日本赤十字社 大津赤十字病院 様

病院ネットワークを統合し仮想的に分割。統合したネットワークの管理・運用の一元化とともに、全館カバーする無線LANで患者用Wi-Fiも構築

滋賀県大津市の大津赤十字病院は、電子カルテシステムを含む情報システムの更新にあわせて、病院ネットワークを刷新した。これまで物理的に分離していたHISネットワークとインターネット系ネットワークを統合、論理的に分割。アライドテレシスのAMFを導入することで運用を一元化するとともに、AWCによる電波の自律調整で快適な無線LAN環境を実現している。また今回、ニーズに対応するために患者用Wi-Fiを導入している。(2022年6月公開)

業種・業務
医療
ソリューション
ネットワーク運⽤ AMF Vista Manager シリーズ スイッチソリューション VCS 無線LAN AWC セキュリティ UTM&VPN PoE
導入製品
ネットワーク運用 コアスイッチ ディストリビューションスイッチ エッジスイッチ 無線LAN ITサービス(Net.Service)
導入目的
公衆無線LAN ネットワークの改修・増築・刷新 運⽤・管理の向上 環境の整備 統合管理 安定稼働・安定通信 無線LANの簡単導入 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 運用・管理・監視の支援を外部に委託 業務効率の向上 コスト削減

DX、ゼロトラストを推進する大津赤十字病院

 大津赤十字病院は、1904年に滋賀県庁近くに開かれた日本赤十字社滋賀支部病院に始まり、その後1943年に大津赤十字病院へと改称された。病床数は684床で、37の診療科を標ぼうし、総合的医療機能を備える医療機関だ。高度救命救急センターでの急性期医療の提供をはじめ、非常災害救護の拠点となる基幹災害拠点病院の役割も担っている。
 大津赤十字病院では現在、院内業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を検討している。
 「ペーパーレス化や事務手続きの電子化など、これまで紙やアナログで当然とされていたことをICTにより変革していこうと考えています。また医療従事者の働き方についても、現状を整理して、これもICTにより改善できないかを模索しています」と話すのは、大津赤十字病院 事務部医療情報課長 兼 情報システム係長 兼 診療支援係長の橋本 智広氏だ。
 また昨今、特に医療機関をターゲットとするサイバー攻撃とその被害が多く報道されていることもあり、大津赤十字病院でもゼロトラストの考え方で運用面を含めたセキュリティをさらに強化することを検討しているという。

病院ネットワークの刷新に、アライドテレシスを採用

 大津赤十字病院が電子カルテシステムを導入したのは2006年のこと。同時にネットワークも整備し、更新しながら利用を続けてきた。2014年に実施した情報システムの更新では、 インフラ部分とシステム部分を切り離して検討を行い、その結果ネットワークについては、必要な機能と運用を意識したサポートなどを重視して、アライドテレシスのネットワークソリューションを初めて導入。2019年にはインターネット系ネットワークの拡張にあたり、一部のネットワークにAMF(Autonomous Management Framework)を導入した。
 AMFは、複数のネットワーク機器の一括設定や一括アップデート、遠隔地からの管理・設定変更、事前設定不要の機器交換といった運用を可能とし、運用・管理工数とコストの大幅な削減、障害時の自動復旧を実現するアライドテレシスの独自技術だ。
 そして今回、2021年の情報システム更新にあたり、ネットワークを刷新することとした。主な要件となったのは次の5点だ。
 まず1点目に「ネットワーク利用エリアの拡大」だ。これまでの更新では既設の場所の機器を交換する対応だったが、電波強度が低い箇所が散見されたため、サーベイも含め再構築することとした。
 次に「複数ネットワークの利用」の問題だ。更新後はHISネットワーク、本社ネットワーク(日本赤十字社経由のインターネット利用、業務用ネットワーク)、アメニティネットワーク(患者用Wi-Fiも含むネットワーク)といった複数のネットワークが稼働することになるため、それらネットワークを統合するとともに運用を一元化する必要があった。
 3番目に「最新機器の採用と必要とされる機能の実装」だ。ネットワークの可視化やメンテナンス性の向上、そしてセキュリティを意識した設計(HISネットワークに接続される端末の制限など)が求められた。
 4番目には「ネットワーク保守体制の確立」である。医療機器ベンダーが利用するメンテナンス回線を集約して、さらなるセキュアなメンテナンス環境を構築することが必要だった。これについては長年の課題となっていたという。
 最後に「志賀病院との統合管理」だ。関連病院である大津赤十字志賀病院も同レベルのネットワーク環境を構築し、統合的に大津赤十字病院から管理できる環境と体制を構築することが求められた。
 アライドテレシスでは、パートナーの住友電設株式会社とともにこれら要件を満たす提案を実施し、採用が決まった。
 「ポイントとなったのは提案力、企画力、業務遂行能力、サポート力、機器の信頼性などで、すべてを総合的に判断して採用しました。アライドテレシスと住友電設がタッグを組んで対応していただけていますので、安心感があります」と橋本氏は採用の理由を話す。

ネットワークを統合し、運用性・セキュリティが向上

 2021年3月から段階的に設置工事を行い、2021年9月からは新ネットワークの本格運用を開始。スイッチ類200台以上、無線LANアクセスポイントも170台以上と大規模な導入となったが、無事工事は完了した。「コロナ禍の影響もあり、スケジュール管理は難しい面もありましたが、大津赤十字病院様と密にコミュニケーションを取りつつ進め、大きなトラブルなく切り替えもスムーズに完了しました」と話すのは、住友電設株式会社 情報通信システム事業部 技術部西部技術課 課長の藤原 健一氏。
 新たなネットワークは、コア・スイッチにアドバンスト・レイヤー 3・モジュラー・スイッチ「SwitchBlade AT-SBx908 GEN2」を2台、VCS(バーチャルシャーシスタック)で冗長化して設置。フロア・スイッチには「CentreCOM x530シリーズ」、エッジ・スイッチには「CentreCOMSH230シリーズ」「 CentreCOM GS920シリーズ」などが導入された。無線LANアクセスポイントには「AT-TQ5403」を設置している。また管理ツールには、最新のネットワークマネージメントソフトウェア「AT-VistaManager EX」を導入した。
 3つのネットワーク(HISネットワーク、本社ネットワーク、アメニティネットワーク)を統合、論理的に分割する形で、AMFによる一元管理を実現している。また無線LANにはAWCを導入。AWCは、アクセスポイントそのものをインテリジェント化してチャンネルや電波出力を自律的に調整、無線エリア内の電波干渉を最小化することで、快適に利用できる無線LAN環境を実現する。なお、有線/無線を問わず、許可端末のみがネットワークにアクセスできるように認証を強化している。
 今回の新ネットワークではほぼ全館が無線LANの利用エリアとなるため、サーベイを再度実施し、無線LANアクセスポイントの設置場所などの見直しも行った。「無線については、電子カルテの端末などでも利用していますが、繋がらない、遅いなどといった声は聞いていません。多くの医療機器でも無線LANを利用して接続しており、そちらも問題なく利用できています」と橋本氏。
 機器だけでなく、運用支援サービスの「Net.Monitor」を導入しており、万一トラブルなどが発生した際には、リモートでの一次切り分けをアライドテレシス側が行い、異常箇所を特定する。またNet.Monitorの個別サービスとして「リモメンパック」に加入しており、医療機器ベンダーが利用するメンテナンス回線を集約している。リモメンパックは、ベンダーのリモートメンテナンス用の回線とSSL-VPN装置をセットにして提供するサービス。「リモメンパックで医療機器ベンダーのメンテナンス回線を20以上集約しています。以前から課題でしたので、セキュアなメンテナンス環境ができたと思います。また、セキュリティを意識して、この回線は、必要時以外に物理的な抜線を行うなどの対策を行っています。日頃から、今必要とされることを意識しながら柔軟に運用変更を行うこととしています」と橋本氏は言う。
 関連病院の大津赤十字志賀病院についてもネットワークの更新は予定通り完了し、大津赤十字病院からAMFによるネットワークの一元管理環境が実現できている。

患者用Wi-Fiも提供開始、さらなるセキュリティの強化も視野に

 大津赤十字病院では今回のネットワーク更新で、患者用Wi-Fiを正式に導入している。「ニーズに対応したもので、患者さんが外来や病棟でもインターネットに接続できる環境を提供しています」と橋本氏。現在は想定以上に利用が多くなっているため、利用者がより利用しやすい環境を持続するためにどうすれば良いかを引き続き検討していくという。
 橋本氏はアライドテレシスの医療ユーザー会にも参加し、情報収集にも積極的だ。「情報収集はもちろん、情報発信も積極的に行いたいと考えており、今後も参加を続けていきたいと思います」と橋本氏は言う。 大津赤十字病院は今後も病院ネットワークを安全、快適に利用できるように運用・改善を進めていく。
 「今後は標的型サイバー攻撃対策(ふるまい検知)の製品などを導入し、アライドテレシスのAMF-SECを利用して、脅威が発見されたらネットワークを自動的に止める、といったセキュリティ強化も検討していきたいと思っています。もはや脅威を絶対に侵入させないというのは難しいので、“ゼロトラスト”で対応を素早く、そして患者さんや連携している他の病院に迷惑を掛けることなどないようにしていきたいと思います」と橋本氏は今後の展望を語った。
 アライドテレシスではこれからも、大津赤十字病院のネットワークを、製品や技術、サポートの摘要を通じて、積極的に支援していく。

導入ネットワーク構成イメージ図

導入企業基本情報

お客様プロフィール

大津赤十字病院
事務部 医療情報課長
兼 情報システム係長
兼 診療支援係長
橋本 智広氏

病院名
日本赤十字社 大津赤十字病院
所在地
滋賀県大津市長等一丁目1-35
創立
1876年
病床数
684床(一般病床672床、精神病床12床)
標榜診療科目
37診療科
敷地面積
23,713.9平方メートル
URL
https://www.otsu.jrc.or.jp/
取り組み

日本赤十字社滋賀県支部が開設した、滋賀県大津市の医療機関。基幹災害拠点病院のほか高度救命救急センター、地域医療支援病院、がん診療連携拠点病院、総合周産期母子医療センター、一次脳卒中センターなどの承認・指定も受けている。

パートナー企業基本情報

お客様プロフィール

住友電設株式会社
情報通信システム事業部
技術部西部技術課
課長
藤原 健一氏

会社名
住友電設株式会社
所在地
大阪府大阪市西区阿波座2-1-4
設立
1950年
代表者
代表取締役社長 谷 信
URL
https://www.sem.co.jp/
取り組み

総合エンジニアリング企業として電気工事、情報通信工事をはじめ、電力、空調、プラント等の設備工事全般を国内外において幅広く手がけ、社会インフラを支える。

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