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IP/経路制御(OSPF)


  - プロトコル概要
   - AS(Autonomous System)
   - エリア
   - 仮想リンク(Virtual Link)
   - OSPFルーター
   - OSPFメッセージ
   - LSA(Link State Advertisement)
  - 設定手順
  - 基本設定
  - ABR(エリア境界ルーター)
  - ASBR(AS境界ルーター)
   - BGP-4経路の取り込み
  - 仮想リンク


ネットワークの規模が大きくなると、手動で経路情報を登録するスタティックルーティングでは管理の手間が大きくなり、設定ミスなどによる通信障害が起きやすくなります。ダイナミックルーティングは、ルーター間で経路情報を自動的に交換しあう「ダイナミックルーティング(経路制御)プロトコル」を用いて、経路情報の管理を自動化する方法です。本製品では以下のルーティングプロトコルを使用できます。


ここでは、OSPFの設定手順について解説します。RIPの設定については「経路制御(RIP)」を、スタティックルーティングの設定方法については「IP」/「経路制御」をご覧ください。

 

プロトコル概要

OSPF(Open Shortest Path First)は中規模以上のネットワークでの使用を想定して開発された経路制御プロトコルです。現在のバージョンであるOSPF Version 2はRFC2328で規定されています。

RIPがネットワーク全体をフラットなものとして扱うのに対し、OSPFではネットワークをエリアと呼ばれる小さな単位に分割して、経路情報をエリアごとに管理する点が特徴的です。また、使用するアルゴリズムも異なり、OSPFではリンクステートアルゴリズム、RIPはディスタンスベクターアルゴリズムを使用しています。

OSPFが採用するリンクステートアルゴリズムでは、同一エリア内のすべてのルーターが同じトポロジーデータベースを保持しています。各ルーターはこのデータベースをもとに経路表を作成し、これに基づいてエリア内の経路選択を行います。エリア内部の詳細なトポロジーは他のエリアからは見えないようになっており、経路情報の削減に貢献しています。

 

AS(Autonomous System)

経路制御プロトコルには、組織内で使用するIGP(Interior Gateway Protocol)と組織間で使用するEGP(Exterior Gateway Protocol)がありますが、OSPFはRIPと同様IGPに分類されます。

ここでいう「組織」は、より正確には「AS(Autonomous System = 自律システム)」と呼ぶべきものです。ASとは、同じルーティングプロトコルを使用して経路情報を交換しあっているルーターの集まり、すなわち、OSPFならOSPF、RIPならRIPを使用しているネットワークの範囲を示します。ASはルーティングドメインなどと呼ばれることもあります。

 

エリア

OSPFでは、ネットワークを複数のエリアに分割して、それぞれを経路情報の管理範囲とします。各エリアは、エリアIDと呼ばれる32ビットの数値で識別されます。通常エリアIDは「1.1.1.1」のようにIPアドレスと同じ形式で書き表します。エリアIDはADD OSPF AREAコマンドでエリアを作成するときに指定します。エリアID 0.0.0.0は、後述するバックボーンエリアのために予約されています。

Note - エリアIDはIPアドレスと同じ形式で表しますが、IPアドレスと直接の関係はありません。任意の数値を使うことができます。管理上わかりやすい番号を付けるとよいでしょう。

各エリアで分散管理されている経路情報を束ねるのは、バックボーンと呼ばれる特殊なエリアです。OSPFネットワークを構成する各エリアは必ずバックボーンエリア(エリアID 0.0.0.0)に接続されており、エリアごとに管理されている経路情報は、バックボーンエリア経由で他のエリアに伝えられます。

このとき重要な役割を果たすのが、各エリアとバックボーンの境界に位置するエリア境界ルーター(ABR)です。ABRはエリア内の情報を要約した上で、これを他エリアのABRにバックボーン経由で伝える役割を持ちます。また、バックボーン経由で入手した他エリアの経路情報をエリア内部に通知する役割も果たします。

始点・終点ともに同一エリア内のトラフィックは、エリア内の情報だけに基づいて配送されます(エリア内ルーティング)。一方、エリアをまたがるトラフィックは、エリア内→エリア間→エリア内の2レベル3段階で配送されます(エリア間ルーティング)。

OSPFエリアには次のような種類があります。

表 1:OSPFエリアの種類
名称
役割
バックボーンエリア(0.0.0.0) OSPFネットワークの根幹をなす重要なエリア。どのOSPFネットワークにも必要です。バックボーン以外のエリアは何らかの形でバックボーンエリアと接続されていなくてはなりません。これは、各エリアの経路情報が、バックボーンを通じて交換されるためです。エリア情報の交換は、バックボーンと他のエリアの境界に位置するABR(エリア境界ルーター)が行います。
スタブエリア 1つのエリアとしか隣接しておらず、出口が1つしかないエリアをスタブエリアと呼びます。スタブエリア内には、AS外部(OSPFネットワークの範囲外)の詳細な経路情報が通知されず、デフォルトルートだけが通知されます。これにより、エリア内のルーターにかかる計算負荷を下げることができます。本製品では、バックボーン以外のエリアを作成するとデフォルトでスタブエリアとなります。スタブエリア内にはASBR(AS境界ルーター)を置くことができず、また、後述する仮想リンクの通過エリアとなることもできません。
準スタブエリア(NSSA) スタブエリアとほぼ同じですが、ASBR(AS境界ルーター)を置くことができ、AS外部の経路情報をタイプ7のLSAとして取り込むことができます。準スタブエリアのABR(エリア境界ルーター)では、タイプ7のLSAがタイプ5のLSA(通常のAS外部LSA)に変換されます。
ノーマルエリア バックボーンエリアでもスタブエリアでもない通常のエリアです。ノーマルエリアを作成するときは、ADD OSPF AREAコマンドのSTUBAREAパラメーターにNOを指定します。仮想リンクを通過させたいエリアは、ノーマルエリアでなくてはなりません。


 

仮想リンク(Virtual Link)

OSPFネットワークでは、バックボーン以外のすべてのエリアが、バックボーンエリアと接続されている必要があります。物理的にバックボーンエリアと隣接することが不可能なエリアでは、仮想リンクを使って論理的にバックボーンとの接続を確立します。これは、バックボーンエリアのABRと孤立したエリアのABRが、ノーマルエリアをはさんで仮想的な接続を張ることによって実現されます。これにより、孤立エリアは、ノーマルエリアと直接接続され、バックボーンエリアとは間接的に接続されていることになります。詳細は、「仮想リンクの設定例」をご覧ください。

 

OSPFルーター

OSPFルーターは、それぞれルーターIDという識別子を持ちます。ルーターIDはエリアIDと同様の32ビット値で、通常はエリアIDと同じようにIPアドレスと同じ形式で書き表します(例:2.2.2.2)。

ルーターIDは、SET OSPFコマンドのROUTERIDパラメーターで設定することができます。特に設定しなかった場合はルーターのインターフェースに割り当てられたIPアドレスのうち、もっとも大きなものがルーターIDとして使用されます。

Note - ルーターIDはIPアドレスと同じ形式で表しますが、IPアドレスと直接の関係はありません。明示的に設定しなかった場合はインターフェースのアドレスのうちもっとも大きなものが使われますが、これも一意の識別子を得るための方法として使っているだけであり、実際には任意の数値を使うことができます。管理上わかりやすい番号を付けるとよいでしょう。

OSPFルーターは、役割によって以下のとおり分類できます。

表 2:OSPFルーターの種類
名称
略称
役割
内部ルーター(Internal Router) IR 1つのエリアにだけ所属しているルーター(すべてのインターフェースが同一エリア内にあるルーター)
エリア境界ルーター(Area Border Router) ABR 複数のエリア(バックボーンとそれ以外)に所属しているルーター。エリア内の経路情報を要約し、バックボーンエリア経由で他のエリアに伝える役目を負う。また、バックボーンエリア経由で入手した他エリアの経路情報を自エリア内部に通知する役割もある。
バックボーンルーター(Backbone Router) - バックボーンエリアに所属しているルーター。ABRは必ずバックボーンルーターになるが、バックボーンルーターがつねにABRとは限らない。すべてのインターフェースがバックボーンエリア内にあるIRもバックボーンルーターである。
AS境界ルーター(Autonomous System Boundary Router) ASBR OSPFネットワークと他のルーティングプロトコルを使用しているネットワークとの境界に位置するルーター。外部ネットワークの経路情報をOSPFネットワーク内に通知する


 

OSPFメッセージ

OSPFはIPを直接使用します。プロトコル番号は89(OSPFIGP)です。メッセージのやりとりには、ユニキャストアドレスに加え、以下のマルチキャストグループアドレスが使用されます。

OSPFメッセージには以下の種類があります。

表 3
タイプ
メッセージ名
説明
1 Hello(Hello) 隣接ルーターの探索、代表ルーター(DR)の決定などに使用する
2 Database Description(データベース記述) 隣接関係の形成時にトポロジーデータベースの内容を要約して通知する
3 Link State Request(リンク状態要求) 隣接関係形成の最終段階において追加のLSA(トポロジー情報)を要求する
4 Link State Update(リンク状態更新) LSA(トポロジー情報)を通知する
5 Link State Ack(リンク状態確認) リンク状態更新パケットに対する確認応答


 

LSA(Link State Advertisement)

OSPFのトポロジーデータベースを構成する基本レコードをLSAと呼びます。各ルーターはLSAを交換しあうことによって、トポロジーデータベースを構築します。LSAには以下の種類があります。

表 4:LSAの種類
LSAタイプ
名称
説明
1 ルーターLSA エリア内にあるルーターインターフェースの情報。すべてのルーターが生成する。通知範囲はエリア内に限定される。
2 ネットワークLSA 複数のルーターが接続されているマルチアクセス型ネットワークの情報。接続されているルーターの一覧を示す。該当ネットワークの代表ルーター(DR)が生成する。通知範囲はエリア内に限定される。
3 ネットワークサマリーLSA エリア外(ただしAS内)ネットワークへの経路情報(ネクストホップ、メトリックなど)。エリア境界ルーター(ABR)が生成する。ABRが接続されているすべてのエリアに通知される。
4 ASBRサマリーLSA エリア外にあるAS境界ルーター(ASBR)への経路情報。ABRが生成する。ABRが接続されているすべてのエリアに通知される。
5 AS外部LSA AS外部への経路情報。通常エリアのASBRが生成する。AS内全体に通知される。
7 AS外部LSA AS外部への経路情報。準スタブエリア(NSSA)のASBRが生成する。NSSA内にのみ通知される。NSSAのエリア境界ルーター(ABR)では、タイプ7のLSAがタイプ5のLSAに変換される。


 

設定手順

OSPFネットワークを構築するための基本的な手順について説明します。具体的な設定例については、次項「基本設定」をご覧ください。

  1. OSPFのルーターIDを設定します。


  2. エリアを作成します。

    OSPFルーターは必ずエリアに属さなければなりません。また、OSPFネットワークには、必ずバックボーンエリア(0.0.0.0)というエリアが存在しなければなりません。最初にADD OSPF AREAコマンドを実行して、バックボーンエリアを作成します。


    Note - 複数のエリアで構成されるネットワークの場合、それぞれのルーターには所属するエリアの設定だけを行います。

  3. エリアに所属するネットワークの範囲を設定します。

    手順2で作成したエリアの範囲をIPアドレスとネットマスクによって定義します。たとえば、バックボーンエリアの範囲として172.16.0.0〜172.16.255.255を指定するには、ADD OSPF RANGEコマンドを使って以下のように定義します。


    Note - 通常はそれぞれのルーターに対し、直接接続されているネットワークの範囲だけを指定します。すなわち、次の手順で設定するOSPFインターフェースのIPアドレスと同一のネットワークアドレスおよびネットマスクを指定します。なお、各エリアの範囲があらかじめわかっている場合は、直接接続されているかどうかにかかわらず、エリア内のすべてのルーターに同じ範囲設定をすることもできます。

    Note - エリア境界ルーター(ABR)では、ネットワーク範囲の設定にしたがって経路情報の要約(ネットワークサマリーLSAの生成)を行います。詳細は「ABRの設定例」をご覧ください。

  4. OSPFインターフェースの設定をします。

    OSPFメッセージの送受信を行うIPインターフェース(VLAN)をエリアに割り当てます。これにはADD OSPF INTERFACEコマンドを使います。ここで指定するインターフェースのアドレスは、手順3で設定したネットワーク範囲内のアドレスでなくてはなりません。この例では、vlan-redのIPアドレスは、172.16.0.1〜172.16.255.254の範囲内である必要があります。


  5. OSPFを有効にします。


 

基本設定

バックボーンエリアだけで構成されたシンプルなOSPFネットワークの設定例を示します。ここでは、次のようなネットワーク構成を例に解説します。


スイッチAの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを設定します。


  4. OSPFのルーターIDを設定します。


  5. バックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。


  6. バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。ここでは、直接接続されているネットワークの範囲を指定します。


  7. バックボーンエリアに所属するIPインターフェースを指定します。


  8. OSPFを有効にします。


スイッチBの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを設定します。


  4. OSPFのルーターIDを設定します。


  5. バックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。


  6. バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。ここでは、直接接続されているネットワークの範囲を指定します。


  7. バックボーンエリアに所属するIPインターフェースを指定します。


  8. OSPFを有効にします。


設定は以上です。

■ 経路表を確認するには、SHOW IP ROUTEコマンドを使います。

■ OSPFインターフェースの状態はSHOW OSPF INTERFACEコマンドで確認します。


■ 隣接ルーターの情報を確認するには、SHOW OSPF NEIGHBOURコマンドを使います。


■ OSPFエリアの情報を確認するには、SHOW OSPF AREAコマンドを使います。


■ OSPFエリアの範囲を確認するには、SHOW OSPF RANGEコマンドを使います。


■ トポロジーデータベースの情報を確認するにはSHOW OSPF LSAコマンドを使います。


■ OSPFの設定情報を確認するにはSHOW OSPFコマンドを使います。


 

ABR(エリア境界ルーター)

バックボーン(0.0.0.0)とエリア1.1.1.1、2.2.2.2、3.3.3.3の4エリアで構成されるOSPFネットワークの設定例を示します。エリア間に位置するABRは、各エリア内の経路情報を要約して他のエリアに伝える役割を果たします。ここでは、スイッチA、B、CをABRとする次のようなネットワーク構成を例に解説します。

ここでは、ABRでのエリア範囲設定(ADD OSPF RANGEコマンド)によって、各エリア内の経路情報を集約してバックボーンに広報するよう設定します。


各エリアの範囲は次の通りです。

表 5
エリア
範囲
0.0.0.0(バックボーン) 192.168.10.0/24(192.168.10.0 〜 192.168.10.255)
1.1.1.1(スタブエリア) 172.16.0.0/18(172.16.0.0 〜 172.16.63.255)
2.2.2.2(スタブエリア) 172.16.64.0/18(172.16.64.0 〜 172.16.127.255)
3.3.3.3(スタブエリア) 172.16.128.0/18(172.16.128.0 〜 172.16.191.255)


スイッチAの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にし、各インターフェースにIPアドレスを設定します。


  3. OSPFのルーターIDを設定します。


  4. バックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。


  5. バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。ここでは、直接接続されているネットワークの範囲を指定します。


  6. バックボーンエリアに所属するIPインターフェースを指定します。


  7. エリア1.1.1.1を作成します。


  8. エリア1.1.1.1に所属するIPアドレスの範囲を設定します。直結されているネットワークの範囲は「172.16.0.0/24」ですが、ここではエリア全体を包含するCIDRブロック「172.16.0.0/18」を指定することにより、エリア外に1つの経路「172.16.0.0/18」だけを通知しています。


  9. エリア1.1.1.1に所属するIPインターフェースを指定します。


  10. OSPFを有効にします。


スイッチBの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にし、各インターフェースにIPアドレスを設定します。


  3. OSPFのルーターIDを設定します。


  4. バックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。


  5. バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。ここでは、直接接続されているネットワークの範囲を指定します。


  6. バックボーンエリアに所属するIPインターフェースを指定します。


  7. エリア2.2.2.2を作成します。


  8. エリア2.2.2.2に所属するIPアドレスの範囲を設定します。直結されているネットワークの範囲は「172.16.64.0/24」ですが、ここではエリア全体を包含するCIDRブロック「172.16.64.0/18」を指定することにより、エリア外に1つの経路「172.16.64.0/18」だけを通知しています。


  9. エリア2.2.2.2に所属するIPインターフェースを指定します。


  10. OSPFを有効にします。


スイッチCの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にし、各インターフェースにIPアドレスを設定します。


  3. OSPFのルーターIDを設定します。


  4. バックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。


  5. バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。ここでは、直接接続されているネットワークの範囲を指定します。


  6. バックボーンエリアに所属するIPインターフェースを指定します。


  7. エリア3.3.3.3を作成します。


  8. エリア3.3.3.3に所属するIPアドレスの範囲を設定します。直結されているネットワークの範囲は「172.16.128.0/24」ですが、ここではエリア全体を包含するCIDRブロック「172.16.128.0/18」を指定することにより、エリア外に1つの経路「172.16.128.0/18」だけを通知しています。


  9. エリア3.3.3.3に所属するIPインターフェースを指定します。


  10. OSPFを有効にします。


設定は以上です。

■ 経路表を確認するには、SHOW IP ROUTEコマンドを使います。

■ OSPFインターフェースの状態はSHOW OSPF INTERFACEコマンドで確認します。


■ 隣接ルーターの情報を確認するには、SHOW OSPF NEIGHBOURコマンドを使います。


■ OSPFエリアの情報を確認するには、SHOW OSPF AREAコマンドを使います。


■ OSPFエリアの範囲を確認するには、SHOW OSPF RANGEコマンドを使います。


■ トポロジーデータベースの情報を確認するにはSHOW OSPF LSAコマンドを使います。


■ OSPFの設定情報を確認するにはSHOW OSPFコマンドを使います。


 

ASBR(AS境界ルーター)

OSPFとRIPのように、異なるルーティングプロトコルを使用するネットワークの境界に位置するルーターをAS境界ルーター(ASBR=Autonomous System Boundary Router)と呼びます。ここでは、次のようなネットワーク構成を例として、本製品をASBRとして使用するための設定方法について説明します。


スイッチAの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを設定します。


  4. OSPFのルーターIDを設定します。


  5. OSPFのバックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。


  6. バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。ここでは、直接接続されているネットワークの範囲を指定します。


  7. バックボーンエリアに所属するIPインターフェースを設定します。


  8. OSPFを有効にします。


スイッチBの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを設定します。


  4. VLAN C側でRIPパケットの送受信を有効にします。


    Note - RIPではなくスタティックルーティングを行う場合は、ADD IP ROUTEコマンドで経路情報を登録してください。たとえば、この例では「ADD IP ROUTE=192.168.40.0 MASK=255.255.255.0 INT=vlan-C NEXT=192.168.30.2」などとします。

  5. OSPFのルーターIDを設定します。


  6. バックボーンエリア(0.0.0.0)を作成します。


  7. バックボーンエリアに所属するIPアドレスの範囲を設定します。ここでは、直接接続されているネットワークの範囲を指定します。


  8. バックボーンエリアに所属するIPインターフェースを設定します。


  9. ASBRの設定をします。「ASEXTERNAL=ON」はASBRとして動作させるための設定、「RIP=BOTH」は、RIPとOSPFの間で経路情報を相互に交換するための設定です。


    Note - RIPではなくスタティックルーティングを行う場合は、「RIP=BOTH」は不要です。「ASEXTERNAL=ON」だけで、(SET OSPFコマンドのSTATICEXPORTのデフォルト値がYESのため)スタティック経路がOSPFに取り込まれるようになります。

    Note - ファームウェアバージョン2.9.1以降、「SET OSPF RIP=BOTH」は、「SET OSPF RIP=EXPORT」と「ADD OSPF REDISTRIBUTE PROTOCOL=OSPF」の2コマンドに分割・変換された上で保存されます。詳しくはSET OSPFコマンド、ADD OSPF REDISTRIBUTEコマンドの説明をご覧ください。

  10. OSPFを有効にします。


スイッチCの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを設定します。


  4. VLAN C側でRIPパケットの送受信を有効にします。また、VLAN D側ではRIPパケットの送信のみを有効にします。


    Note - RIPではなくスタティックルーティングを行う場合は、ADD IP ROUTEコマンドで経路情報を登録してください。たとえば、この例では「ADD IP ROUTE=0.0.0.0 MASK=0.0.0.0 INT=vlan-C NEXT=192.168.30.1」とすれば、直接接続されていないネットワーク宛てのパケットがすべてデフォルトルート(スイッチB)に送られるようになります。

■ 経路表を確認するには、SHOW IP ROUTEコマンドを使います。

■ OSPFインターフェースの状態はSHOW OSPF INTERFACEコマンドで確認します。


■ OSPFエリアの情報を確認するには、SHOW OSPF AREAコマンドを使います。


■ OSPFエリアの範囲を確認するには、SHOW OSPF RANGEコマンドを使います。


■ トポロジーデータベースの情報を確認するにはSHOW OSPF LSAコマンドを使います。


■ OSPFの設定情報を確認するにはSHOW OSPFコマンドを使います。


■ RIPの設定を確認するにはSHOW IP RIPコマンドを使います。

 

BGP-4経路の取り込み

OSPFとBGP-4を併用している場合、BGP-4で学習した経路をOSPFの経路表に取り込み、これをOSPFで再配布することができます。

ここでは、10.10.0.0/16の範囲におさまるBGP-4経路だけを、最大10個までOSPFの経路表に取り込む設定を示します。なお、OSPFの基本設定までは完了していると仮定しています。

  1. ADD IP FILTERコマンドでプレフィックスフィルターを定義します(フィルター番号は300〜399の範囲を使ってください)。ここでは、10.10.0.0/16の範囲におさまる経路だけを取り込むため、次のようなフィルターを定義します。


    Note - プレフィックスフィルターの末尾には、すべてのプレフィックスを拒否する暗黙のエントリーが存在するので、この例では指定範囲外の経路は取り込み対象となりません。

  2. BGP-4経路の取り込みを有効化します(BGPIMPORT=ON)。また、取り込む経路の最大数(BGPLIMIT=10)と取り込み時に適用するプレフィックスフィルター(BGPFILTER=300)も指定します。


    Note - 「ASEXTERNAL=ON」を指定しなくてもBGP-4経路の取り込みは行われますが、通常は指定してください。

    Note - ファームウェアバージョン2.9.1以降、「SET OSPF BGPIMPORT=ON」は、「ADD OSPF REDISTRIBUTE PROTOCOL=BGP」コマンドに変換された上で保存されます。また、BGPLIMITパラメーターの変更は、「ADD OSPF REDISTRIBUTE PROTOCOL=BGP」コマンドのLIMITパラメーターにも反映されます。詳しくはSET OSPFコマンド、ADD OSPF REDISTRIBUTEコマンドの説明をご覧ください。

■ 取り込んだBGP-4経路の数が、SET OSPFコマンドのBGPLIMITパラメーターで指定した最大値に達した場合は、取り込み済みの経路が削除されて空きができるまで、BGP-4経路の取り込みが停止されます。BGPLIMITの有効範囲は1〜4000。デフォルト値は1000です。

■ プレフィックスフィルターの適用をとりやめるには、SET OSPFコマンドのBGPFILTERパラメーターにNONEを指定します。


 

仮想リンク

ここでは仮想リンクの設定方法について説明します。

OSPFではエリア間の経路情報をバックボーンエリア(0.0.0.0)経由で交換するため、すべてのエリアがバックボーンエリアと接していなくてはなりません。しかし、仮想リンクを設定することにより、バックボーンと直接接続されていないエリアとバックボーンを仮想的に接続することができます。

ここでは次のような構成のネットワークを例に説明します。


各エリアの範囲は次の通りです。

表 6
エリア
範囲
0.0.0.0(バックボーン) 172.16.0.0/16, 192.168.100.0/24
1.1.1.1(通過エリア) 192.168.10.0/24
2.2.2.2(スタブエリア) 192.168.20.0/24, 192.168.21.0/24, 192.168.22.0/24
AS外部(RIPドメイン) 192.168.101.0/24, 192.168.102.0/24


OSPFルーター(スイッチ)は4台あります。各スイッチの設定を次にまとめます。

■ スイッチA

■ スイッチB

■ スイッチC

■ スイッチD

スイッチAの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを設定します。


  4. OSPFのルーターIDを設定します。


  5. バックボーンエリア(0.0.0.0)を作成し、範囲を指定します。


  6. エリア1.1.1.1を作成し、範囲を指定します。仮想リンクの通過エリアとなるため、STUBAREA=OFFを指定します。


    Note - STUBAREA=OFFを忘れるとスタブエリアとなり、仮想リンクが通過できなくなりますのでご注意ください。

  7. バックボーンエリアに所属するインターフェースを指定します。


  8. エリア1.1.1.1に所属するインターフェースを指定します。


  9. エリア2.2.2.2のABR(ID 3.3.3.3)との間に仮想リンクを張ります。AREAには通過エリアを、VIRTUALLINKには対向ABRのルーターIDを指定します。


  10. OSPFを有効にします。


スイッチBの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを設定します。


  4. VLAN-DとEでRIPを有効にします。


  5. OSPFのルーターIDを設定します。


  6. バックボーンエリア(0.0.0.0)を作成し、範囲を指定します。他のルーターと同じ設定になるよう注意してください。


  7. バックボーンエリアに所属するインターフェースを指定します。


  8. AS境界ルーター(ASBR)として動作するよう設定します。


    Note - ファームウェアバージョン2.9.1以降、「SET OSPF RIP=BOTH」は、「SET OSPF RIP=EXPORT」と「ADD OSPF REDISTRIBUTE PROTOCOL=OSPF」の2コマンドに分割・変換された上で保存されます。詳しくはSET OSPFコマンド、ADD OSPF REDISTRIBUTEコマンドの説明をご覧ください。

  9. OSPFを有効にします。


スイッチCの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを設定します。


  4. OSPFのルーターIDを設定します。


  5. バックボーンエリア(0.0.0.0)を作成し、範囲を指定します。他のルーターと同じ設定になるよう注意してください。バックボーンエリアとは仮想リンクで接続します。


  6. エリア1.1.1.1を作成し、範囲を指定します。仮想リンクの通過エリアとなるため、STUBAREA=OFFを指定します。他のルーターと同じ設定になるよう注意してください。


    Note - STUBAREA=OFFを忘れるとスタブエリアとなり、仮想リンクが通過できなくなりますのでご注意ください。

  7. エリア2.2.2.2を作成し、範囲を指定します。


  8. エリア1.1.1.1に所属するインターフェースを指定します。


  9. エリア2.2.2.2に所属するインターフェースを指定します。


  10. バックボーンエリア(0.0.0.0)のABR(ID 1.1.1.1)との間に仮想リンクを張ります。AREAには通過エリアを、VIRTUALLINKには対向ABRのルーターIDを指定します。


  11. OSPFを有効にします。


スイッチDの設定

  1. VLANの設定を行います。


  2. IPモジュールを有効にします。


  3. VLANインターフェースにIPアドレスを設定します。


  4. OSPFのルーターIDを設定します。


  5. エリア2.2.2.2を作成し、範囲を指定します。他のルーターと同じ設定になるよう注意してください。


  6. エリア2.2.2.2に所属するインターフェースを指定します。


  7. OSPFを有効にします。


■ 経路表を確認するには、SHOW IP ROUTEコマンドを使います。

■ OSPFインターフェースの状態はSHOW OSPF INTERFACEコマンドで確認します。


■ OSPFエリアの情報を確認するには、SHOW OSPF AREAコマンドを使います。


■ OSPFエリアの範囲を確認するには、SHOW OSPF RANGEコマンドを使います。


■ トポロジーデータベースの情報を確認するにはSHOW OSPF LSAコマンドを使います。


■ OSPFの設定情報を確認するにはSHOW OSPFコマンドを使います。


■ RIPの設定を確認するにはSHOW IP RIPコマンドを使います。







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