「VPNは危険」「VPNは時代遅れ」――そんな声が増えています。国内でもVPN経由のサイバー攻撃被害が急増し、セキュリティリスクとして注目されていますが、VPN自体が悪いのではなく、問題は「使い方」にあります。VPNのセキュリティが危険と言われる本当の理由を整理し、正しく使えば安全な環境を構築できる方法を具体的に解説します。
そもそもVPNとは?なぜ今「危険」と言われるのか
VPNへの不安が広がる背景には何があるのか。まずはVPNの基本的な仕組みと、危険と言われるようになった理由を整理します。
そもそもVPNとは
VPN(Virtual Private Network:仮想プライベートネットワーク)とは、インターネット上に暗号化されたトンネルを確立する技術です。これにより、遠隔地から社内ネットワークや企業リソースに安全にアクセスできます。
企業向けには、拠点間の常時接続に適したIPsec-VPNと、テレワーク等のリモートアクセス向けのSSL-VPN(TLS-VPN)の2種類が主流となっています。IPsec-VPNはネットワーク層で暗号化・認証を行うため安定した拠点間接続に優れ、SSL-VPNはWebブラウザやクライアントソフトウェア経由でのアクセスを可能にするため場所を問わない柔軟な接続に適しています。
重要なのは、VPNという技術それ自体は危険ではないということです。適切に設定・運用・管理することで、安全な通信環境を確実に構築できます。「VPNは危険」と言われる背景には技術的な欠陥ではなく、パッチ未適用や設定不備といった運用・管理上の課題が主因として存在します。
正しく使えば、VPNは今なお有効なセキュアなリモートアクセス基盤として機能します。
VPNを狙うサイバー攻撃が急増している現実
警察庁サイバー警察局が今年3月に発表した「令和7年における サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」のデータによると、 ランサムウェア の侵入経路としてVPN機器の脆弱性が占める割合は6割以上と近年高い水準で推移しており、令和7年の報告でも高い割合を占めています。
出展 :警察庁「令和7年度におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」<PDF>
2025年に入っても国内の医療機関・製造業・自治体でVPN経由の侵害が相次ぎ、IPA(情報処理推進機構)はVPN機器等に対する「ネットワーク貫通型攻撃」への注意喚起を継続的に発出しています。
出展:VPN機器等に対するORB(Operational Relay Box)化を伴うネットワーク貫通型攻撃のおそれについて<PDF>
国内では業種・規模を問わず、VPN経由の侵害が対岸の火事ではなくなっています。テレワーク普及でVPN利用が拡大した分だけ、攻撃者にとっての標的数も増大しています。攻撃者はVPN機器をスキャンツールで短時間に特定できるため、未パッチのVPN機器はインターネット上に「鍵のかかっていない玄関」として晒されているのと同じ状態です。
こうした現実を踏まえると、VPNが危険と言われる背景には「機器そのものの欠陥」ではなく「対策の遅れ」があることが分かります。
VPN機器の脆弱性公開が止まらない背景
複数の国内外大手VPN製品において、2024〜2025年にかけて認証バイパスやRCE(リモートコード実行)の深刻な脆弱性が相次いで公開されました。認証バイパスとは、正規の認証プロセスを回避して有効なパスワードや証明書なしに管理者権限を奪取できる脆弱性です。
RCEはさらに深刻で、攻撃者がVPN機器上で任意のコマンドを実行し、機器を完全制御できる状態を作り出します。これらの脆弱性が組み合わさると、外部から認証なしに機器を乗っ取り、そのまま社内ネットワーク全体への侵入経路として悪用される極めて危険な状態が生まれます。
特に問題となるのは「パッチが公開されても適用が遅れる」実態です。IPAも、脆弱性対策済みパッチの迅速な適用や不要な外部公開の見直しを繰り返し呼びかけており、パッチ適用の遅れが攻撃者にとって最大の侵入機会となっている点に警鐘を鳴らしています。
【被害シナリオ例1】
国内の医療機関では、VPN機器の未パッチ脆弱性が悪用され、患者情報を含む大量のデータが暗号化・外部に窃取される被害が発生した例が報告されています。診療業務が長期停止する深刻な影響が出るケースもあります。
【被害シナリオ例2】
国内製造業では、VPN経由でランサムウェアが複数拠点に展開され製造ラインが停止した例も報告されています。復旧までに数週間を要し、サプライチェーン全体に影響が及ぶケースもあります。脆弱性が公表されると短時間で大規模な悪用スキャンが始まるとも言われており、公開情報を素早く把握して迅速に対応できる体制の構築が急務です。
VPNの「危険な状態」と「安全な状態」の違いを知る
VPNが危険になるかどうかは、機器そのものではなく運用次第で大きく変わります。ここでは危険な状態と安全な状態の違いを見ていきます。
セキュリティリスクを生む運用の落とし穴
VPNが危険になるのは機器そのものの問題ではなく、運用・設定の問題である場合がほとんどです。よくある危険な状態として、次のようなものが挙げられます。
① デフォルト認証情報(初期パスワード)の放置
② ファームウェア 更新の長期未実施
③ 全社ネットワークへの過剰なアクセス権付与
④ 接続ログの未確認・未保存
⑤ 退職者・異動者のVPNアカウントの未削除
これらは「正しく使えていない」状態であり、適切な管理によって多くのリスクは排除できます。VPNは「使い方が9割」とも言われる技術であり、導入後の継続的な管理体制の有無が安全性を大きく左右します。
「導入したら終わり」ではなく「導入後の運用こそが本番」という認識を組織全体で共有し、定期的な設定レビューとアカウント棚卸しをルーティン業務として組み込むことが、VPN安全運用の第一歩です。
特に見落とされやすいのがスプリットトンネリングの設定で、意図せず社外通信がVPN外を経由するよう設定されていると、マルウェア通信の検知が困難になります。トンネリング設定と通信ログを定期的に確認し、想定外の通信経路が発生していないかを把握する体制が重要です。
安全なVPN環境が満たすべき5つの要件
安全なVPN環境が満たすべき要件は明確です。
① ファームウェアを常に最新の状態に保つ
② MFA (多要素認証)による二重の認証を必須化する
③ アクセス権を業務に必要な範囲のみに絞るRBAC(ロールベースアクセス制御)を実装する
④ 接続者・接続先・接続時間のログを常時記録・監視する
⑤ 不審な接続を即検知・遮断できるアラートを設定する
以上5つの要件を満たしたVPN環境は、現在でも十分に安全なリモートアクセス基盤となります。
問題は「VPN自体の限界」ではなく「運用レベル」にあることがほとんどです。現在の自社VPN運用が5要件を満たしているかチェックリストで確認し、未対応の項目から優先的に改善することが最も効率的なリスク低減の道です。VPNが危険なのではなく、正しく運用することで十分に安全な通信基盤として機能し続けることができます。
運用チェックリストを定期的に見直し、新たな脆弱性や攻撃手法の登場に合わせて対策を継続的にアップデートすることが、VPNセキュリティを長期にわたって維持するための核心です。組織により異なりますが、四半期ごとの見直しは1つの目安といえるでしょう。
VPNを正しく使うための実践的5大対策
ここからは、VPNを安全に運用するための具体的な対策を5つ紹介します。
対策1:ファームウェア更新とパッチ管理の徹底
最も優先度が高い対策がファームウェアの定期更新です。
ベンダー提供の脆弱性情報( JPCERT/CC ・IPA・NVD)を購読・確認し、 CVSS スコア9.0以上の重要パッチは公開後72時間以内の適用を目標とします。
更新作業の変更管理プロセスを整備し、担当者不在時でも作業が滞らない体制を構築することが重要です。機器の保守サポート終了(EoL:End of Life)日程を把握し、EoL機器の早期リプレース計画も合わせて策定することが長期的な安全運用の基盤となります。自動パッチ適用が可能な環境ではこれを活用し、人的ミスによる適用漏れを防ぐ仕組みを整えることも有効です。
自社での脆弱性情報の収集・管理に不安がある場合は、最新の脆弱性情報を通知してくれる「脆弱性管理・通知サービス」のような外部サービスを活用するのも一つの方法です。
対策2:多要素認証(MFA)の全社導入
VPNへの接続にはパスワード認証だけでなく、ワンタイムパスワード(OTP)やスマートフォン認証アプリを組み合わせたMFAを必須化します。
RADIUSサーバーにMFAソリューション(Microsoft Entra ID・Duo等)を連携させることで、既存VPN構成を大きく変えずに導入可能です。まず管理者・特権アカウントから適用し、段階的に全社展開するアプローチが現実的です。
認証の多層化により、仮にパスワードが漏洩した場合でも不正ログインを防ぐことができ、アカウント乗っ取りによる被害リスクを大幅に低減できます。MFAの適用対象を定期的に棚卸しし、新規追加されたアカウントへの適用漏れがないかを確認する運用体制も整えておきましょう。
対策3:アクセス権限の最小化(最小権限原則・RBAC)
「VPN認証を通過すれば社内ネットワーク全域にアクセスできる」従来設計は、侵害時の横移動(ラテラルムーブメント)リスクを最大化します。
RBAC(ロールベースアクセス制御)を実装し、業務システムやデータセグメントごとに「誰が・何に・なぜアクセスできるか」を文書化・定期見直しします。最小権限原則に基づき、各ユーザーには業務遂行に必要な最低限のリソースのみへのアクセスを付与します。異動・退職時のアカウント棚卸しを自動化する仕組みも合わせて整備し、不要な権限が残存しないよう管理します。権限マトリクスをIT部門と業務部門が定期的に共同レビューし、ビジネス変化に合わせた権限設計の見直しを継続的に実施することが重要です。
ネットワーク機器のアクセス制御機能(スマートACLなど)を備えた管理ソリューション「AMF PLUS」を活用すれば、こうしたアクセス権限の一元管理をよりシンプルに実現できます。
対策4:接続ログの常時収集と異常検知体制の構築
接続ログを常時収集し SIEM (セキュリティ情報・イベント管理)等で分析する体制を構築します。
監視すべき異常パターンとして、深夜・早朝の大量データダウンロード、普段と異なる国・IPアドレスからの接続、短時間での大量ログイン失敗(ブルートフォース攻撃の疑い)などが挙げられます。これらを自動検知・即時アラートする仕組みが実質的な防御力を生み出します。ログの保存期間はインシデント対応・フォレンジック調査を考慮して最低1年以上とし、改ざん防止措置を施した形式で記録します。
自社での24時間監視体制の構築が難しい場合は、ログ監視を専門とする「マネージドセキュリティサービス」に委託する方法も有効です。少人数のIT部門でも24時間365日の監視体制を実現できます。
対策5:デバイス認証(クライアント証明書)の導入
パスワードやOTPによる「人の認証」に加え、接続を許可するデバイス自体を認証する「デバイス認証」の実装が5つ目の重要な対策です。
クライアント証明書をVPN接続端末に配布し、証明書を持たないデバイスからの接続を自動的に拒否する設定により、正規端末以外からの接続を根本から防ぎます。MDM(モバイルデバイス管理)ソリューションと連携することで、管理外端末・BYOD(個人所有デバイス)からのVPN接続をポリシーで一元制御できます。
証明書の有効期限管理・失効処理(CRL・OCSP)の運用体制を整備し、退職者端末や紛失デバイスが即座に接続不能になるよう設定します。デバイス認証はMFAと組み合わせることで「正規ユーザー×正規デバイス」のダブル確認が実現し、不正アクセスのリスクをさらに大幅に低減できます。
VPNからゼロトラスト/SASEへの段階的移行
従来型VPNには構造的な限界もあり、将来を見据えた移行の検討も重要です。ここでは、ゼロトラスト・ SASE への段階的な移行の考え方を解説します。
VPN脱却・ZTNA移行が現実解となりつつある理由
従来型VPNは「内部ネットワーク全体を信頼する」設計のため、一度侵害されると横移動(ラテラルムーブメント)によって被害が拡大するリスクがあります。
こうした境界防御の限界を踏まえ、近年は「すべての通信を信頼せず、都度検証する」ことを前提とするゼロトラストセキュリティの考え方が、新たな設計思想として普及しつつあります。
CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)とFBIは2024年にSASE(Secure Access Service Edge)やSSE(Security Service Edge)への移行を推奨するガイダンスを公表しました。
国内でも大企業を中心にVPN依存から段階的に脱却する動きが加速しており、現在はZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)やSASEへの移行が主流になりつつあります。VPNの「完全廃止」ではなく「リスクに応じた使い分けと段階的移行」が現実解であり、企業規模や既存インフラに合わせた移行戦略の策定が急務です。
ZTNAやSASEの導入コストと従来VPNの運用コスト・リスクを総合的に比較評価したうえで、自社に最適な移行ロードマップを策定することが重要です。
VPNとZTNA/SASEの現実的な3ステップ移行設計
即座にVPNをゼロトラストに置き換えることは現実的ではありません。
段階的移行として、次の3ステップが実務的です。
① リスクの高いアプリケーション(人事・財務・機密情報システム)から優先してZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)に移行
② 既存VPNはサイト間接続・低リスク用途に残存させコスト効率を維持
③ SASE基盤でVPN・ZTNA・SWG(Secure Web Gateway)を一元管理
移行期間中は、VPNとZTNA双方のアクセスログを一元管理し、全体の可視性を確保することが攻撃の早期検知につながります。移行の進捗状況を定期的に経営層に報告し、予算・人員の継続的な確保を担保する体制も重要です。
段階的移行を成功させるには、移行フェーズごとに明確なマイルストーンと成功基準を設定し、実測値でセキュリティ向上効果を確認しながら進めることが推奨されます。
ただし、前提としてゼロトラストセキュリティは何か一つのツールを導入すれば実現するものではないということ、加えてネットワーク全体を見て複数の対策を組み合わせるのが重要であることを踏まえる必要があります。
なお、アライドテレシスが提供するAllied SecureWANをはじめ、同社が取り扱うパートナーのセキュリティソリューションを組み合わせることで、VPNからの段階的移行をネットワーク基盤から包括的にサポートします。
ネットワーク機器設計で実現するVPN多層防御
VPN単体の対策に加え、周辺のネットワーク機器を含めた設計によって、多層的な防御を実現することも可能です。
DMZ配置とVLAN分離によるネットワーク設計
VPNゲートウェイを DMZ (非武装地帯)に配置することで、外部からの接続が直接内部ネットワークに到達しない設計を実現します。認証に成功した接続も、VLANによるネットワーク分離を行い、営業系・管理系・開発系など業務用途ごとにセグメンテーションされます。万一VPN経由の侵害が発生した場合でも、被害範囲がセグメント単位に限定され、横移動による全社影響を防げます。
ACL(アクセスコントロールリスト)でVPN経由の通信を厳格にフィルタリングし、「認証後も最小限の通信のみ許可する」という思想をネットワーク基盤レベルで実装することで、多層防御の完成度が格段に高まります。セグメンテーションの粒度は業務重要度とリスク評価に基づいて設計し、定期的な見直しを実施することが持続的なセキュリティ確保につながります。
ファイアウォール・スイッチとの連携でVPNを強化
VPN機器単体のセキュリティ設定に頼らず、前段の ファイアウォール や後段のレイヤー2/3スイッチとの連携設計が実際の防御力を決定します。ファイアウォールでの DPI (ディープパケットインスペクション)による送受信トラフィックの精密な検査、レイヤー2スイッチでの IEEE 802.1X 認証によるデバイス単位の接続制御を組み合わせることで、VPNを中心とした多層防御アーキテクチャが完成します。
アライドテレシスはネットワーク機器専業として、スイッチ・ルーター・ファイアウォールの連携設計からVPNセキュリティの最適化まで、ネットワーク基盤からのセキュリティ強化を一貫してサポートします。
VPN機器だけでなく周辺ネットワーク機器を含めたトータルなセキュリティ設計こそが、真の多層防御を実現する鍵です。また、ネットワーク機器の管理インターフェースへのアクセスをVPN経由に限定し、管理者アカウントに対してもMFAとPAM(特権アクセス管理)を適用することで、機器の設定変更経路を厳格に管理することも対策の決め手となります。
まとめ
VPNは正しく使えば今なお有効なセキュアリモートアクセス基盤です。
危険とされる背景には、機器そのものの欠陥よりも運用・管理の課題があります。ファームウェア更新やMFA、アクセス権限の最小化、ログ監視、デバイス認証といった実践的な対策を講じ、将来的にはゼロトラストやSASEへの段階的な移行も視野に入れながら、自社に合った安全なVPN運用体制を構築していきましょう。
- 本記事の内容は公開日時点の情報です。
- 記載されている商品またはサービスの名称等はアライドテレシスホールディングス株式会社、アライドテレシス株式会社およびグループ各社、ならびに第三者や各社の商標または登録商標です。
\注目情報をメールマガジンでいち早くお届け/
あなたの業種に合わせた旬な情報が満載!
- 旬な話題に対応したイベント・セミナー開催のご案内
- アライドテレシスのサービスや製品に関する最新情報や、事例もご紹介!
あなたの業種に合わせた旬な情報をお届け!
旬な話題を取り上げたイベント・セミナー情報や、アライドテレシスの最新事例・サービス・製品情報をご案内します!






