地方独立行政法人 佐賀県医療センター好生館 様
- 目 的
- 病院内Wi-Fiの整備 患者用Wi-Fiの整備 無線LANの導入 ネットワークの安定稼働 運用・管理の効率化 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 運用・管理・監視を外部委託 業務効率の向上
- プロダクト・サービス
- 無線LANアクセスポイント AWC スイッチ VCS Vista Managerシリーズ Net.AMF ルーター UTM&VPN Net.Monitor
- 規 模
- 100~499
長い歴史と伝統を持つ、佐賀県の中核的医療機関
佐賀県医療センター好生館は、佐賀中部医療圏(人口約35万人)に位置する佐賀県唯一の地方独立行政法人の病院だ。佐賀県の中核的医療機関として地域医療連携にも力を入れており、佐賀県診療情報地域連携システム(ピカピカリンク)に参加、運営協議会の事務局も務める。ピカピカリンクは、かかりつけ医と中核医療機関で診療情報を共有する仕組みだ。
昨今のコロナ禍においては、佐賀県の医療提供体制もひっ迫の度合いを増している。そのような中、佐賀県医療センター好生館では、県民に対するワクチン接種の早期完了を支援するため、自治体が実施する集団接種への協力を行っている。「ワクチン接種も急性期医療機関として果たすべき役割と考え、佐賀市が実施する65歳以上の高齢者の集団接種の一部を引き受けています。当院の多目的ホールを接種会場とし、佐賀市の職員と連携しながら、医師、看護師、薬剤師などが接種に当たっています」と語るのは、佐賀県医療センター好生館 医療情報部 課長補佐の長友 篤志氏だ。
ダウンタイムを最小化するネットワークを目指す
佐賀県医療センター好生館では、医事会計システムからオーダリングシステム、PACSなど段階的な病院情報システム化を進め、2007年4月には電子カルテシステムを導入した。当時のネットワークはシステムの導入に合わせて段階的に強化してきたため、全体像を正確に把握できず「ブラックボックス」とも言える状況であった。「ネットワークにトラブルが発生しても、どこが原因かをすぐには突き止めることができませんでした」と振り返るのは、佐賀県医療センター好生館 医療情報部医療情報係 係長の中山 佳郎氏だ。
2013年5月には佐賀市嘉瀬町の現在地に病院が新築移転。各システムとともにネットワークも再構築した。旧病院での反省からスタッフにも十分なヒアリングを実施し、院内のネットワーク需要に一元的に対応できる統合ネットワーク環境を構築した。しかし、その統合ネットワークには監視の体制や障害時の対応について課題があったという。
「新病院への移転後はそれほどネットワークに障害などが発生したわけではありませんが、もし何かあった際には通報メールが届き、保守員が来院し、そこから障害の切り分けと対応が始まるといった具合で、解決や復旧に時間が掛かってしまっていました」と長友氏。
2020年、その統合ネットワーク環境を支えるネットワーク機器について更新を行うこととなった。なお、更新はネットワークだけでなく、サーバーなどのハードウェア、アプリケーションなども含む大規模な更新である。
ネットワークの更新について特に重視したのは可用性だ。ネットワークは患者の生命に関わる病院情報システムを支えるインフラであり、高い可用性を備える必要がある。冗長化を考慮するとともに、サービスのダウンタイムを最小限に抑えることを目指して検討を進めた。
Net.AMFにより有線/無線を問わず可用性、運用管理性を向上
佐賀県医療センター好生館が新たなネットワークに採用したのがアライドテレシスの提案だ。アライドテレシスでは、ネットワークの可用性、運用管理性を向上する「Net.AMFスタンダードサービス」を提案。Net.AMFは、ITインフラ管理機能をクラウドサービスとして提供する。スタンダードサービスでは、各機能に加えてNet.Monitorの各サービスを組み合わせて利用できる。これにより運用管理の簡素化だけでなく、リモート監視・予兆検知による障害・トラブルの未然防止や早期復旧など、ITインフラの安定運用をトータルに支援する。
今回のNet.AMFスタンダードサービスでは、AMF(Autonomous Management Framework)、AWC(Autonomous Wave Control)、AT-Vista Manager EXの機能をクラウドサービスとして提供している。AMFは複数のネットワーク機器の一括設定や一括アップデート、遠隔地からの管理・設定変更、事前設定不要の機器交換といった運用を可能とする機能。AMFの導入により運用・管理工数とコストの大幅な削減、障害時の自動復旧を実現する。AWCはアクセスポイントそのものをインテリジェント化してチャンネルや電波出力を自律的に調整。無線エリア内の電波干渉を最小化することで、快適に利用できる無線LAN環境を実現する。AT-Vista Manager EXはネットワークの統合管理ソフトウェア。有線/無線を問わずさまざまなデバイスもグラフィカルに集約して一元管理を可能にする。
これらAMF管理機能やAWC機能、AT-Vista Manager EXをクラウド上から自由に利用することができ、万一の障害時にはNet.Monitorのリモート監視サービスにより、能動的な切り分けを実施し、クラウド環境を含めたITシステムの安定運用を支援する。
「一番評価したのは高い可用性です。特に、機器を差し替えるだけでコンフィグが自動的に投入されて復旧するAMFには非常に魅力を感じました」と長友氏。目指していた可用性の高いネットワークに合致する提案だったと評価している。
“ハイブリッド型二要素認証”により院内のVDIにセキュアにアクセス
そのほかにもアライドテレシスを採用したポイントがいくつかある。佐賀県医療センター好生館では以前のネットワークから、患者用のフリーWi-Fiを提供していたが、ネットワーク構築後に増設したため、必ずしも快適とは言えなかった。今回の更新ではあらかじめ患者用のフリーWi-Fiを含めたネットワークの提案・設計を受け、コロナ禍により面会が制限される中で患者に日常の世界(家族や友人、娯楽、仕事など)と快適に「つながる」環境を提供できていると評価している。
今回の更新のタイミングで佐賀県医療センター好生館では、佐賀県からの依頼により、看護師養成所(看護学院)を引き継いで附属化することとなった。そこで県が敷設していたネットワークは撤去し、アライドテレシスがネットワークを提案、構築を行った。VPNを活用し、病院の統合ネットワーク環境を看護学院まで延伸して一括で管理する構成だ。教室や図書室、寄宿舎などに無線LANアクセスポイントを新規で設置し、電子教科書にも対応したインターネット環境を完備、スタッフだけでなく生徒にも快適なインターネット環境を提供している。
そして、実際に運用負荷の軽減に繋がったと評価しているのが無線LANの認証に関する提案だ。佐賀県医療センター好生館では従来、学術系ネットワーク(スタッフ向けのインターネット系ネットワーク)の無線LANへの接続にMACアドレス認証を使っており、アドレスの登録や変更などの運用に大きな負荷がかかっていた。そこでアライドテレシスは学術系ネットワークの認証にPEAP(認証サーバーと端末で相互に証明書での認証を行う方式)を提案。「年度初めは人の異動も多く、MACアドレスの登録に膨大な工数が掛かっていましたが、PEAP認証により大幅に工数を削減できています」と中山氏は評価する。PEAP認証は学術系ネットワークへの接続用にActive Directoryを介するかたちで構築されている。なお、医療サービスの基盤となるHIS系ネットワークに関しては以前より継続して証明書認証を利用している。
加えて、リモートから病院情報システムのVDI(Virtual Desktop Infrastructure)へセキュアにアクセスする方式にも証明書を利用。アクセスにあたっては二要素認証を実装している。「当院では"ハイブリッド型二要素認証"と呼んでいます。IDとパスワードに指紋認証を組み合わせた認証と、IDとパスワードにワンタイムパスワードを組み合わせた認証の2種類を併用しています。手術室など手袋を外せない場所があることや、昨今のコロナ禍により防護用の手袋を外せないケースも多いため、IDとパスワードにワンタイムパスワードを組み合わせた認証も多く利用されています」と長友氏。
拡張性の高さ、運用支援についても高く評価
今回の新ネットワークでは、ルーターは「AT-AR4050S」に更新。コア・スイッチとして「SwitchBlade x8112」を、サーバースイッチには「SwitchBlade x908 GEN2」を冗長化して設置している。フロア・スイッチやエッジ・スイッチには「CentreCOM x530Lシリーズ」「CentreCOM x230シリーズ」、タップスイッチとして「CentreCOM GS908S-TP V2」も導入。無線LANアクセスポイントは「AT-TQ5403」を約330台設置した。加えて、看護学院にもアライドテレシスのアクセスポイント、スイッチを導入している。
導入後は大きなトラブルなどもなく、安定してネットワークは稼働している。長友氏は、「導入後に複数の新規情報システムの導入がありましたが、既存の機器の設定変更だけでネットワーク対応は完了し、拡張性が十分に考慮された統合ネットワーク環境だと改めて感じました」と語る。
今回の導入では、ネットワークの活用範囲も拡大している。例えば、人工呼吸器等の医療機器の設定データをネットワーク経由で電子カルテシステムに送信している。これにより、これまでは目視確認だった現在の設定値が重症チャート上ですぐに分かるようになっただけでなく、自動的にデータを集めるため工数の軽減、転記ミスも防ぐことができている。
Net.Monitorによる監視、運用支援についても、「当院は人の動きも多く、部門や諸室の新設などもあるため、ネットワークの設定変更もしばしばあります。そうした際の支援では、設定変更の対応に加えてドキュメントもしっかりと更新し、アライドテレシスの方でも状況を把握してくれるので助かっています」と言う。またNet.Monitorのポータル画面でネットワークの状況を容易に把握できるため、安心して運用できていると評価している。
佐賀県医療センター好生館では、今後も病院の統合ネットワークを高い可用性のもと運用を続け、さらにセキュリティの強化など、充実させていく。
「医療機関を狙うサイバー攻撃が増加し、国内の病院でもランサムウェアの被害が報告されています。こうした攻撃に対する備えを一層確実なものとするセキュリティ対策を講じていきたいと思っています。また院内の音声電話環境のIP化なども、検討していくつもりです」と長友氏は語った。
アライドテレシスではこれからも佐賀県医療センター好生館のネットワークを、製品や技術、サポートの提供を通じて積極的に支援していく。
導入ネットワーク構成イメージ図
導入企業基本情報
地方独立行政法人
佐賀県医療センター好生館
医療情報部
課長補佐
長友 篤志氏
- 病院名
- 地方独立行政法人 佐賀県医療センター好生館
- 所在地
- 佐賀市嘉瀬町大字中原400番地
- 開設
- 1896年
- URL
- https://www.koseikan.jp/
- 病床数
- 450床
- 理事長
- 桐野 髙明
- 館長
- 佐藤 清治
佐賀中部医療圏に位置する病院。2010年度に地方独立行政法人化。県民医療の最後の砦として、3次救急医療、がん・脳卒中・循環器系疾患など高度・専門医療、政策医療等を提供。診療科数35科、職員数1,208人(2020/4/1現在)、2019年度退院患者数13,296人。