データセンターはなぜ必要?行政機関・学校・病院が利用するメリットと課題を解説

行政機関・学校・病院では、 DX 推進やAI活用の拡大に伴い、膨大なデータを安全に管理・運用するための基盤としてデータセンターの必要性が高まっています。
しかし、「データセンターとは何か?」「データセンターはなぜ必要なのか?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、データセンターの基礎知識や必要とされる背景、データセンターを利用する際の注意点についてわかりやすく解説します。

目次

データセンターの基礎知識を解説

昨今では、企業だけでなく行政機関・学校・病院においてもDXが進められており、データやシステムを安全に管理・運用するために、データセンターの需要が拡大しています。
以下では、データセンターの役割やクラウドとの違いについて解説します。

データセンターとは?

データセンターとは、サーバーやネットワーク機器を集中的に設置して、IT機器の管理や運用、データの保存や処理などを安全に行うための専用施設です。
データセンターは単なるIT機器の設置場所ではなく、IT機器やデータを保護するために、以下のような高度な機能が整備されています。

  • 安定した電力供給が可能な電源設備や災害時の予備電源
  • サーバーを冷却するための空調設備
  • 高速なネットワーク回線
  • 火災発生時にIT機器を保護するためのガス系消火設備
  • 24時間体制での監視や厳重な入退出管理

データセンターを利用すると、システム停止やデータ消失などのリスクが低下します。そのため、昨今の行政機関・学校・病院では建物内( オンプレミス 環境)にサーバールームを設置するのではなく、外部のデータセンターを借りてサーバーを設置するケースが増加しています。

データセンターとクラウドの違い

データセンターとクラウドは混同されやすい言葉ですが、それぞれ役割が異なります。
データセンターはIT機器を設置してデータの保存や処理を行う「施設」であるのに対し、クラウドはデータセンター内のサーバーをネットワーク経由で利用する「サービス」です。そのため、両者のサービス内容には以下のような違いがあります。

データセンター:サーバーの置き場所をレンタルする、施設そのものを利用するサービス
クラウド:ネットワーク経由で外部サーバーのストレージや処理能力をレンタルするサービス

従来、機密性の高い情報や基幹システムはデータセンターやオンプレミス環境で管理し、それ以外の業務システムではクラウドを活用するという使い分けが一般的でした。
しかし、近年は行政機関・学校・病院でもクラウドの活用が進んでいます。そのため、データセンターは各組織のシステムを支えるだけでなく、クラウドサービスを支える基盤としての役割も大きくなっています。

データセンターはなぜ必要?需要が高まる3つの背景

データセンターの必要性は、データ活用を進める企業や民間分野だけでなく、DXが進められている行政機関・学校・病院においても急速に高まっています。
なぜ、データセンターは社会全体的に必要とされているのでしょうか。ここでは、公共機関での需要を中心に、その背景について3つに切り分けて解説します。

DX推進によるITシステム活用の急増

昨今では、DXの推進に伴い行政機関・学校・病院でもITやAIの活用が進んでおり、以下のような具体例が挙げられます。

  • 全国の自治体の情報システムを統合して、行政手続きをオンライン化する取り組み
  • GIGAスクール構想 に基づき、PCやタブレットを配備してITや学習データを活用する教育の推進
  • 電子カルテの導入や医療AIによる診察支援など、IT技術を活用した高度な医療の実現

こうした取り組みによって、各機関で多種多様なシステムやアプリケーションが活用されるようになっています。特に、AIの学習やデータ分析には高度な計算処理能力が必要になるため、高性能なサーバーを安定して運用できるデータセンターの需要が高まっているのです。
このデータセンターへの需要は企業においても同様であり、DX推進とAIの普及に伴うシステム稼働量の増加は業種を問わず共通の課題となっています。

ビッグデータの普及

ビッグデータとは、従来のデータ管理システムでは処理が難しい、大量かつ複雑なデータ群のことです。一般的に、ビッグデータは「膨大なデータ量」「生成・更新の速度が速い」「テキスト・音声・動画・ログ情報などの多様なデータ形式」という3つの特徴があります。
従来の技術では人の手で処理しきれなかったビッグデータですが、AIの発展により高度な情報処理が可能になったため、近年では行政機関・学校・病院などでも以下のように活用されています。

  • 行政機関:住民情報や税務データ、交通量などのデータを分析して、都市計画やインフラ整備に活用している。
  • 教育機関:学習履歴やオンライン授業のログデータを分析して、生徒ごとの最適な個別学習支援に活用している。
  • 病院:電子カルテや医用画像データ(CT・MRIなど)を分析し、診断支援AIや疾病予測に活用している。

AIの実用化が進む中で、こうしたビッグデータの活用は今後も拡大する見込みです。そのため、大量のデータを継続的に処理するためのインフラとして、データセンターの必要性が高まっているのです。

データセンターの中では、こうして集まった膨大なデータがサーバー間を行き交うため、その経路となるネットワークインフラにも高い性能が求められます。帯域だけを見ても、通常のオフィス内ネットワークでは幹線で10G程度が一般的ですが、データセンターでは100Gや400Gといった高速ネットワークが敷設されているところもあります。

データセンターのネットワークについてはこちらでもご紹介していますので、合わせてご覧ください。

セキュリティ対策・災害対策

行政機関・学校・病院では、個人情報や医療情報などの機密性の高いデータを多く取り扱っているため、高度なセキュリティ対策が不可欠です。
しかし、近年では ランサムウェア などのサイバー攻撃が増加しており、コストと人手不足の両面から、自治体などが主導で行うセキュリティ対策には限界があります。
こうした背景からも、データを安全に守る環境として、高いセキュリティ性能を備えたデータセンターの必要性が高まっています。なかでも、以下のような対策が講じられている施設が求められています。

  • ファイアウォール による不正アクセスの遮断
  • 通信の暗号化によるネットワークセキュリティの強化
  • 24時間体制の監視や厳重な入退出管理などの物理セキュリティ

また、データセンターは震災に備えて建物自体に耐震・免震構造が採用されており、停電時でもシステムを維持できる無停電電源や非常発電機が設置されています。さらに、災害の影響を受けにくい地域に建設されていることが一般的です。
これにより、災害時に情報システムが停止するリスクが低下し、短期間での業務再開が可能となります。
特に、日本は災害大国であり、緊急時に行政サービスや病院が機能しなければ人命にかかわる問題に直結するため、データセンターの需要がさらに高まっているのです。

ここまででお気づきの方もいらっしゃると思いますが、データセンターの堅牢性はBCP対策にも大きな力を発揮します。
データやシステムのバックアップを遠隔地のデータセンターにも保管しておけば、災害によるデータの喪失やランサムウェア感染への対策になります。「災害に備えて備蓄や建物の耐震補強は行っているけど、ITシステムのBCP対策はまだあまりできていない…」という場合、データセンターの活用も検討しても良いでしょう。

ITシステムのBCP対策について詳しくはこちらをご覧ください。

データセンターを利用する際の3つの注意点

先述の通り、データセンターはDXの推進やビッグデータの活用を支える重要なインフラです。しかし、行政機関・学校・病院がデータセンターを利用する場合には、以下で解説する注意点があります。

利用コストの増加を見据えた検討が必要

データセンターの利用には、初期費用だけでなく長期的な利用コストが発生します。

近年は、AI活用の拡大に伴いサーバーの高性能化が進んでいるほか、サーバーへの負荷や発熱量も増加しています。そのため、データセンターの稼働に必要な電力も増加しており、電力料金の値上げや供給維持のためのコストが利用料金に上乗せされる傾向にあります。
また、データセンターの利用料金は、ラック数や通信量などに応じた従量課金方式が採用されている場合が多く、利用量が増加すると利用コストが大きく変動する可能性があります。

行政機関・学校・病院のように予算が年度単位で厳しく管理されている組織では、想定外の費用増加が大きな負担となるリスクは無視できません。
そのため、データセンターの利用を検討する場合は、将来的なコスト増加の可能性を見据え、長期的な目線で試算を行うことが重要です。

利用者側の運用体制の整備が必要

データセンターを利用する場合でも、全ての運用を事業者側に一任できるわけではありません。行政機関・学校・病院などの利用者側でも、システムの運用やセキュリティ対策を行うための運用体制を整備する必要があります。
しかし、経済産業省の試算によると、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。データセンターの運用には高度なIT人材が求められるため、人材確保が難しい場合が多く、行政機関・学校・病院でもシステムの移行や運用に支障が生じる可能性が指摘されています。
そのため、データセンターの導入前には必要になる人員を明確にし、外部ベンダーの活用なども含めて運用体制の整備を進めておくことが重要です。

システム障害のリスクはなくならない

データセンターは高い安全性を備えた施設ですが、システム障害のリスクがゼロになるわけではありません。データセンターであっても、以下のようなトラブルやシステム障害が発生するリスクがあります。

  • アクセスやデータ処理が集中して、サーバーがダウンするリスク
  • ネットワーク回線に障害が発生すると、サーバーにアクセスできないリスク
  • 操作ミスや確認漏れなどのヒューマンエラーによりシステムが停止するリスク
  • 世界的な需要増でサーバーが高騰しており、故障時のリソース確保が困難になるリスク

そのため、万が一のシステム障害に備えた事業継続計画(BCP)を策定し、また単一のデータセンターに依存するのではなく、複数のデータセンターの活用やバックアップ環境の整備などの対策を講じることが重要です。

まとめ

昨今のDXの推進に伴い、AIの活用やセキュリティ対策、災害対策などの観点から、行政機関・学校・病院でもデータセンターの必要性が高まっています。
一方で、電力料金の値上げや送電網の強化に伴い、データセンターの利用コストが増加する可能性があります。また、IT人材の不足により利用者側が運用体制を整備できない可能性も指摘されています。
そのため、行政機関・学校・病院がデータセンターを利用する場合は、これらの注意点を踏まえて慎重に導入の検討を進めることが重要です。

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S.A.

IT初心者やエンドユーザーに向けて、「難しいことをわかりやすく」をモットーに執筆中。
仕組みの背景や用語の意味など「いまさら聞けない」ことも丁寧に説明するスタイルが信条です。
普段は猫と静かに過ごすのが好きなインドア派。

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