Wi-Fi 6EとWi-Fi 7の違いとは?行政機関・学校・病院が導入する際の判断基準と注意点を解説

Wi-Fi 6EとWi-Fi 7は、高速通信を実現できる次世代の無線LAN規格として登場し、昨今では行政機関・学校・病院においてもDXの推進に伴い注目されています。
しかし、導入を検討するにあたって、Wi-Fi 6EとWi-Fi 7の違いや、どちらを採用すればよいかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事ではWi-Fi 6EとWi-Fi 7の基礎知識の違いや、行政機関・学校・病院が導入する際の判断基準と注意点についてわかりやすく解説します。

目次

Wi-Fi 6EとWi-Fi 7の違いとは?

まずはWi-Fi 6EとWi-Fi 7の基礎知識や両者の違いについて解説します。
どちらも高速通信が可能な規格ですが、機能には大きな違いがあります。導入を検討する際は、それぞれの特徴を理解することが大切です。

Wi-Fi 6Eとは?

Wi-Fi 6Eとは、高速通信に対応したWi-Fi 6をベースとして、新たに6GHz帯の周波数にも対応した無線通信規格です。
従来のWi-Fiでは、主に 2.4GHz 帯や 5GHz 帯が利用されてきました。しかし、これらの周波数帯はスマートフォンやパソコンをはじめ多くの機器が使用しているため、利用環境によっては通信速度が低下したり接続が不安定になったりする課題がありました。
一方、6GHz帯は、この周波数帯での通信に対応した端末やアクセスポイントのみが利用できるため、従来の周波数帯よりも混雑しにくい特徴があります。多数の端末が同時接続される環境でも安定した高速通信が可能になるため、近年では行政機関・学校・病院においても導入が進められています。

Wi-Fi 7とは?

Wi-Fi 7とは、さらなる高速通信や低遅延性、安定性を向上させる目的で開発された、Wi-Fi 6やWi-Fi 6Eの次世代となる無線LAN規格です。
Wi-Fi 7では、従来の2.4GHz帯・5GHz帯に加え、Wi-Fi 6Eから利用可能となった6GHz帯も活用できます。
さらに、複数の周波数帯やチャネルを同時に利用して通信できる「MLO(Multi-Link Operation)」という技術が採用されている点が大きな特徴です。MLOによって、通信状況に応じて複数の帯域を効率よく利用できるため、多数の端末が接続される環境や大容量のデータ通信が必要になる場面でも、通信が混雑しにくくなります。

さらに、周波数の利用を最適化するための「Multi-RU」や、電波干渉の影響を最小限に抑えるための「Preamble Puncturing」などの技術により、通信の安定性が向上しています。
今後はクラウドサービスやIoT機器、AIなどの活用が拡大すると考えられています。そのため、これらのサービスを活用する場合や、行政機関・学校・病院などの端末の同時接続数が多い環境では、Wi-Fi 7への期待が寄せられています。

Wi-Fi 6EとWi-Fi 7では何が違う?

Wi-Fi 6EとWi-Fi 7は、どちらも6GHz帯を利用できる規格ですが、両者には大きな違いがあります。

Wi-Fi 6Eは、従来のWi-Fi 6を6GHz帯まで広げた規格です。混雑しやすい2.4GHzや5GHz帯に加え、新たに空いている6GHz帯を使えるようにすることで、「電波の混雑を回避すること」を目的としています。

一方、Wi-Fi 7は6GHz帯の活用に加え、MLOなどの技術によって通信性能を底上げした次世代規格です。単に周波数帯を増やすだけでなく、通信速度・安定性・低遅延性能を向上させている点が特徴です。

現状の通信課題の解決が目的であればWi-Fi 6Eでも十分なケースは多いですが、将来的な端末の増加、クラウドサービスや動画配信などのサービス拡大を見据える場合は、Wi-Fi 7の導入も有力な選択肢となります。

Wi-Fi 7とWi-Fi 6Eの違いや技術についての詳しい説明は、NETREND「IT基礎知識」ページでもご紹介しています。
もっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

行政機関・学校・病院でWi-Fi 6EやWi-Fi 7が求められる背景

行政機関・学校・病院でも、DX推進やAI、クラウドなどの活用が拡大しており、Wi-Fi環境の整備が求められています。Wi-Fi 6EやWi-Fi 7が注目されている背景について、各機関の通信課題を通して解説していきます。

行政機関での通信課題

近年では、行政DXが国策として推進されており、行政機関にも安定した無線LAN環境が求められています。

例えば、電子決済や地理情報システム(GIS)、行政手続きのオンライン化などにより、庁舎内で扱うデータ量や同時接続端末数が増加しています。その結果、従来の2.4GHz帯や5GHz帯では、通信混雑や電波干渉、トラフィック増加による通信遅延が課題となるケースがあります。
実際、近隣に空港がある自治体の市役所では、5GHz帯が気象レーダーや航空レーダーとの電波干渉を避けるためのDFS機能による通信停止が頻発していました。この問題を解決するために、6GHz帯を利用できるWi-Fi 6Eが導入されています。
Wi-Fi 6EやWi-Fi 7は、通信の混雑や電波干渉を避けやすいため、行政サービスの安定運用や災害時の情報収集を支える通信基盤として期待されています。

学校での通信課題

全国の小中学校では、文部科学省が進める「 GIGAスクール構想 」により、児童生徒1人につき1台の端末が配備されるようになりました。これにより、学校では多数のタブレットやパソコンがWi-Fiへ同時接続される場面が増加しており、安定した高速通信への需要が高まっています。
しかし、十分な通信環境を確保できていない学校は依然として一定数存在します。文部科学省が発表した令和7年度「学校のネットワーク状況に関する調査」では、学校規模ごとの推奨帯域を満たしていない学校が約4割と、ネットワーク環境の課題が残っていることが分かります。

学校内のWi-Fiは教室だけでなく、職員室や図書室などの様々な場所で利用されるものです。また、学校の通信環境が整備されると、高画質なオンライン授業やクラウド教材なども利用しやすくなるため、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7の導入は教育の質の向上につながると期待されています。

病院での通信課題

病院では、医療DXの推進に伴い電子カルテや医療情報システム、医療スタッフ用端末、患者向けWi-Fiなど、ネットワークを利用する機器やサービスが増加しています。
さらに、電子カルテ情報共有サービスなど、医療機関同士で診療情報を連携・共有する仕組みも進んでおり、院内ネットワークには通信の高い安定性や信頼性が求められています。

しかし、病院では医用テレメータや無線式ナースコール、各種医療機器など、様々な無線機器が利用されているため、電波干渉や通信混雑が発生しやすいです。通信障害が発生すると、電子カルテの閲覧やスタッフ間の情報共有、患者対応などに影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、病院では業務用通信と来院者向けの通信を適切に分離し、安定して利用できる無線LAN環境を整備することが重要です。
既存帯域の混雑を避けやすいWi-Fi 6EやWi-Fi 7は、病院内の通信を支えるネットワーク基盤として期待されています。

Wi-Fi 6EとWi-Fi 7はどちらを選ぶべき?3つの判断基準

行政機関・学校・病院のように公共性が高い施設では、通信の課題だけでなく予算や更新タイミングなど、様々な考慮要素があります。
以下では、通信の課題ごとにWi-Fi 6EとWi-Fi 7を検討する際の判断基準を解説します。

既存の端末を活かしながら通信混雑を改善したい場合

通信速度の低下や接続の不安定さが課題となっている場合は、Wi-Fi 6Eが有効な選択肢です。

行政機関・学校・病院では、DX推進や端末数増加により、無線LANへ接続する機器が急増しています。既存の2.4GHz帯や5GHz帯へ通信が集中すると、利用者が多い時間帯に接続が不安定になったり通信遅延が発生したりする原因となります。
Wi-Fi 6Eでは、対応端末を6GHz帯へ分散させることが可能であるため、2.4GHz帯や5GHz帯の負荷を軽減しやすくなります。そのため、6GHz帯対応端末を導入したばかりの環境や、導入途中の環境であっても、既存の非対応端末を含めた通信環境全体の改善が期待できます。

今後通信量が大幅に増える予定はないものの、「まずは現在のWi-Fi環境を改善したい」「既存の端末も活かしながら通信混雑を緩和したい」という場合は、Wi-Fi 6Eが導入しやすい規格となります。

大容量通信や低遅延通信を重視する場合

大容量通信や低遅延通信を重視する場合は、Wi-Fi 7が有力な選択肢です。

行政機関・学校・病院では、Web会議や動画教材、医療情報システムなど、通信品質が業務効率やサービスの質に直結する場面が増えています。これらの用途では、通信速度に加えて遅延の少なさや接続の安定性も重要になります。
Wi-Fi 7はMLOや最大320MHz幅のチャネル(6GHzを利用する場合のみ)に対応しているため、大容量データ通信やリアルタイム通信が安定しやすい特徴があります。

安定した通信の確保や、通信品質が業務に直結する施設では、Wi-Fi 7の導入を検討することが大切です。

更新タイミングや予算を踏まえて選ぶ場合

行政機関・学校・病院では、あらかじめ予算を決められている場合が多いため、ネットワーク機器を短期間で何度も更新することは容易ではありません。

例えば、限られた予算で早期に通信環境を改善したい場合や、端末数が少ない場合は、まずWi-Fi 6Eを導入し、段階的に整備する方法が現実的です。
一方で、校内・庁内・院内ネットワークの大規模更新が実施される場合は、将来的な拡張性を考慮してWi-Fi 7を導入するメリットが大きくなります。

行政機関や学校、病院は、DXの推進により、端末数や通信量が今後さらに増加する可能性があります。こうした背景から、初期費用だけでなく将来的な運用や再更新コストも含めて、Wi-Fi 6EとWi-Fi 7を比較検討することが大切です。

Wi-Fi 6EやWi-Fi 7を選定する上での注意点3つ

Wi-Fi 6EやWi-Fi 7は次世代の無線LAN規格として注目されていますが、行政機関・学校・病院においては、単にこれらを導入するだけでは十分な効果を得られない場合があります。
Wi-Fi 6EやWi-Fi 7を選定する際は、ここで解説する3つの注意点を念頭に検討しましょう。

Wi-Fi 6EやWi-Fi 7への対応状況を確認する

Wi-Fi 6EやWi-Fi 7は、ルーターやアクセスポイントだけでなく、利用する端末側も6GHz帯やMLOなどに対応していなければ、従来の規格でしか通信できません。
しかし、行政機関・学校・病院では、既存のWi-Fi設備や有線ネットワーク機器を長期間利用しているケースが多く、最新規格へすぐに対応できない場合があります。
特に学校では、「GIGAスクール構想」で配備された端末とWi-Fi 6Eの普及時期にズレがあり、生徒用端末が6GHz帯へ対応していないケースも多く見られます。
また、アクセスポイントの上流にあるスイッチングハブやLANケーブルなどの有線機器が高速通信に対応していない場合、これがボトルネックとなりWi-Fi 6EやWi-Fi 7の性能を発揮できないおそれもあります。

このように、Wi-Fi環境は無線機器だけでなく、端末や有線ネットワーク機器を含めた全体の対応状況を確認することが重要です。
現時点では、Wi-Fi 7は普及期に入りつつあるものの、既存の業務端末や安価なモデルでは未対応のケースが多いです。そのため、まずはWi-Fi 6Eを導入し、一部の対応端末を6GHz帯へ分散して従来の周波数帯の混雑を緩和する方が、費用対効果の高い選択肢となります。
一方で、直近で端末を更新する予定がある場合は、Wi-Fi 7対応端末の性能を活かすためにも、Wi-Fi 7を導入することも有効です。

6GHz帯は遠くまで届きにくい

電波は周波数帯が高くなるほど減衰しやすく、壁や床などの障害物の影響も受けやすくなります。そのため、6GHz帯は2.4GHz帯や5GHz帯と比較すると、電波が遠くまで届きにくい特徴があります。
行政機関・学校・病院は、鉄筋コンクリート造の建物や防火扉、金属製ドアなどが設置されていることが多く、電波が減衰しやすい環境である点に注意が必要です。

もっとも、Wi-Fi 6EやWi-Fi 7は2.4GHz帯や5GHz帯も利用できます。しかし、Wi-Fi 6Eまでは2.4GHz・5GHz・6GHzのいずれか1つの周波数帯を切り替えて通信を行うため、遮蔽物が多い環境では通信にラグや遅延が発生しやすくなります。
一方、Wi-Fi 7はMLOによって、複数の周波数帯を同時に利用できるため、一部の電波が遮蔽物に遮られても通信が途切れにくいメリットがあります。そのため、電波が遠くまで飛びにくい環境では、1台のアクセスポイントで広範囲の通信環境をカバーできる可能性があるWi-Fi 7を導入する方が、費用対効果の高い選択肢となるでしょう。

導入・運用コストの見積もりが必要

Wi-Fi 6EやWi-Fi 7に対応したアクセスポイントは、従来機器よりも高価になります。また、利用中のパソコンやタブレットが6GHz帯へ対応していない場合は、端末の買い替えを検討しなければいけません。
さらに、先述している6GHz帯の電波の特性から、十分な通信品質を確保するためにはアクセスポイントを増設や配置の見直しをしなければならないケースもあります。この場合、機器の費用だけでなく、配線工事費や設置工事費が追加で発生する可能性があります。

行政機関・学校・病院では施設規模が大きくなりやすいため、導入・運用コストが高額になる傾向があります。Wi-Fi 6EやWi-Fi 7へ移行する際は、導入費用だけでなく、長期的な運用コストまで含めて見積もりを行うことが重要です。
コスト面や既存の通信環境の制約が厳しい場合は、Wi-Fi 6の導入も現実的な選択肢となります。

まとめ

Wi-Fi 6EやWi-Fi 7は、混雑を回避しながら高速通信を可能にする次世代の無線LAN規格です。そのため、DXが進められている行政機関・学校・病院でも、通信環境の課題を解決するために注目されています。
ただし、導入時には6GHz帯の電波特性を理解した上でアクセスポイントを設置しなければならず、端末側の対応状況なども確認する必要があります。
Wi-Fi 6EとWi-Fi 7の違いを理解した上で、施設の課題に合わせた通信環境を整備していきましょう。

「自分の環境にはこちらがいい気がするけど、じゃあ製品は何を選んだらいいだろう?」「違いは分かったけどまだ迷ってしまう…」「導入のついでにこんな無線LANの悩みは解決できるの?」と思われた方は、こちらのページもぜひチェックしてみてください。

  • 本記事の内容は公開日時点の情報です。
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