実際の運用を考えると、管理者が状況を把握しやすいことも同じくらい重要です。
たとえば、
- ネットワーク全体の状態を可視化する
- 異常を自動的に検知する
- 夜間や休日も監視する
- 機器故障時の復旧を迅速化する
といった仕組みがあれば、担当者は利用者からの連絡を待つのではなく、問題を早い段階で把握できるようになります。
利用者にとって理想なのは「ネットワークを意識しないこと」です。その当たり前を実現するためには、裏側での監視や運用体制の整備が欠かせません。
新東京病院が進めた段階的な見直し
千葉県松戸市の新東京病院では、2012年の開院以来利用してきたネットワーク基盤の本格的な見直しを実施しました。目的は単なる機器更新ではなく、安定稼働と運用負荷軽減の両立です。
同院では病院本体だけでなく関連施設も含めたIT基盤を少人数で運用しており、障害検知や初動対応が課題となっていました。そこで更改計画を複数フェーズに分けながら、コア・スイッチや無線LAN、ルーターなどを段階的に刷新。併せてネットワーク全体の構成も見直しました。
さらに24時間365日の監視体制やネットワークの可視化、機器故障時の自動復旧を支援する仕組みを導入。加えて無線LANの統合や利用エリアの拡張も進め、院内の利便性向上とBCP対策強化にも取り組んでいます。
こうした取り組みにより、運用負荷の軽減だけでなく、利用者が場所を問わず安全かつ安定的にシステムを利用しやすい環境づくりが進められました。
意識しなくていいITが、医療を支える
ネットワークは、問題なく動いている限り意識されることはほとんどありません。
だからこそ、その価値は見えにくいものです。
しかし医療現場では、電子カルテや医療機器、各種システムが当たり前に利用できること自体が重要な意味を持っています。その背景には、異常を早期に把握し、問題が起きても迅速に対応できる運用体制があります。
新東京病院の事例は、「ネットワークを更新した話」ではなく、「利用者が意識せずに使える環境をどう支えるか」という取り組みともいえるでしょう。
なお、本取材は医療・介護の総合情報サイト「医療介護CBニュース」との共同企画として実施したものです。CBニュース掲載記事では、急性期病院における「止まらない医療」を支える基盤の考え方を、NETREND関連記事では医療現場に求められるネットワーク運用の視点を、それぞれ異なる切り口で紹介しています。詳しい構成や導入内容については、導入事例をご覧ください。
今回ご紹介した導入事例はこちら
<CBニュース掲載記事>
<NETREND関連記事>
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