ネットワークはクラウドで管理すべき?複数拠点企業の導入ポイント

拠点が増えるほど、ネットワーク運用の負担は積み重なっていきます。
「本社は最新の設定になっているのに、支社の機器は古い設定のまま」「障害が起きるたびに担当者が現地へ駆けつけている」といったように、複数拠点や遠隔地に事業所を構える企業のIT担当者であれば、こうした悩みに心当たりがあるのではないでしょうか。
ネットワークのクラウド管理とは、複数拠点のスイッチや無線LANアクセスポイント、ルーターをクラウド上の管理コンソールから一元的に設定・監視する仕組みです。本記事では、複数拠点企業のIT担当者に向けて、仕組みの基礎から導入のメリット・注意点までわかりやすく解説します。

目次

ネットワークのクラウド管理が注目される背景

まず、なぜ今ネットワークのクラウド管理が注目されているのか、その背景を2つの観点から見ていきます。

IT部門が管理すべき対象の複雑化

近年、企業のIT部門が管理すべき対象は年々複雑化しています。
企業の成長に伴う拠点増加や、クラウドサービスの利用拡大といった背景から、ネットワークが本社に閉じたものではなくなりつつあるため、拠点ごとのVPNやWAN回線の管理やセキュリティ対策など、IT部門が対応すべきタスクは増加しています。加えて、IT人材不足も深刻化しています。
このように、限られたリソースで複数拠点のネットワークを維持していくには、個別対応を前提とした従来型の運用では限界が見え始めています。

通信環境の変化

総務省の「令和6年通信利用動向調査」でも、企業におけるクラウドサービスの利用は年々拡大していることが示されています。業務システムのクラウド化が進むほど、それを支えるネットワーク自体もクラウドと親和性の高い形で管理することが、運用効率とセキュリティの両面で合理的な選択肢となりつつあります。
ただし、 オンプレミス 管理が適している場合もあるため、自組織のセキュリティポリシーなどを考慮して検討することも求められます。

ネットワークのクラウド管理とは

ここからは、ネットワークのクラウド管理がどのような仕組みで、従来のオンプレミス管理と何が違うのかを見ていきます。

クラウド管理の仕組み

ネットワークのクラウド管理とは、スイッチやアクセスポイント、ルーターといった拠点のネットワーク機器を、クラウド上の管理コンソールを通じて一元的に設定・監視する仕組みです。従来はそれぞれの拠点に足を運んで機器の設定を変更していた作業を、Webブラウザからのアクセスだけで完結できるようになる点が特徴です。

国内で提供されているサービスの一例として、ネットワーク機器メーカーであるアライドテレシス株式会社の「Allied OneConnect」があります。単一のダッシュボードでネットワーク全体の状態をリアルタイムに把握できる可視化機能や、新規機器を接続するだけで自動的に設定が適用される仕組みなどが用意されています。

オンプレミス管理との違い

従来型のオンプレミス管理では、設定情報を機器ごとに個別で保持し、変更のたびに拠点側での作業が必要でした。現在ではオンプレミス型の管理ツールでも、機器の設定情報を一元管理できるものが普及しています。ただし、サーバーの用意やツール自体のバージョン管理は自社で行う必要があり、離れた拠点の管理には閉域網の回線を用意しなければなりません。
一方、クラウド管理では設定情報をクラウド側で一元的に保持し、変更内容を全拠点へ同時に配信できます。これにより、複数拠点や遠隔地であっても、本社と同じ設定基準・セキュリティポリシーを保ちやすくなります。ただし、拠点数が少なく機器構成がシンプルな場合や、外部接続を極力避けたい環境では、オンプレミス管理が適することもあります。

対象となる機器の範囲

クラウド管理の対象となるのは、スイッチ、無線LANアクセスポイント、ルーター、VPN機器など、拠点内外の通信を支えるネットワーク機器全般です。サービスによって対応機器の範囲は異なるため、導入時には自社が保有する機器がどこまでカバーされるかを確認しておく必要があります。

クラウドでネットワークを一元管理する4つのメリット

クラウド管理を導入することで、具体的にどのようなメリットが得られるのか、4つの観点から解説します。

メリット1:運用工数とコストの削減

複数拠点への機器導入時、あらかじめクラウド上で設定を準備しておき、現地では機器を接続するだけで稼働できる「ゼロタッチプロビジョニング」という仕組みを使えば、拠点への出張や個別設定にかかる工数を大幅に減らせます。実際に、短期間で会場のネットワークを構築する必要があったイベントでも、この仕組みを活用した事例が報告されています。

Japan Mobility Show 2025
1日1,000台以上が接続する高密度なプレスルーム環境を、事前のクラウド設定により初期構築工数を約5割削減

全国選抜高校テニス大会
屋外・複数会場という条件下でも、事前設定と現地接続のみで安定した通信環境を実現

サイバー犯罪に関する白浜シンポジウム
短期間の立ち上げにより、構築・運用の工数を約6割削減

メリット2:セキュリティレベルの均一化

拠点ごとに個別で設定を行っていると、担当者のスキルや繁忙度によってセキュリティ設定にばらつき(セキュリティレベルの格差)が生じセキュリティホールになり得ます。ある拠点だけファームウェアの更新が遅れている、といった状態が放置されると、その拠点がセキュリティ上の弱点となり、ネットワーク全体のリスクを高めかねません。
クラウド管理であれば、全拠点に同一のポリシーを一括適用できるため、こうした格差の発生を防ぎやすくなります。監査やセキュリティ点検の際も、全拠点の設定状況を一覧で確認できるため、報告資料の作成にかかる手間を減らせます。

メリット3:ネットワーク全体の可視化による迅速な対応

単一のダッシュボードから全拠点の稼働状況やトラフィックを俯瞰できるため、障害の予兆や異常を早期に検知しやすくなります。可視化された稼働データは、機器の更新時期を判断する材料としても活用できます。前述のJapan Mobility Show 2025の事例でも、遠隔監視によって現地に常駐せずとも先手を打った対応が可能になったことが報告されています。

メリット4:拠点間の設定差異によるトラブルの防止

「本社では問題なく使えている機能が、支社では動作しない」といったトラブルの多くは、設定の差異が原因です。設定をクラウド側で一元管理することで、こうした差異そのものの発生を抑え、問い合わせ対応やトラブルシューティングにかかる工数の削減にもつながります。

導入前に押さえておきたい注意点

メリットが大きい一方で、導入前に押さえておきたいポイントもあります。ここでは4つの注意点を紹介します。

既存機器・運用体制との整合性

クラウド上で複数の管理ツールやサービスを組み合わせて使う場合、運用インターフェースやAPIの違いから、かえって管理が複雑になってしまうケースもあります。すでに導入済みの機器や運用体制がある企業ほど、大がかりな入れ替えを伴う移行に身構えてしまいがちです。サービスによっては、対象拠点や機器を絞って段階的に導入できるスモールスタート型のライセンス体系もあるため、既存資産を活かした移行も検討するとよいでしょう。

通信断が起きた際の備え

クラウド管理はインターネット経由で管理コンソールにアクセスする仕組みのため、上位回線に障害が発生した際にどこまで運用を継続できるかは事前に確認しておきたいポイントです。対策の一つとして、SIMカードやUSBの5G/LTE通信に対応したセキュアVPNルーターをバックアップ回線として組み合わせ、主回線の障害時に自動的に切り替える構成もあります。

<参考>SIMカード対応の次世代型VPNアクセス・ルーター

<参考>アライドテレシスのルーター製品で利用可能なUSBデータ通信端末一覧

ゼロトラスト・SASEとの関係

クラウド管理と合わせて検討されることが多いのが、ゼロトラストやSASE(Secure Access Service Edge)といった考え方です。クラウド管理を行ううえでは、セキュリティ対策もあわせて検討することが欠かせません。ここからは、その考え方を整理します。ゼロトラストとは、社内・社外を区別せず、情報資産へのアクセスを一律に信頼しないことを前提として、都度検証したうえで許可する考え方を指します。
SASEは、このゼロトラストの考え方をベースに、SD-WANやクラウド型ファイアウォールなどのネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウドサービスとして統合的に提供するフレームワークです。

例えば埼玉県三芳町教育委員会では、回線の統合とあわせてクラウド型のUTMを導入し、アクセス制御と通信の常時監視を行える仕組みを取り入れることで、校外からのアクセスも安全に確保できる体制を整えています。あわせて、複数の学校の通信を教育委員会で集中管理できる体制を構築している点も特徴です。

自社に置き換えて考える際は、こうした考え方を全面的に導入する必要はなく、クラウド管理と組み合わせられる範囲から段階的に取り入れる、という発想でも十分です。

コスト面での考え方

クラウド管理型ネットワークの導入は、機器の入れ替えとサービス利用料が発生するため、短期的には投資として見えることがあります。一方で、拠点への出張費用や、障害発生時の復旧に要する時間的コストを踏まえると、中長期的には総保有コストを抑えられるケースも少なくありません。
導入前には、現状の運用にかかっているコストを洗い出したうえで比較検討することをおすすめします。

クラウド管理型サービスの選び方とよくある疑問

最後に、自社に合ったサービスの選び方と、よくある疑問について解説します。

自社に合ったサービスを選ぶ視点

サービスを選定する際は、次の3点を軸に比較すると、自社に合ったものを見極めやすくなります。

  • 既存機器との相性:現在利用している機器やメーカーに対応しているか
  • サポート体制:障害発生時に迅速な対応を受けられる体制が整っているか
  • 操作性:管理コンソールが直感的で扱いやすいか

こうした選定の視点は、統合運用管理ツール全般を比較する際にも共通して挙げられるポイントです。

<参考>クラウド管理型プラットフォームAllied OneConnect

SD-WANとの違いは?

SD-WANは拠点間の通信経路をソフトウェアで最適化する「回線側」の技術であるのに対し、クラウド管理は機器の設定・監視を担う「管理側」の仕組みです。両者は競合するものではなく、組み合わせて使われることも多くあります。

導入コストはどのくらいかかる?

機器数、拠点数、必要な機能、機器の入れ替えが必要かどうかによって変動します。既存機器を活かせるサービスであれば、初期費用を抑えて始められる場合もあります。また、ライセンス体系がサブスクリプション型であることも多く、初期投資を抑えられる一方、長期的な運用コストの見通しを事前に確認しておくことも欠かせません。

導入までどのくらいの期間が必要?

拠点数や機器構成にもよりますが、事前にクラウド上で設定を準備できる仕組みを活用すれば、短期間での立ち上げも可能です。

拠点数が少なくても導入する意味はあるか

「クラウド管理は拠点数の多い大企業向け」というイメージを持たれがちですが、拠点数が2〜3程度の企業でも導入の意味は十分にあります。
例えば、担当者が頻繁に訪問しにくい遠隔地に拠点がある場合や、拠点数は少なくても重要度が高く本社と同水準の管理体制を求められる場合には、クラウド管理によって離れた拠点の状況を可視化できるメリットは大きいといえます。

まとめ

本記事では、ネットワークのクラウド管理について、注目される背景から仕組みの基礎、導入のメリットと注意点までを解説しました。
複数拠点・遠隔地の運用に伴う工数やセキュリティのばらつきといった課題は、クラウド管理によって解消できる可能性があります。まずは自社の拠点数や既存の運用体制を整理したうえで、スモールスタートできるサービスから検討してみてはいかがでしょうか。

  • 本記事の内容は公開日時点の情報です。
  • 記載されている商品またはサービスの名称等はアライドテレシスホールディングス株式会社、アライドテレシス株式会社およびグループ各社、ならびに第三者や各社の商標または登録商標です。

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IT初心者やエンドユーザーに向けて、「難しいことをわかりやすく」をモットーに執筆中。
仕組みの背景や用語の意味など「いまさら聞けない」ことも丁寧に説明するスタイルが信条です。
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