設定例集#31: PPPoE接続環境におけるJuniper SSGシリーズとの2点間IPsec VPN
PPPoEでインターネットに接続している拠点間をIPsecで結ぶVPN構築例です。
インターネットサービスプロバイダー(以下 ISP)から固定IPアドレスが割り当てられるルーター間をIPsec(ESP)トンネルで接続します。
この例では対向ルーターとしてJuniper SSG520を想定しています。
本設定例は、IKEv1を利用したIPsec VPNの一構成例であり、Juniper SSGシリーズとの接続性を保証するものではありません。
以下に述べる手順は一例です。使用するファームウェアのバージョンなどによっては、以下の手順で接続できない可能性もあります。詳しくは、各製品のマニュアルなどをご参照ください。
構成

|
ルーターA (本製品) |
ルーターB (SSG520) |
ISPから提供された情報 |
ISP接続用ユーザー名 |
user@isp1 |
user@isp2 |
ISP接続用パスワード |
isppasswd1 |
isppasswd2 |
PPPoEサービス名 |
指定なし |
指定なし |
WAN側IPアドレス |
10.0.0.1/32 |
10.0.0.2/32 |
ルーターの基本設定 |
WAN側物理インターフェース |
eth1 |
ethernet0/2 |
WAN側(ppp0)IPアドレス |
10.0.0.1/32 |
10.0.0.2/32 |
LAN側(vlan1)IPアドレス |
192.168.10.1/24 |
192.168.20.1/24 |
VPN接続設定 |
ローカルセレクター |
192.168.10.0/24 |
192.168.20.0/24 |
リモートセレクター |
192.168.20.0/24 |
192.168.10.0/24 |
IKEフェーズ1(ISAKMP)設定 |
IKEバージョン・交換モード |
IKEv1 Mainモード |
アルゴリズム |
AES128 / SHA1 / Group2 |
ローカルID |
始点アドレス(デフォルト) |
始点アドレス |
SA有効期間 |
1時間 |
IKEフェーズ2(IPsec)設定 |
アルゴリズム |
AES128 / SHA1 |
[事前共有鍵]
本構成における設定のポイントは、次のとおりです。
- ルーターA、Bともに固定IPアドレスを持つので、どちらからでも通信を開始できます。
- LAN側端末からインターネットへのアクセスは、ルーターA、BともにVPNを介さず直接ルーティングします。
設定開始前に
自動設定の確認と削除
本設定例に掲載されているコマンドは、設定がまったく行われていない本製品の初期状態(スタートアップコンフィグなしで起動した状態)から入力することを前提としています。
そのため、通常は erase startup-config を実行し、スタートアップコンフィグが存在しない状態で起動してから、設定を始めてください。
ただし、本製品はスタートアップコンフィグなしで起動した場合でも、特定の条件を満たすと自動的な設定を行うことがあるため、その場合は設定例にしたがってコマンドを入力しても、コマンドがエラーになったり、全体として意図した動作にならない可能性があります。
これを避けるため、設定開始にあたっては次のいずれかの方法をとることをおすすめします。
- ネットワークケーブルを接続せずに起動する。
起動時に自動設定が実行されるための条件の一つに、特定インターフェースのリンクアップがあります。
ネットワークケーブルを接続しない状態で起動することにより、自動設定の適用を回避できます。
- 自動設定を手動で削除してから設定を行う。
前記の方法を採用できず自動設定が適用されてしまった場合は、「自動的な設定内容の削除」にしたがって、これらを手動で削除してから設定を開始してください。
自動設定が行われる条件などの詳細については、AMF応用編のAMFネットワーク未検出時の拡張動作をご参照ください。
システム時刻の設定
ログなどの記録日時を正確に保ち、各種機能を適切に動作させるため、システム時刻は正確にあわせて運用することをおすすめします。
特に本製品はリアルタイムクロックを内蔵していないため、起動するたびに時刻をあわせる必要があります。
ご使用の環境にあわせ、次のいずれかの方法でシステム時刻を設定してください。
ルーターA(本製品)の設定
- WANポートeth1上にPPPoEインターフェースppp0を作成します。これには、encapsulation pppコマンドを使います。
PPPの詳細は「PPP」/「一般設定」をご覧ください。
interface eth1
encapsulation ppp 0
- PPPインターフェースppp0に対し、PPPoE接続のための設定を行います。
・LCP EchoによるPPP接続状態の確認(keepalive)
・IPアドレスの固定設定(ip address)
・ユーザー名(ppp username)
・パスワード(ppp password)
・MSS書き換え(ip tcp adjust-mss)
PPPの詳細は「PPP」/「一般設定」をご覧ください。
interface ppp0
keepalive
ip address 10.0.0.1/32
ppp username user@isp1
ppp password isppasswd1
ip tcp adjust-mss pmtu
- LAN側インターフェースvlan1にIPアドレスを設定します。これにはip addressコマンドを使います。
IPインターフェースの詳細は「IP」/「IPインターフェース」をご覧ください。
interface vlan1
ip address 192.168.10.1/24
- ファイアウォールやNATのルール作成時に使うエンティティー(通信主体)を定義します。
エンティティー定義の詳細は「UTM」/「エンティティー定義」をご覧ください。
内部ネットワークを表すゾーン「private」を作成します。
これには、zone、network、ip subnetの各コマンドを使います。
zone private
network lan
ip subnet 192.168.10.0/24
network peer
ip subnet 192.168.20.0/24 interface tunnel0
network tunnel
ip subnet 192.168.100.0/30
- 外部ネットワークを表すゾーン「public」を作成します。
前記コマンドに加え、ここではhost、ip addressの各コマンドも使います。
zone public
network wan
ip subnet 0.0.0.0/0 interface ppp0
host ppp0
ip address 10.0.0.1
- ファイアウォールやNATのルール作成時に通信内容を指定するために使う「アプリケーション」を定義します。
これには、application、protocol、sport、dport、icmp-type、icmp-codeの各コマンドを使います。
アプリケーション定義の詳細は「UTM」/「アプリケーション定義」をご覧ください。
IPsecのESPパケットを表すカスタムアプリケーション「esp」を定義します。
application esp
protocol 50
- ISAKMPパケットを表すカスタムアプリケーション「isakmp」を定義します。
application isakmp
protocol udp
sport 500
dport 500
- 外部からの通信を遮断しつつ、内部からの通信は自由に行えるようにするファイアウォール機能の設定を行います。
これには、firewall、rule、protectの各コマンドを使います。
・rule 10, 20 - IPsec(ESP)パケットを許可します
・rule 30, 40 - ISAKMPパケットを許可します
・rule 50 - 内部から内部への通信を許可します
・rule 60 - 内部から外部への通信を許可します
ファイアウォールの詳細は「UTM」/「ファイアウォール」をご覧ください。
firewall
rule 10 permit esp from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 20 permit esp from public.wan to public.wan.ppp0
rule 30 permit isakmp from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 40 permit isakmp from public.wan to public.wan.ppp0
rule 50 permit any from private to private
rule 60 permit any from private to public
protect
- LAN側ネットワークに接続されているすべてのコンピューターがダイナミックENAT機能を使用できるよう設定します。
これには、nat、rule、enableの各コマンドを使います。
NATの詳細は「UTM」/「NAT」をご覧ください。
nat
rule 10 masq any from private to public
enable
- 対向ルーターとの間で使用するISAKMPの事前共有鍵を設定します。これにはcrypto isakmp keyコマンドを使います。
crypto isakmp key secret address 10.0.0.2
- IPsecの通信方式を規定するIPsecプロファイルを作成します。
IPsecプロファイルの詳細は「VPN」/「IPsec」をご覧ください。
ここでは、crypto ipsec profileコマンドでIPsecプロファイルを作成し、以下の情報を設定します。
・SA有効期間(lifetime)
・アルゴリズム(transform)
crypto ipsec profile ipsec1
lifetime seconds 3600
transform 1 protocol esp integrity SHA1 encryption AES128
- ISAKMPの通信方式を規定するISAKMPプロファイルを作成します。
ISAKMPプロファイルの詳細は「VPN」/「IPsec」をご覧ください。
ここでは、crypto isakmp profileコマンドでISAKMPプロファイルを作成し、以下の情報を設定します。
・IKEバージョン(version)
・SA有効期間(lifetime)
・アルゴリズム(transform)
crypto isakmp profile isakmp1
version 1 mode main
lifetime 3600
transform 1 integrity SHA1 encryption AES128 group 2
- 対向ルーターとの間で使用するISAKMPプロファイルを指定します。これにはcrypto isakmp peerコマンドを使います。
crypto isakmp peer address 10.0.0.2 profile isakmp1
- IPsecトンネルインターフェースtunnel0を作成します。
トンネルインターフェースの詳細は「VPN」/「トンネルインターフェース」を、IPsecの詳細は「VPN」/「IPsec」をご覧ください。
これには、interfaceコマンドでトンネルインターフェースを作成し、以下の情報を設定します。
・トンネルインターフェースから送信するデリバリーパケットの始点(自装置)アドレス(tunnel source)
・トンネルインターフェースから送信するデリバリーパケットの終点(対向装置)アドレス(tunnel destination)
・トンネルインターフェースに適用するローカルセレクター(tunnel local selector)
・トンネルインターフェースに適用するリモートセレクター(tunnel remote selector)
・トンネルインターフェースに対するIPsec保護の適用とIPsecプロファイルの指定(tunnel protection ipsec)
・トンネリング方式(tunnel mode ipsec)
・トンネルインターフェースのIPアドレス(ip address)
・トンネルインターフェースにおけるMSS書き換え設定(ip tcp adjust-mss)
・トンネルインターフェースのMTU(mtu)
interface tunnel0
tunnel source 10.0.0.1
tunnel destination 10.0.0.2
tunnel local selector 192.168.10.0/24
tunnel remote selector 192.168.20.0/24
tunnel protection ipsec profile ipsec1
tunnel mode ipsec ipv4
ip address 192.168.100.1/30
ip tcp adjust-mss 1260
mtu 1300
- デフォルト経路(0.0.0.0/0)とルーターBのLAN側(192.168.20.0/24)への経路を設定します。これにはip routeコマンドを使います。
ただし、ルーター間のVPN接続が有効になるまでは、対向側LANへの経路は使用できないように設定します。
IP経路設定の詳細は「IP」/「経路制御」をご覧ください。
ip route 0.0.0.0/0 ppp0
ip route 192.168.20.0/24 tunnel0
ip route 192.168.20.0/24 Null 254
- 以上で設定は完了です。
end
設定の保存
■ 設定が完了したら、現在の設定内容を起動時コンフィグとして保存してください。これには、copyコマンドを「copy running-config startup-config
」の書式で実行します。
awplus# copy running-config startup-config ↓
Building configuration...
[OK]
また、write fileコマンド、write memoryコマンドでも同じことができます。
awplus# write memory ↓
Building configuration...
[OK]
その他、設定保存の詳細については「運用・管理」/「コンフィグレーション」をご覧ください。
ファイアウォールログについて
■ ファイアウォールのログをとるには、次のコマンド(log(filter))を実行します。
awplus(config)# log buffered level informational facility local5 ↓
■ 記録されたログを見るには、次のコマンド(show log)を実行します。ここでは、ファイアウォールが出力したログメッセージだけを表示させています。
awplus# show log | include Firewall ↓
ルーターB(SSG520)の設定
SSG520の設定に関する詳細は、SSG520のドキュメントをご参照ください。
- あらかじめ192.168.1.0/24のサブネット内のIPアドレスを設定したコンピューターを接続して「http://192.168.1.1」をWebブラウザーで開くと、「Rapid Deployment Wizard」メニュー画面が表示されます。
この設定例ではWizardを使用しませんので、[No, skip the Wizard and go straight to the WebUI management session instead.]を選択して[Next >>]をクリックします。
- LOGIN画面が表示されます。ユーザー名とパスワードを入力して[Login]をクリックします。
初期状態でのユーザー名、パスワードは「netscreen」「netscreen」です。
- Main画面が表示されます。
- まず、LAN インターフェースの設定を行います。
画面左のメニューから[Network]-[Interfaces]を選択し、インターフェースリスト画面が表示されたら、「ethernet0/0」の「Edit」をクリックします。

- インターフェース設定画面が表示されます。
以下のようにLAN側インターフェースの設定を変更し、[OK]をクリックします。
[IP Address/Netmask] 192.168.20.1/24
[Manage IP] 初期設定を削除し、空欄に変更

OKを押すと機器のIPアドレスが変更されるため、設定画面は更新されません。
- コンピューターのIPアドレス設定を「192.168.20.0/24」内のIPアドレスに変更した後、「http://192.168.20.1」をWebブラウザーで開き、再度Main画面を表示させます。
ルーターBのDHCPサーバー機能は無効になっていますので、コンピューターの設定はご自身で変更してください。
- 次に、WANインターフェースの設定を行います。
画面左のメニューから[Network]-[Interface]を選択し、インターフェースリスト画面が表示されたら、「ethernet0/2」の「Edit」をクリックします。

- インターフェース編集画面が表示されます。
以下のようにWAN側インターフェースの設定を変更したら、[OK]をクリックします。
[IP Address/Netmask] 10.10.10.2/32
[Manageable] 無効(チェックなし)
[Manage IP] 初期設定を削除し、空欄に変更

- 画面左のメニューから[Network]-[PPP]-[PPPoE Profile]を選択し、PPPoEリストが表示されたら画面右上の[New]をクリックします。

- PPPoE Profile編集画面が表示されます。
以下のようにPPPoEの設定を変更したら、[OK]をクリックします。
[PPPoE Instance] ISP-B(任意の名前)
[Bound to Interface] ethernet0/2
[Username] user@isp2
[Password] isppasswd2
[Auto-Connect]を選択し、[Auto-Connect右の入力ボックス]に「10」を入力
[PPP lcp Echo Retries] 5
[PPP lcp Echo Timeout] 30

- 次に、IPsecで使用するトンネルインターフェース用のゾーンを作成します。
画面左のメニューから[Network]-[Zones]を選択して、ゾーンリスト画面が表示されたら画面右上の[New]をクリックします。

- ゾーン設定編集画面が表示されます。
以下のようにゾーンの設定を変更したら、[OK]をクリックします。
[Zone Name] VPN-ZONE
[Zone Type] Layer 3

- 次に、IPsecで使用するトンネルインターフェースを作成します。
画面左のメニューから[Network]-[Interfaces]を選択し、インターフェースリスト画面が表示されたら、画面右上のリストから[Tunnel IF]を選択して[New]をクリックします。

- インターフェース設定画面が表示されます。
以下のようにトンネルインターフェースの設定を変更したら、[OK]をクリックします。
[Zone (VR)] VPN-ZONE (trust-vr)
[Unnumbered] を選択し、[Interface]で「ethernet0/2 (trust-vr)」を選択

- 次に、ルーターAと通信するためのIPsec Phase 1 Proposal設定を作成します。
画面左のメニューから[VPNs]-[Autokey Advanced]-[P1 Proposal]を選択して、P1 Proposalリスト画面が表示されたら、画面右上の[New]をクリックします。

- P1 Proposal設定画面が表示されます。
以下のようにPhase1 Proposalの設定を変更したら、[OK]をクリックします。
[Name] ar-p1
[Lifetime] 1 Hours

- 次に、ルーターAと通信するためのIPsec Phase 2 Proposal設定を作成します。
画面左のメニューから[VPNs]-[Autokey Advanced]-[P2 Proposal]を選択して、P2 Proposalリスト画面が表示されたら、画面右上の [New]をクリックします。

- P2 Proposal設定画面が表示されます。
以下のようにPhase2 Proposalの設定を変更したら、[OK]をクリックします。
[Name] ar-p2
[Perfect Forward Secrecy] NO-PFS
[Encapsulation] Encryption
[Encapsulation Algorithm] AES-CBC(128 Bits)
[Authentication Algorithm] SHA-1
[Lifetime] 1 Hours

- 次に、IPsecの接続先の設定を作成します。
画面左のメニューから[VPNs]-[Autokey Advanced]-[Gateway]を選択して、Gatewayリスト画面が表示されたら、画面右上の[New]をクリックします。

- Gateway設定画面が表示されます。
以下のように設定を変更したら、さらに詳細設定を行うために[Advanced]をクリックします。
[Gateway Name] ar-gw
[Remote Gateway]-[Static IP Address] を選択し、[IP Address/Hostname]に「10.0.0.1」を入力

- 詳細設定が表示されます。
以下のように設定を変更したら、画面下部の[Return]をクリックします。
[Preshared Key] secret
[Outgoing Interface] ethernet0/2
[Security Level]で「Custom」を選択し、[Phase 1 Proposal]で「ar-p1」のみを選択、他の3つは「None」
[Mode (Initiator)] Main (ID Protection)
ルーターAとのIPsec通信を監視し通信障害を検知したい場合は、以下の設定を追加で変更してください。
[Peer Status Detection]で「DPD」を選択
[Interval] 20
[Always Send]を選択

- 手順20.の画面に戻るので、[OK]をクリックします。

- 次に、IPsecトンネルの設定を行います。
画面左のメニューから[VPNs]-[Autokey IKE]を選択して以下の画面が表示されたら、画面右上の [New]をクリックします。

- VPN設定編集画面が表示されます。
以下のように設定を変更したら、さらに詳細設定を行うために[Advanced]をクリックします。
[VPN Name] ar-vpn
[Remote Gateway]-[Predefined] 「ar-gw」を選択

- 詳細設定が表示されます。
以下のように設定を変更したら、画面下部の[Return]をクリックします。
[Security Level]で「Custom」を選択し、[Phase 2 Proposal]で「ar-p2」のみを選択、他の3つは「None」
[Bind-to]-[Tunnel Interface] tunnel.1

- 手順24.の画面に戻るので、[OK]をクリックします。

- IPsecトンネルリスト画面に戻ると、先ほど作成した「ar-vpn」が表示されるので「Proxy ID」をクリックします。

- Proxy ID設定編集画面が表示されます。
以下のように設定を変更したら、[New]をクリックして追加します。
[Local IP/Netmask] 192.168.20.0/24
[Remote IP/Netmask] 192.168.10.0/24
[Service] ANY

- Proxy IDが追加されたら「Cancel」をクリックします。
- 次に、ルーティングについての設定を行います。
画面左のメニューから[Network]-[Routing]-[Destination]を選択して、Routing Entries画面が表示されたら、画面右上の リストから[trust-vr]を選択して[New]をクリックします。

- Routing設定画面が表示されます。
以下のように設定を変更したら、[OK]をクリックします。
[IP Address/Netmask] 192.168.10.0/24
[Next Hop]で「Gateway」を選択し、[Interface]で「tunnel.1」を選択

- 次に、ファイアウォールポリシーの設定を行います。
画面左のメニューから[Policy]-[Policies]を選択して、ポリシーリスト画面を表示します。
まず、LAN→IPsecトンネル方向の設定を行うため、以下のようにFrom/ToのZoneを選択して[New]をクリックします。
[From] Trust
[To] VPN-ZONE

- Policy設定編集画面が表示されるので、[OK]をクリックします。
ここでは「すべて許可」のルールを作成するので、特に設定を変更する必要はありません。

- ポリシーリスト画面が再度表示されるので、引き続きIPsec→LAN方向のファイアウォールポリシーの設定を行います。
以下のようにFrom/ToのZoneを選択して[New]をクリックします。
[From] VPN-ZONE
[To] Trust

- Policy設定編集画面が表示されるので、[OK]をクリックします。
ここでも「すべて許可」のルールを作成するので、特に設定を変更する必要はありません。

- ポリシーリスト画面が再度表示されるので、引き続きIPsec→LAN方向のファイアウォールポリシーの設定を行います。
以下のようにFrom/ToのZoneを選択して[New]をクリックします。
[From] Trust
[To] Untrust

- Policy設定編集画面が表示されるので、[OK]をクリックします。
ここでも「すべて許可」のルールを作成するので、特に設定を変更する必要はありません。

- ポリシーリスト画面が再度表示されます(手順32.~37.で設定したポリシーが再度表示されます)。
なお、設定情報は、これまでの操作を行なった際に自動的に更新されていますので、保存操作は不要です。

ルーターA(本製品)のコンフィグ
!
interface eth1
encapsulation ppp 0
!
interface ppp0
keepalive
ip address 10.0.0.1/32
ppp username user@isp1
ppp password isppasswd1
ip tcp adjust-mss pmtu
!
interface vlan1
ip address 192.168.10.1/24
!
zone private
network lan
ip subnet 192.168.10.0/24
network peer
ip subnet 192.168.20.0/24 interface tunnel0
network tunnel
ip subnet 192.168.100.0/30
!
zone public
network wan
ip subnet 0.0.0.0/0 interface ppp0
host ppp0
ip address 10.0.0.1
!
application esp
protocol 50
!
application isakmp
protocol udp
sport 500
dport 500
!
firewall
rule 10 permit esp from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 20 permit esp from public.wan to public.wan.ppp0
rule 30 permit isakmp from public.wan.ppp0 to public.wan
rule 40 permit isakmp from public.wan to public.wan.ppp0
rule 50 permit any from private to private
rule 60 permit any from private to public
protect
!
nat
rule 10 masq any from private to public
enable
!
crypto isakmp key secret address 10.0.0.2
!
crypto ipsec profile ipsec1
lifetime seconds 3600
transform 1 protocol esp integrity SHA1 encryption AES128
!
crypto isakmp profile isakmp1
version 1 mode main
lifetime 3600
transform 1 integrity SHA1 encryption AES128 group 2
!
crypto isakmp peer address 10.0.0.2 profile isakmp1
!
interface tunnel0
tunnel source 10.0.0.1
tunnel destination 10.0.0.2
tunnel local selector 192.168.10.0/24
tunnel remote selector 192.168.20.0/24
tunnel protection ipsec profile ipsec1
tunnel mode ipsec ipv4
ip address 192.168.100.1/30
ip tcp adjust-mss 1260
mtu 1300
!
ip route 0.0.0.0/0 ppp0
ip route 192.168.20.0/24 tunnel0
ip route 192.168.20.0/24 Null 254
!
end
備考:ルーターA(本製品)のIPアドレスが不定な場合
ルーターA(本製品)のWAN側IPアドレスが不定(動的割り当て)の場合、IPsec VPNの設定をどのように変更すればよいか説明します。
|
ルーターA (本製品) |
ルーターB (SSG520) |
ISPから提供された情報 |
ISP接続用ユーザー名 |
user@isp1 |
user@isp2 |
ISP接続用パスワード |
isppasswd1 |
isppasswd2 |
PPPoEサービス名 |
指定なし |
指定なし |
WAN側IPアドレス |
動的割り当て(IPCP) |
10.0.0.2/32 |
ルーターの基本設定 |
WAN側物理インターフェース |
eth1 |
ethernet0/2 |
WAN側(ppp0)IPアドレス |
接続時にISPから取得 |
10.0.0.2/32 |
LAN側(vlan1)IPアドレス |
192.168.10.1/24 |
192.168.20.1/24 |
VPN接続設定 |
ローカルセレクター |
192.168.10.0/24 |
192.168.20.0/24 |
リモートセレクター |
192.168.20.0/24 |
192.168.10.0/24 |
IKEフェーズ1(ISAKMP)設定 |
IKEバージョン・交換モード |
IKEv1 Aggressiveモード |
アルゴリズム |
AES128 / SHA1 / Group2 |
ローカルID |
client |
始点アドレス |
SA有効期間 |
1時間 |
IKEフェーズ2(IPsec)設定 |
アルゴリズム |
AES128 / SHA1 |
ルーターAのIPアドレスが不定な構成における設定のポイントは、次のとおりです。
- ルーターAのアドレスが不定のため、ルーターBからルーターAに接続することはできません。つねにルーターAから接続を開始することになります。
- ルーターAのアドレスが不定なため、IKEフェーズ1ではAggressiveモードを使い、ルーターAのローカルIDとして文字列(名前)を使用します。
- LAN側端末からインターネットへのアクセスは、ルーターA、BともにVPNを介さず直接ルーティングします。
以下、IPsec VPNに関する変更点だけを示します。
ルーターAの設定変更
■ IKE交換モード(version)をAggressiveモードに変更します。
crypto isakmp profile isakmp1
version 1 mode aggressive
lifetime 3600
transform 1 integrity SHA1 encryption AES128 group 2
■ トンネルインターフェースの始点アドレス(tunnel source)をインターフェース名(ppp0)に変更し、ローカルID(tunnel local name)を指定します。
interface tunnel0
tunnel source ppp0
tunnel local name client
ルーターBの設定変更
■ リモートゲートウェイ(本製品)のIDを設定します。
これには、手順20のGateway設定画面で次のように設定します。
[Gateway Name] ar-gw
[Remote Gateway]-[Dynamic IP Address] を選択し、[Peer ID]に「client」を入力

■ IKE交換モードをAggressiveに変更します。
これには、手順21のGateway詳細設定画面で次のように設定します。
[Preshared Key] secret
[Outgoing Interface] ethernet0/2
[Security Level]で「Custom」を選択し、[Phase 1 Proposal]で「ar-p1」のみを選択、他の3つは「None」
[Mode (Initiator)] Aggressive

(C) 2019 - 2024 アライドテレシスホールディングス株式会社
PN: 613-002735 Rev.AD