神戸市立医療センター中央市民病院 様
<医療DX>700床規模の大病院が約60の部門システムを仮想マシンとして基盤構築。全国1位の“断らない救急医療”を支える安定したICT基盤を実現
救命救急の最前線に立つ神戸市立医療センター中央市民病院。その医療体制は、基幹となる電子カルテシステムと多くの部門システムで構成される情報基盤の安定稼働により支えられている。しかし、長年使用してきたサーバー仮想化基盤の老朽化が課題に。一般競争入札による調達コストの適正化、将来を見据えたHCIの導入、そしてリモートメンテナンスや監視体制の強化――。救急医療の最前線を止めないための基盤づくりが、どのように進んだのかを、現場の声とともに紐解いていく。
- 目 的
- リモートアクセス回線集約 ネットワークの安定稼働 サーバーの仮想化 運用・管理の効率化 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 運用・管理・監視を外部委託 業務効率の向上 BCP対策
- プロダクト・サービス
- スイッチ VCS HCI Net.Monitor
- 規 模
- 500~999
- 課 題
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・旧来基盤の経年劣化に伴う障害発生と全面更新の必要性
・物価・人件費高騰に伴う更新コストの抑制
- 採用ポイント
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・サーバー仮想化基盤の豊富な構築経験と提案力
・HCIの柔軟な拡張性と段階的な更新による長期運用の実現性
- 効 果
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・約60システムの再集約による基盤統合と運用負荷の軽減
・一般競争入札(総合評価落札方式)によるコストバランスのとれた最新技術の導入
診療を止めないために──仮想化基盤更新の仕様策定とベンダー選定
神戸市立医療センター中央市民病院は、厚生労働省の「全国救命救急センター評価」で11年連続全国1位を維持している。救命率という“質”と、膨大な救急受け入れ件数という“量”を同時に高水準で達成し続ける病院は多くない。「患者さんを断らない」という使命のもと、24時間365日、重症患者を受け入れ続ける同院にとって、情報システムの安定稼働は文字どおり生命線といえる。
更新前、各部門が利用する仮想化基盤は従来型のハイパーバイザー方式で構成されており、物理サーバー上に複数の仮想環境を集約する形で運用されていた。当初は「ハードウェアだけ交換できれば延命できる」「ソフトはそのまま引き継げるはず」と考えていたものの、導入から7年目にはHDD やメモリの劣化による障害が頻発。さらに各部門ベンダーからは、OSの仕様上、旧環境をそのまま移行することはできないとの回答があったため、結果としてハードウェア更新ではなく、ソフトウェアを含めた全面更新を実施することとなった。
調達先となるベンダーは一般競争入札で選定することに。価格と品質のバランスを鑑み、技術力・提案力を総合的に評価する「総合評価落札方式」を採用し、基盤構築と7年間の保守を調達範囲とした。仕様書などの入札書類は、大塚氏と藤井氏が中心となり、情報企画課内および関係部署で時間をかけて協議・調整したうえで公告した。
大塚氏は当時をこう振り返る。「調達先となるベンダーには仮想化の技術力を重視し、実績は金融、流通、建築など他業種におけるものであっても構わないとしました(医療機関での実績があればさらに評価)。仮想化技術は医療限定の特殊なものではない(一般的に“医療”と名がつくと高額になりがちだが、仮想化はむしろ他業界ではすでに広く用いられている基本技術である)ので、医療に限定せずに門戸を広げたほうが、より多くの技術力のあるベンダーが参加でき、競争原理が働き費用も抑えられると考えました」。
法人本部の医療DX専門官であり、医師としてユーザー側の立場でもある藤原氏は、現場で感じていた課題を次のように語る。「システムが止まった際に、原因や復旧見込みなどの情報が下りてこないことは、医療スタッフにとって心理的負担や不安の要因になります」。急性期医療の現場ではシステムの停止が診療そのものに影響するため、仮想化基盤は止まらないことが必須だった。
こうした状況を背景に、総合評価方式(価格点と技術点を組み合わせた総合点に基づいて評価)による入札を実施し、アライドテレシスが選定された。落札後の構築フェーズでは、丁寧なヒアリングや要件整理、他ベンダーとの調整まで踏み込む対応力が高く評価された。
将来の運用負荷に備えた選択──Nutanix HCIで約60システムを再集約
アライドテレシスが仮想化基盤として提案したのは、NutanixのHCI(ハイパーコンバージドインフラ)である。サーバー、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアを一つのパッケージとして統合化したもので、ハードウェアの劣化の際にHCIでは部分的に交換が可能だ。必要な機器だけを段階的に更新することで、理論的にはこれまでの5年から7年ごとの更新が不要になり、運用コストの観点でも有効と評価された。さらに、稼働中のシステムを止めずにリソースを追加できるスケールアウト型の構成は、患者数や部門システムの増加に柔軟に対応できる点も特長だ。
藤井氏は、アライドテレシスによる新基盤構築作業を振り返り、次のように話す。「キックオフミーティングから始まり、毎月の定例会を対面で開催しました。アライドテレシスは仕様書の細部まで読み込み、提案通りの丁寧なヒアリングと要件整理を行っていただきました。また、課題や懸案が発生した場合には随時 Web ミーティングを行い、解決に向けて一致協力する関係性を築くことができました。おかげさまで、旧基盤からの切り替えはとてもスムーズでした。電子カルテシステム更新と同タイミングでしたので、当院の事務負担は大きかったですが、切り替え後の達成感と安堵感はひとしおでした」。
今回の更新では、従来の仮想化基盤上の部門システムのほか、物理サーバーで運用していた複数の部門システムも含めて統合管理に移行した。サーバー監視には仮想化基盤用の統合管理ツール「Nutanix Prism」が用いられており、システム全体の状態をひと目で把握できる。障害の兆候があった場合も速やかに通知される仕組みが整っており、稼働開始以降、大きなトラブルは発生していない。
基盤が一元的に管理できるようになったことで、運用の見通しが立てやすくなった点も大きい。複雑だった部門システム群を整理し、統合管理しやすい基盤へ移行したことは、医療現場の継続的な運用を支えるうえでも確かな効果をもたらしている。
外部脅威への備えを強化──メンテナンス用回線の集約で安全性と運用性を向上
今回、同院は新しい仮想化基盤の導入に合わせ、部門システムベンダーごとに分散していたリモートメンテナンス用回線を統合した。医療機関では、遠隔保守のために開放された複数の通信経路が、外部から内部ネットワークへの“抜け道”となり得ることが懸念されている。近年は医療機関を狙ったサイバー攻撃も増加し、従来の閉域網への過信を見直す動きが院内でも強まっていた。山口氏は「独立した回線が多数存在し、どこから外部とつながっているのか把握しきれず、セキュリティリスクになっていました」と振り返る。
この課題に対応するため、同院はアライドテレシスのリモートメンテナンスパック(リモメンパック)を採用。ベンダーごとに複数あった病院との保守回線(出入口)を共通の光回線とVPN装置に一本化することで、病院外からのアクセスを限定し、セキュリティの向上とコスト削減を実現した。さらに運用支援サービス(Net.Monitor)と連携し、機器の稼働状況やアラートを一元的に把握できるようになり、保守作業の効率化にもつながっている。
また、仮想化基盤の更新に伴い、障害対応の運用も整備された。一次対応を行う同院のサービスデスクでは、Nutanix Prismのダッシュボードで全体の状態を常時監視し、軽微な異常でも通知が入るため、状況把握までの時間が短縮された。こうした環境整備により、監視体制の強化とアライドテレシスとの迅速な情報共有が実現できている。
システム停止が診療に直結する現場にとって、“見える化された情報”が提供される意義は大きい。仮想化基盤の更新が単なる性能向上にとどまらず、現場の心理的負担の軽減にも寄与している。
今回の調達にあたっては落札ベンダーがシステムインテグレーター(System Integrator)となり、部門システムベンダーとの調整を行うことが仕様に盛り込まれた。アライドテレシスはこれに応え、工程管理だけでなく、部門システムベンダーとの間で仮想化基盤上でのシステム構築の支援や構築期間の調整、バックアップシステムの支援など期待以上の精力的な働きにより、遅滞なく構築を進めることができた。仮想化基盤の更新プロジェクトは、折しも電子カルテの更新をはじめ複数の案件が並行するタイミングで進行した。システム側の作業が集中しやすい時期であったが、ベンダーとの役割分担が明確になったことで、病院側としては業務負荷を抑えることができたという。
現場の負荷を減らすための現実的アプローチ──最適な手段を見極める病院の姿勢
医療分野におけるDXそしてAI活用が注目されているが、同院では「まずは何を効率化すべきか、業務の棚卸しが先」という慎重な姿勢が、情報企画課長 山口氏より語られた。
「医師が看護師からも、事務作業や紹介状の下書きなどの業務をAIである程度省力化できないかという声は上がっています。一方で、それらを実現する市販製品は機能別に提供されている場合が多く、導入には個別にサーバーを立てる必要があるなど、まだまだ現実的な課題が大きいです。しかし業務を部分的に補助する手段として、ノーコード系ツールの活用の可能性もあり、今後も業務改善の手段は常に考えていきたいです」。
今回の仮想化基盤の更新では、一般競争入札(総合評価落札方式)によるコストバランス、HCIを軸とした将来の拡張性確保、そして複雑化していた部門システムの再集約が実現した。患者を断らない医療を掲げる同院にとって、情報システムの安定は医療の継続性に直結する。今回の取り組みは単なる設備更新にとどまらず、「断らない救急医療」を支える基盤として大きく寄与していくといえるだろう。
導入ネットワーク構成イメージ図

導入企業基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科
法人本部DX推進課
藤原 敬三氏

事務局情報企画課
法人本部DX推進課
山口 健司氏

事務局情報企画課
法人本部DX推進課
大塚 博幸氏

事務局情報企画課
医療情報係
藤井 氏
- 病院名
- 地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院
- 所在地
- 神戸市中央区港島南町二丁目1番地の1
- 病院長
- 木原 康樹
- 開設
- 1924年(市立神戸診療所として開設)
- 病床数
- 768床
- 標榜診療科目
- 34科
- URL
- https://chuo.kcho.jp/
神戸市中央区ポートアイランドに位置する神戸市立医療センター中央市民病院は、神戸市民病院機構を構成する基幹病院として、地域の高度急性期医療を担っている。700床規模、34の診療科を備え、救命救急センターを中心に、内科・外科・循環器・脳神経・整形外科・小児・産科など幅広い医療を提供。地域医療支援病院・がん診療連携拠点として、医療・福祉機関との連携にも積極的に取り組み、市民の健康を支える中核的医療機関となっている。







