神戸新交通株式会社 様

新交通システムの安定稼働を担う高信頼な ネットワーク基盤の構築

1981年に我が国で最初に無人運転での営業を開始した新交通システム「ポートアイランド線」をはじめとする2路線を運営する神戸新交通株式会社。同社では、駅の自動改札機や自動券売機など、駅務機器の基盤となるネットワークの更新を実施。アライドテレシスのネットワーク機器を導入し、安定した、止まらないネットワークの構築を実現した。(2014年12月公開)

業種・業務
公共インフラ
ソリューション
スイッチソリューション VCS
導入製品
コアスイッチ エッジスイッチ
導入目的
ネットワークの改修・増築・刷新 運⽤・管理の向上 安定稼働・安定通信 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 データ保全

コンピューターの高度利用を推進する新交通システム

 神戸新交通株式会社は、三宮駅と神戸空港駅を結ぶポートアイランド線、住吉駅とマリンパーク駅を結ぶ六甲アイランド線の2路線の新交通システムを運営する鉄道会社。新交通システムは、地下鉄とバスの中間の輸送力をもつ中量軌道輸送システムで、安全、快適、低公害でコンピューターの高度利用による自動化、無人化を追求した都市型の交通機関だ。交通需要の増大に伴う交通渋滞や排気ガス、騒音など、既存のシステムで解決できない問題を解決し、新しい都市交通需要に対処することを目的としている。
 神戸新交通株式会社 総務部 営業推進課 駅務機器担当係長の森口徹也氏は、「コンピューターの高度利用による自動化、無人化の追求ということで、現在はICカードの普及、利用促進を進めています。当社ではICカードとしてPiTaPaカードを採用していますが、2014年の3月からは交通系ICカードの全国相互利用サービスに対応しました」と話す。
 ICカードは従来の磁気式の切符とは異なり、読み取る側の機械が駆動機構を必要としないため故障の心配も少なく、利用客への迷惑もかかりにくいというメリットがある。また、電子決済のため処理が自動化でき、事務側の工数を削減することも可能だ。現在、同社の各駅におけるICカード対応率は30%程度だが、今後2年のうちに50%以上を目標に対応を進めていく予定という。
 加えて、さらなる輸送力の増強にも注力している。森口氏は、「神戸医療産業都市構想のもと、ポートアイランドへの医療関連企業の進出が続いていますし、大学をはじめとする教育機関の進出も多くあります。当社にはさらなる輸送力の増強が求められていますので、今後も期待に応えていきます」と話す。

データ量増加への対応とサポートの充実を求め、駅務機器ネットワークの更新

 今回、神戸新交通で行われたのは、駅務機器ネットワークの更新だ。駅務機器とは自動改札機や券売機、精算機など、駅で利用される業務用機器のことを指す。今回更新されたのは、それら駅務機器が接続されているネットワークということになる。
 「当社で初めてネットワークを導入したのは電力監視のためのシンプルなもので、その後、2005年に本社と各駅を結ぶ本格的なLANを構築しました。それが駅務機器ネットワークです。今回、このネットワークの更新を初めて行いました」と森口氏は話す。
 今回の更新は、ネットワーク保守とデータ量増加という2つの問題に対応するために実施されることになった。
 更新の検討が始まったのは2010年のことだ。「ネットワーク機器のサポート、保守に少々問題があったことが更新理由の1つです。そしてもう1つ大きな理由が、データ量の増加に対応できるネットワークが必要となってきたことです。自動改札機のICカード対応が進むにつれて、ネットワークを流れるデータ量が増え、さらにICカードの全国相互利用も控えていました。加えて、カメラ付きの自動券売機の導入も検討されており、それらがネットワークを圧迫することが想定されていました」と森口氏は振り返る。
 神戸新交通の各駅は基本的には無人化されており、切符販売のサポートなどは本社の司令室からリモートで行われている。券売機にカメラを付けることでサポートをさらに充実させるとともに、防犯の効果も高めるという狙いだ。また、新たな券売機ではあわせて装備されているインターホンもIP化されるということで、これもネットワークを圧迫する原因となることが予想されていた。

鉄道事業者に求められる“止まらないネットワーク”を構築

 ネットワークの更新についての検討が行われ、入札を実施。最終的に選ばれたのが、アライドテレシスのネットワーク機器によるネットワーク更新を提案した、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社だ。
 同社 フィールドサービス事業本部 関西第一支店 神戸テクノセンタの三谷博和氏は、「神戸新交通様から提示された要件をクリアしていることに加え、国内メーカーとしての手厚いサポートやコストパフォーマンスの高さを重視して、アライドテレシスのネットワーク機器を提案しました」と語る。
 コア・スイッチにアライドテレシスの10ギガビットイーサネットスイッチ「AT-x610シリーズ」をVCS(※1)機能で2台スタック接続して冗長性を高め、各エッジにはギガビット・インテリジェント・スタッカブルスイッチ「AT-x510シリーズ」を配置するという構成の提案だ。「以前のコアスイッチはシャーシ型が1つで、電源冗長のみでしたが、VCS機能による冗長化でさらに可用性を高める構成です」と三谷氏は話す。
 神戸新交通の駅務機器ネットワークはリング型の構成となっている。本社と各駅を個別に結ぶのではなく、各駅を含むリング型のネットワークとし、大規模ながらもシンプルで高速切り替えが可能なネットワーク構成だ。ポートアイランド線側のネットワークは2つのリングで本社のコア・スイッチに、六甲アイランド線側は1つのリングで南魚崎の管制センターのコア・スイッチに接続されている。
 「当初は既存のリングにさらにもう1つリングを構築し、冗長性を高めるご提案を行っていたのですが、工期などの観点から今回は難しいということで既存の回線をそのまま活用し、機器のみを更新しています」と三谷氏。回線はそのままではあるが、リングのプロトコルを従来のSTPからRSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)に変更し、通信停止時間をより短くし、ネットワークの安定性を高めている。


※1 VCS(Virtual Chassis Stack):専用のスタックケーブルで複数台のxシリーズを接続することで、仮想的に1台のスイッチを構築する技術。シンプル且つ拡張性に優れた負荷分散型の冗長ネットワークを簡単に構築することが可能となる。

ネットワークの安定稼働と“安心感”が更新の効果

 オムロン フィールドエンジニアリングでの実機検証を経て、ネットワーク機器の更新が行われた。作業は電車の動かない深夜に行われ、「切り戻しも想定していましたが、予想以上にスムーズに切り替えが完了しました」と三谷氏が話すように、2014年4月までにトラブル無く全ての機器の更新が完了した。
 「更新と並行して、交通系ICカードの全国相互利用サービスへの対応が始まり、カメラ付きの券売機の導入も始まりましたが、ネットワーク機器は順調に稼働しており、また通信が遅延するようなこともありません」と森口氏は話す。
 安定稼働が第一の効果ではあるが、安心感も今回の更新での大きな効果と森口氏は言う。「以前のネットワーク機器はサポート面で問題がありまして、なにかあった時にも対応に数日かかってしまうということもありました。私たち鉄道事業者は、多くのお客様の ご迷惑となってしまうようなシステム停止だけはなんとしても避けなければなりません。そういう面で、国内のベンダーとしてサポートも手厚いアライドテレシス製品を導入できたことが大きな安心感に繋がっています」と森口氏は話す。
 加えて今回、ネットワークの監視に、アライドテレシスのネットワークマネージメント・ソフトウェア「Swim Manager」を導入。以前の監視システムは「ネットワークの死活くらいしか分からない」(森口氏)というものだったが、Swim Managerの導入により、さらに詳しいネットワーク監視ができるようになった。
 「使い勝手の面でアライドテレシスには色々と協力してもらいまして、高機能な監視ソフトウェアを導入することができました」と三谷氏は話す。

ますます増大していくデータに対応するためにネットワークの強化を続ける

 カメラ付き券売機の一層の導入推進をはじめ、ネットワークの重要性はますます高まっていく。神戸新交通ではさらなるネットワークの強化に取り組んでいく。
 「今回導入した機器はどれも10ギガビットイーサネットにも対応しており、将来の拡張性も見据えたものとなっています。今後も駅務機器ネットワーク強化のサポートを続けていきますとともに、その他のシステムやネットワークに関してもご協力させていただけるよう、これからも神戸新交通様の支援をさせていただきます」と、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション営業部 PSソリューション営業課の井上和彦氏は話す。
 森口氏も「カメラ付き券売機が増えていくことでますますネットワークの負荷も高まります。また、鉄道業界では車内カメラの設置なども進んでいますし、これからもネットワークは強化していかなければなりません」と話す。
 最後に森口氏に今回の更新プロジェクトの評価と今後の展望を聞いた。
 「今までに比べ、格段に信頼性の高い製品を導入することができました。今後もアライドテレシスには手厚いサポートを期待しています。鉄道事業者としてお客様にご迷惑をお掛けしてはなりませんので、サービスの基盤となるネットワークは非常に重要です。今後も安定して止まることのないネットワークを構築、運用していきます」と森口氏は語った。
 安全・快適・低公害な新交通システムによる鉄道事業の展開を通じて、地域の都市機能の向上に寄与する神戸新交通。そのネットワークインフラをアライドテレシスが担っている。

導入ネットワーク構成イメージ図

導入企業基本情報

お客様プロフィール

神戸新交通株式会社
総務部 営業推進課
駅務機器担当係長
森口 徹也氏

会社名
神戸新交通株式会社
所在地
神戸市中央区港島6丁目6番地の1
創立
1977年7月18日
代表者
代表取締役社長 吉武 準一
URL
https://www.knt-liner.co.jp/
取り組み

新交通システムを運営する鉄道事業者。現在、ポートライナー(ポートアイランド線)と六甲ライナー(六甲アイランド線)の2つの新交通システムを運営。神戸市総合基本計画における総合交通体系の一端を担い、市民の交通の利便を確保し、事業の円滑な運営を図る。

パートナー企業基本情報

お客様プロフィール

オムロン フィールド
エンジニアリング株式会社
フィールドサービス事業本部
関西第一支店 神戸テクノセンタ
三谷 博和氏

会社名
オムロン フィールドエンジニアリング株式会社
所在地
東京都目黒区三田一丁目6番21号
設立
1970年7月
資本金
3億6000万円
URL
https://socialsolution.omron.com/field-engineering/
取り組み

全国140箇所の拠点と1,200名のカスタマエンジニアによるサービスネットワークを構築し、エンジニアリングサービス/フィールドサービス/バックアップサービスを全国のお客様に24時間365日提供する。

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