[index] CentreCOM ARX640S コマンドリファレンス 5.1.5

QoS / 一般設定


おもな構成要素
インターフェース
ポリシーマップ
トラフィッククラス
キュー制御方式
インターフェース送信帯域の制限
注意事項
基本設定
クラスベースキュー(CBQ)による帯域制御
絶対優先キュー(PQ)による優先制御
他機能との関係(パケット処理順序)


QoS(Quality of Service)機能は、レイヤー3インターフェース(IPv4/IPv6インターフェース)で送受信するIPv4/IPv6パケットをトラフィッククラスに分類し、それぞれに異なるサービスレベル(帯域または優先度)を割り当てたり、パケットにマーキングをしたりする機能です。
Note - QoSの適用対象は、レイヤー3インターフェース(IPv4/IPv6インターフェース)で送受信するIPv4/IPv6パケットのみです。ブリッジ機能によってブリッジングされるパケットなどは適用対象外ですのでご注意ください。

おもな構成要素

QoS機能の基本的な構成要素について説明します。

インターフェース

本製品では、次のレイヤー3インターフェース(IPv4/IPv6インターフェース)に対してQoSの設定が可能です。
受信インターフェースではパケットの分類に基づく内部フラグの設定が、送信インターフェースではパケットの分類に基づくマーキングと帯域制御/優先制御が可能です。また、送信インターフェースでは、インターフェース全体としての送信帯域を制限することも可能です。
通常、QoSの設定は送信インターフェースに対して行います。

ポリシーマップ

各インターフェースにおけるQoS処理の内容(インターフェース帯域の設定を除く)は、ポリシーマップと呼ばれる設定要素で定義します。
ポリシーマップで定義するおもな内容は次のとおりです。


トラフィッククラス

インターフェースを通過するパケットは、ポリシーマップで指定された条件にしたがい最大10個のトラフィッククラスに分類されます。10個のトラフィッククラスの内訳はつぎのとおりです。


送信インターフェースでは、各トラフィッククラスに個別の送信キューが割り当てられ、クラスに応じた帯域制御や優先制御が行われます。また、ユーザートラフィッククラスに対しては、IPパケットのTOSフィールド、IPv6パケットのトラフィッククラスフィールドを利用したマーキングも可能です。

キュー制御方式

本製品のQoS機能では、送信インターフェースごとに次の2つのキュー制御方式のどちらかを使用できます。
一般的に、帯域制御を行うときはCBQを、優先制御を行うときはPQを選択します。


どちらのキュー制御方式を使うかは、ポリシーマップで指定します。

インターフェース送信帯域の制限

本製品のQoS機能では、CBQによるトラフィッククラス単位の帯域制御とは別に、インターフェース全体の送信帯域を制限することもできます。
インターフェース送信帯域の設定はポリシーマップとは独立しているため、CBQ、PQのどちらのキュー制御方式を使う場合でも利用できます。

注意事項

QoSの設定に当たっては、インターフェースの帯域について下記の注意事項があります。

基本設定

QoS機能の基本的な使用方法として、CBQによる帯域制御とPQによる優先制御の例を示します。
なお、以下の各例では、IPルーティングの設定までは完了しているものとします。

クラスベースキュー(CBQ)による帯域制御

WAN側Ethernetインターフェース(gigabitEthernet 0)において、CBQで送信帯域を制御する例です。以下の制御を行います。

  1. QoS機能を有効にします。

    *Router(config)# sqos enable
    


  2. 送信パケットをトラフィッククラスに分類するためのIPアクセスリストを作成します。これには、access-list ip standard(list)コマンドやaccess-list ip extended(list)コマンドとそのサブコマンドを使います。

    *Router(config)# access-list ip extended http-out
    *Router(config-acl-ip)# permit tcp any any eq 80
    *Router(config-acl-ip)# exit
    
    *Router(config)# access-list ip extended tcp-nohttp-out
    *Router(config-acl-ip)# permit tcp any any ne 80
    *Router(config-acl-ip)# exit
    
    *Router(config)# access-list ip extended udp-out
    *Router(config-acl-ip)# permit udp any any
    *Router(config-acl-ip)# exit
    


  3. 前の手順で用意したアクセスリストを条件とするクラスマップを作成します。これには、class-mapコマンドとサブコマンドのmatch ip access-groupコマンドを使います。

    *Router(config)# class-map http-out
    *Router(config-cmap)# match ip access-group http-out
    *Router(config-cmap)# exit
    
    *Router(config)# class-map tcp-nohttp-out
    *Router(config-cmap)# match ip access-group tcp-nohttp-out
    *Router(config-cmap)# exit
    
    *Router(config)# class-map udp-out
    *Router(config-cmap)# match ip access-group udp-out
    *Router(config-cmap)# exit
    


  4. ポリシーマップを作成します。これには、policy-mapコマンドを使います。

    *Router(config)# policy-map ge0-cbq-out
    


  5. トラフィッククラスごとの帯域配分を指定します。これには、classコマンドとbandwidth-percentコマンドを使います。
    キュー制御方式はqueue-typeコマンドで指定しますが、初期状態でCBQに設定されているためここでは指定不要です。
    また、システムトラフィッククラスとデフォルトトラフィッククラスの帯域配分は、system-bandwidthコマンド、default-bandwidthコマンドで設定しますが、どちらも初期状態で10%に設定されているため、ここでは設定不要です。

    *Router(config-pmap)# class http-out
    *Router(config-pmap-c)# bandwidth-percent 40
    *Router(config-pmap-c)# exit
    
    *Router(config-pmap)# class tcp-nohttp-out
    *Router(config-pmap-c)# bandwidth-percent 20
    *Router(config-pmap-c)# exit
    
    *Router(config-pmap)# class wan0-udp-out
    *Router(config-pmap-c)# bandwidth-percent 20
    *Router(config-pmap-c)# exit
    *Router(config-pmap)# exit
    


  6. WAN側Ethernetインターフェース(gigabitEthernet 0)に送信用ポリシーマップを適用します。これには、service-policy outputコマンドを使います。

    *Router(config)# interface gigabitEthernet 0
    *Router(config-if)# service-policy output ge0-cbq-out
    


  7. WAN側Ethernetインターフェース(gigabitEthernet 0)の送信帯域を90Mbpsに制限します。これには、sqos output-bandwidthコマンドを使います。

    *Router(config-if)# sqos output-bandwidth 90 mega-bps
    


設定は以上です。

絶対優先キュー(PQ)による優先制御

トンネルインターフェース(tunnel 0)において、PQで優先制御を行う例です。
ここでは、送信パケットをVoIPと(対向拠点の)サーバー宛て通信の2つに分類し、これに暗黙のシステムトラフィッククラスとデフォルトトラフィッククラスを加えた4つのトラフィッククラスを、システム → VoIP → サーバー宛て → デフォルト(その他)の順に上位優先で送信します。

優先順位
トラフィッククラス
PQ優先度
1 システム −(つねに最高値)
2 VoIP 7
3 サーバー宛て 6
4 デフォルト −(つねに最低値)


  1. QoS機能を有効にします。

    *Router(config)# sqos enable
    


  2. 送信パケットをトラフィッククラスに分類するためのIPアクセスリストを作成します。これには、access-list ip standard(list)コマンドやaccess-list ip extended(list)コマンドとそのサブコマンドを使います。

    *Router(config)# access-list ip extended voip-out
    *Router(config-acl-ip)# permit udp any eq 5060 any
    *Router(config-acl-ip)# permit udp any range 5090 5091 any
    *Router(config-acl-ip)# exit
    
    *Router(config)# access-list ip extended to-server-out
    *Router(config-acl-ip)# permit ip any 192.168.208.5
    *Router(config-acl-ip)# permit ip any 192.168.210.8
    *Router(config-acl-ip)# exit
    

    Note - VoIPパケットの指定は一例です。

  3. 前の手順で用意したアクセスリストを条件とするクラスマップを作成します。これには、class-mapコマンドとサブコマンドのmatch ip access-groupコマンドを使います。

    *Router(config)# class-map voip-out
    *Router(config-cmap)# match ip access-group voip-out
    *Router(config-cmap)# exit
    
    *Router(config)# class-map to-server-out
    *Router(config-cmap)# match ip access-group to-server-out
    *Router(config-cmap)# exit
    


  4. ポリシーマップを作成します。これには、policy-mapコマンドを使います。

    *Router(config)# policy-map tun0-pq-out
    


  5. キュー制御方式として絶対優先キュー(PQ)を指定します。これには、queue-typeコマンドを使います。

    *Router(config-pmap)# queue-type pq
    


  6. トラフィッククラスごとの優先度を指定します。これには、classコマンドとpq-priorityコマンドを使います。
    システムトラフィッククラスとデフォルトトラフィッククラスの優先度は、それぞれ最高と最低で固定されているため指定不要です。

    *Router(config-pmap)# class voip-out
    *Router(config-pmap-c)# pq-priority 7
    *Router(config-pmap-c)# exit
    
    *Router(config-pmap)# class to-server-out
    *Router(config-pmap-c)# pq-priority 6
    *Router(config-pmap-c)# exit
    *Router(config-pmap)# exit
    


  7. トンネルインターフェース(tunnel 0)に送信用ポリシーマップを適用します。これには、service-policy outputコマンドを使います。

    *Router(config)# interface tunnel 0
    *Router(config-if)# service-policy output tun0-pq-out
    


設定は以上です。

他機能との関係(パケット処理順序)

パケット転送処理(ブリッジング、ルーティング)や各種フィルタリング機能を含む、パケット処理順序の詳細については、「付録」の「パケット処理フロー」をご参照ください。
Note - QoSの適用対象は、レイヤー3インターフェース(IPv4/IPv6インターフェース)で送受信するIPv4/IPv6パケットのみです。ブリッジ機能によってブリッジングされるパケットなどは適用対象外ですのでご注意ください。


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PN: 613-001491 Rev.E