石川県加賀市 様

<自治体DX> 全国自治体で初!「クラウドUTM」によるローカルブレイクアウトの 導入で安全・快適にクラウドサービス(SaaS)をつかえる環境を整備。 “スマートシティ加賀”を目指して大きく前進

多くの自治体では、業務用の端末をLGWAN接続系に設置するαモデルを採用している。しかし、αモデルではクラウドサービスの利用が難しいといった問題がある。全国に先駆けて先進的に自治体DXを推進している石川県加賀市では、こうした課題の解決策として、アライドテレシスのプラットフォームサービス「クラウドUTM」を用いた「ローカルブレイクアウト」を採用。αモデルを維持したままクラウドUTMによりセキュリティが担保された形でクラウドサービスを利用できる環境で、業務の効率化を実現している。(2024年2月公開)

業種・業務
自治体
ソリューション
セキュリティ Net.CyberSecurity UTM&VPN
導入製品
システムインテグレーション ネットワーク運用 ルーター(有線LAN) ITサービス(Net.Service)
導入目的
ICT活用 ネットワークの改修・増築・刷新 運⽤・管理の向上 環境の整備 統合管理 安定稼働・安定通信 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 運用・管理・監視の支援を外部に委託 業務効率の向上 コスト削減 クラウド利用
課 題
・クラウドサービスが使いにくい自治体特有の閉鎖型ネットワーク環境
・ファイル無害化処理やダウンロードなどにかかる時間や手間が非効率
採用ポイント
・サービス提供型だから機器の調達も設置もメンテナンスも不要
・通信量に応じてスケールアップが容易
・ファイル無害化など高度な技術を標準装備
効 果
・従来の業務端末から安全・快適にクラウドサービスを利用できる環境に
・職員の負担軽減や大幅な業務効率化の実現で市民サービス向上にシフト

生体パスポートで未来社会を実現する加賀市

 石川県加賀市は、九谷焼や山中漆器などの伝統工芸、日本遺産に登録されている北前船など観光資源が豊富な市だ。市民がデジタル技術を活用して便利で快適にすごせるまちを目指す「スマートシティ加賀」を進めており、人口減少など地域の課題にデジタル技術で重点的に取り組む自治体として、国家戦略特区の一つである「デジタル田園健康特区」にも指定されている。
 またその一環として、顔認証での生体パスポートによりさまざまなサービスを“手ぶら”で受けられ、便利で安全に過ごすことができる「加賀市版スマートパス構想」を推進し、未来社会の実現を目指している。
 「すでに加賀市医療センターや屋内遊戯施設、避難所での顔認証端末の導入を進めており、2024年春には順次、市内施設での本格提供を予定しています」と話すのは、加賀市 イノベーション推進部 デジタル専門官の𠮷田 泰一氏。スマートパス構想のプロジェクトマネージャーを務める𠮷田氏は、「今後は市内施設の各種手続きにも生体パスポートの活用を広げ、さらに将来的にはもう一歩進めて、ウォークスルーでの受付や決済にも繋げていきます」と力強く語る。

自治体特有の「クラウドサービス(SaaS)が使いにくい」課題を解決

 加賀市では今回、アライドテレシスの協力のもと、セキュリティと利便性を両立した自治体ネットワーク環境を実現する、ローカルブレイクアウトを導入した。これにより、市の事務環境から直接クラウドサービスを安全に利用することが可能になった。
 加賀市のネットワーク構成はいわゆる“αモデル”だ。しかし、クラウド・バイ・デフォルト原則や自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進するなかで、従来の閉鎖型ネットワーク環境は制約の要因となり、さまざまな課題が生まれていた。
 「従来の環境では、メールの添付ファイルやビジネスチャット(Slack)、オンライン会議(Zoom)などのクラウドサービスでやり取りするファイルは無害化処理をかけた後に、LGWAN系の業務端末に移動する必要があり、クラウドサービスをそのままスムーズに使えない不便さが課題となっていました。これは自治体特有の課題と言えます」と𠮷田氏。VDI(ディスプレイ仮想化)や画面転送なども利用してきたが、時間や手間がかかるなど課題の解決には至らなかったという。
 そこで、アライドテレシスの“2つのSASEサービス”の一つ、プラットフォームサービス「クラウドUTM」を導入して、αモデルのままでクラウドサービスを活用できる環境を構築することとした。「デジタルサービスの活用と情報セキュリティは両輪で推進する必要があります。加賀市ではスマートパス構想や自治体DXに積極的に取り組んでいくなかで、情報セキュリティに関しても“攻め”の姿勢で取り組んでいきたいと考えています。今回採用したクラウドUTMについても、世界的にトップレベルのテクノロジーを採用したサービスを期待しています」と𠮷田氏は言う。

さまざまな面でメリットの大きい「クラウドUTM」

 アライドテレシスのクラウドUTMは、総合ITソリューションサービス「Net.Service」の各種サービスと組み合わせてカスタマイズして実現できるSASEサービス。従来、拠点単位でインターネットの出入口に設置していたUTM機器をクラウド上に統合することで、安全かつ効率的な運用を実現し、ローカルブレイクアウト環境への接続にも対応する。
 クラウドUTMの提案について加賀市は、クラウド上でサービスとして利用できることで、①セキュリティは標準的に必要となる機能を搭載しつつ、②機器の調達や設置は不要、③機器のメンテナンスも不要で、④標準で冗長構成が可能となっており、⑤利用帯域やUTMのスペックを柔軟に変更可能で、スモールスタートで始めることができる、といった点がオンプレミスのUTMよりもメリットが大きいと考えた。またアライドテレシスのクラウドUTMは高度なテクノロジーを採用し、ファイルの無害化処理にも対応していることやコストパフォーマンスに優れていることも採用の理由となった。
 従来、自治体のネットワークでは、自治体情報セキュリティクラウドを経由してインターネットに接続してきた。今回採用したクラウドUTMは、特定のクラウドサービスへの接続についてはセキュリティクラウドを使っていない。なぜクラウドUTMへの接続にセキュリティクラウドを使わないのかについては、「セキュリティクラウドは無害化処理をしてくれませんので、当市のセキュリティポリシーでは使いづらいこと、ローカルブレイクアウトは“特定”のクラウドサービスだけを通すのですが、その設定などの運用がセキュリティクラウドでは難しいことが理由としてあります」と語る。特定のクラウドサービス接続のみを許可する“特定クラウド系”を設定することで、αモデルを維持しながら、LGWAN系の業務端末からクラウドサービスを安全に利用することができる。
 構築開始から2カ月ほどでサービス開始できる環境が整い、庁内では2カ月目に仮運用、3カ月目に本運用を開始。当初は電子決裁サービス(シャチハタクラウド)をクラウドUTMによるローカルブレイクアウトで利用を開始し、その後は随時ローカルブレイクアウト利用のサービスを追加している。

ローカルブレイクアウトからつなぐ庁内フリーアドレス化

 導入後、電子決裁サービスのほか、ビジネスチャットやオンライン会議、ファイル共有などのサービスもローカルブレイクアウトで利用しており、「職員の負担軽減、大幅な業務効率化が期待でき、より多くの時間を市民サービス向上に充てることができるようになりました。職員からもすごく便利との声が届いています」と𠮷田氏は評価を語る。
 最後に今後の展望を聞いた。「グループウェアやビジネスチャットをMicrosoft365に統合することも検討していますが、今後はペーパレス化(起案文書のデジタル化等)や内線電話のクラウド化なども進めて、最終的には庁内のフリーアドレス化を実現したいと考えています。ローカルブレイクアウトがフリーアドレスにまで繋がる形ですね。今回、アライドテレシスの支援のもと、高水準なセキュリティを確保しながら新たな業務手法を導入することができました。これが全国自治体のモデルケースとなるべく、今後も継続して先端技術の積極導入およびデジタル人材育成を推進し、魅力的な行政およびまちづくりを目指していきます。今回の先端モデルを全国1700自治体に横展開いただけることを期待しています」と𠮷田氏は展望とアライドテレシスへの期待を力強く語った。
 アライドテレシスはこれからも、製品や技術、サポートの提供を通じて、加賀市のIT課題解決や自治体DX推進を積極的に支援していく。

導入ネットワーク構成イメージ図

導入企業基本情報

お客様プロフィール

加賀市
イノベーション推進部
デジタル専門官
𠮷田 泰一氏

自治体名
加賀市
市役所所在地
石川県加賀市大聖寺南町ニ41番地
面積
113.20平方キロメートル
人口
62,720人(2023年10月1日現在)
URL
https://www.city.kaga.ishikawa.jp/
取り組み

石川県の南西部に位置し、「加賀温泉郷」と言われる山代、山中、片山津の3つの温泉地、九谷焼・山中漆器など、歴史と伝統文化が息づくまち。近年では、全国に先駆けてスマートシティに取り組み、北陸初の国家戦略特区に認定されている。

一覧に戻る

Language