北海道富良野市 様

<自治体DX>ペーパーレス化で約36%の紙の削減を達成!β´モデルの採用でクラウド活用と業務効率化を加速

北海道のほぼ中央に位置する富良野市は、新庁舎の建設を機にネットワークを再設計し、クラウド活用を前提としたβ′(ベータダッシュ)モデルを採用。アライドテレシスのスイッチや無線LAN、統合管理ソリューションを導入することで、10GバックボーンとWi-Fi 6による快適、かつ安定した通信環境を実現。ネットワーク全体の可視化と高い運用性により、単なる通信インフラにとどまらず、職員が安心してクラウドを活用でき、業務に専念できる環境が整っている。(2025年11月公開)

官公庁・自治体 北海道・東北 人口:19,290人
目 的
自治体三層の対策 無線LANの導入 ネットワークの安定稼働 通信の改善(高速化・帯域強化) セキュアなインターネット接続 クラウドサービスの利活用 運用・管理の効率化 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 業務効率の向上
プロダクト・サービス
無線LANアクセスポイント AWC スイッチ VCS Vista Managerシリーズ AMF
規 模
10,000~49,999
課 題
・クラウド活用に制約のある三層分離環境
・通信環境の課題により業務効率が低下
・少人数体制で運用状況の全体把握が困難
採用ポイント
・インターネット中心の柔軟な構成「β'モデル」
・統合管理と運用の可視化を実現するソリューション
・Wi-Fi 6と10G対応スイッチによる高速・安定通信
効 果
・職員が安心してクラウドサービスを活用できる環境を実現
・通信の高速化・安定稼働でDXが進み業務効率が向上
・運用状況をリアルタイムで把握でき管理負担を軽減

地域特性を生かし職員とともに進めるDXの土台づくり

 北海道のほぼ中央に位置する富良野市は、十勝岳連峰を望む自然豊かな市である。ワインやチーズなどの6次産業化も進み、「地域ブランド調査2024」では全国第10位に選ばれている。
この豊かな地域特性を生かし、富良野市は行政のデジタル化にも早くから取り組んできた。2020年に「スマートシティ戦略室」を新設し、DX推進と情報政策を一体で担う体制を構築。業務改革とICT導入を並行して進めることができる組織設計であり、庁内全体の意識改革を促す役割を担っている。
 「DX人材育成が3年目を迎え、とくに今年は参加職員の成長が顕著です」と語るのは、総務部 スマートシティ戦略室 スマートシティ戦略課 課長の木村 栄一氏。
 富良野市では「DX推進員」制度を導入し、全職員の約2割にあたる50名規模の人材育成を進めている。職員の意識改革とデジタル基盤の整備を両輪として進めることで、「誰もがI CTの恩恵を享受できるスマートシティ」の実現を目指している。また、職員全員が生成AIのライセンスを持ち、多くの職員が画像生成や仮想市民を使った討論、検索ツールとして活用している。さらに、BIツール(業務データ可視化と分析・意思決定の支援ツール)については、過去の実証実験でデータ取得・分析に使用し、研修も行った。2025年の人材育成メニューにもBIツールを学ぶ場を設けているという。

インターネット利用の拡大に合わせた柔軟なネットワーク構成へ

 新庁舎ネットワークの設計を検討する際、最大の課題だったのは業務環境の変化だ。行政手続きの電子化やクラウドサービスの普及により、職員が日常的にインターネットを利用する機会が急速に増えていた。会議や文書共有、住民向けサービスの運用など、もはや多くの業務がインターネットを前提として進むようになっていたのである。
 富良野市では従来、三層分離に基づくαモデルのネットワーク構成を採用していた。LGWANを中心とした構成は高い安全性を保つ一方で、クラウド活用や外部との情報共有には多くの制約があった。 職員からは「インターネットを使いたくてもつながらない」「オンラインサービスが活用できない」といった声が上がり、利便性の低さが業務効率化の妨げとなっていた。
 この現状を受け、富良野市は新庁舎建設を機にネットワーク構成を根本から見直すことを決断。その結果採用したのが、インターネットを主軸とする「β′ (ベータダッシュ)モデル」である。LGWANの利用を最小限にとどめ、セキュリティを担保しながらクラウドを柔軟に活用できる仕組みにすることで、職員が業務に必要なオンライン環境を自由に利用できるようにした。
 木村氏は当時を振り返って、「あくまで個人的な意見ですが、LGWANはもちろん必要です。ただその用途はごく限られたものになってきていると感じていました。これからの行政には、クラウドを安全に使いこなす力が欠かせません。守る仕組みを整えた上で、より柔軟に活用できる環境が必要です」と語る。
 β′モデルの採用は、安全性を維持しつつも“使えるネットワーク”を取り戻すための決断であった。富良野市は閉鎖的なネットワークの限界を打破し、次代の業務スタイルに適応する道を選んだのである。

高性能ネットワークと統合管理で実現する見える運用

 新庁舎のネットワーク設計で富良野市が重視したのは、将来を見据えた拡張性と運用の容易さだった。職員がクラウドサービスを日常的に利用するβ′モデルでは、通信の安定性と見える化が不可欠となる。富良野市は、各階に分散するアクセスポイントを統合的に管理し、障害発生時にも迅速に状況を把握できる仕組みを求めた。
 採用したのは、アライドテレシスのスイッチと無線LAN製品を中核とする構成である。コアには10ギガビット対応のスイッチを配し、フロアにはマルチギガ対応のPoEスイッチを導入。すべてのフロアでWi-Fi 6対応アクセスポイント「AT-TQ6602」を設置し、庁内全域をカバーした。これにより、光配線を使わずUTPケーブルのみで10Gバックボーンを構築し、コストを抑えつつ高速通信を実現した。
 さらに、Vista Manager EXを中心とした統合管理環境を導入し、有線・無線を一元的に可視化できる体制を整えた。自動トポロジー表示やトラフィック分析、異常検知などの機能により、専門職が不在でも運用状況を容易に把握できるようになった。また、AWC(Autonomous Wave Control)による無線LANの自律制御機能を活用し、チャンネルや出力を自動で最適化することで、庁舎内の通信品質を安定化させている。
 「ネットワーク全体を見える化できるのは本当に助かります。機器の状態や通信量がひと目で分かるので、トラブルの原因をすぐに見つけられるようになりました」と木村氏。
 こうした設計により、富良野市は10GバックボーンとWi-Fi 6による快適な通信環境を実現するとともに、Vista Manager EXとAMF(Autonomous Management Framework)による統合運用基盤を確立。新庁舎のネットワークは、単なる通信インフラではなく、職員が安心してクラウドを活用できる“見えるネットワーク”として機能している。

住民の暮らしをいかに便利していくかが重要

 新庁舎のネットワークが稼働を開始して以降、富良野市では大きなトラブルは発生していないという。通信の不安定さや機器の障害に悩まされることもほとんどなく、職員は安心して業務に専念できている。「導入からこれまで、トラブルはほとんどありません。通信が安定していることで、庁舎全体の業務もスムーズに進むようになりました」と木村氏は評価する。
 また、ネットワークの安定化は、庁内のDX推進を大きく後押ししている。新庁舎の開庁以降、無線LANと電子決裁の導入を軸にペーパーレス化を進め、紙の使用量を2021年度比で約36%削減した。電子決裁やRPA(Robotic Process Automation)、AI議事録作成などの仕組みにより、年間6000時間を超える業務時間を削減。さらに、生成AIの活用にも踏み出し、ガイドラインを整備して350名規模で運用している。こうした取り組みは、職員の意識改革とデジタル人材育成を支える基盤となっており、地域に根ざしたスマート自治体の実現へと確実に前進している。
 木村氏はスマートシティを目指す富良野市の将来について、「少子高齢化や過疎化といった地方特有の課題を、デジタルの力で少しでも解決したいという思いがあります。観光では事業者のICT導入を支援したり、農業ではスマート農業の取り組みを進めたりと、分野ごとに工夫しています。しがらみも多く、容易ではありませんが、最終的には住民の暮らしをどう便利にできるかを一番に考えています」と力強く語った。
 アライドテレシスは、これからも富良野市のネットワーク運用と発展を支援し、地域に根ざした安心・安全な通信環境づくりに貢献していく。

導入ネットワーク構成イメージ図

導入企業基本情報

富良野市
総務部 スマートシティ戦略室
スマートシティ戦略課
課長
木村 栄一氏

自治体名
富良野市
庁舎所在地
北海道富良野市弥生町1番1号
行政面積
600.71㎢
世帯数
10,449世帯
人口
19,290人
URL
https://www.city.furano.hokkaido.jp/

北海道のほぼ中央に位置し「へそのまち」「スキーのまち」「ワインのまち」として全国に親しまれる。東に十勝岳連峰を望み、西に夕張山地を望む山林・田園の風景に囲まれながら、ラベンダー畑やテレビドラマのロケ地として広く知られ、多彩な農産物と観光資源によって四季を通じて魅力ある暮らしと旅を提供するまちである。

※世帯数・人口は、2025年3月現在の情報

ソリューション・製品 ラインナップ

まずはお気軽にご連絡ください !お問い合わせはこちら

一覧に戻る

Language