福井大学医学部附属病院 様
- 目 的
- 病院内Wi-Fiの整備 患者用Wi-Fiの整備 無線LANの導入 ネットワークの安定稼働 通信の改善(高速化・帯域強化) IoT活用 運用・管理の効率化 セキュリティの強化 業務効率の向上 BCP対策
- プロダクト・サービス
- 無線LANアクセスポイント AWC AWC-CB スイッチ EPSR Vista Managerシリーズ AMFPLUS CLOUD
- 規 模
- 500~999
- 課 題
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・最新技術の対応強化と継続的な運用改善
・医療現場に最適な電波環境の整備
- 採用ポイント
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・運用を自動化する統合管理技術
・可用性を高める経路の冗長設計
・シングルチャンネル方式により電波干渉を回避
- 効 果
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・運用負荷の軽減と業務効率を向上
・安定した医療IoT基盤を実現
・サイバー訓練および非常時対応体制を強化
最新技術も積極的に取り込んで、医療現場の高度化と効率化を推進
福井大学医学部附属病院(以下、福井大学病院)は、福井県吉田郡に位置する高度医療機関である。福井大学 医学部の教育・研究機関としての役割を担いながら、地域の中核病院として先進的な医療を提供している。診療科は幅広く、がん治療、循環器疾患、救急医療などの専門分野において高度な医療技術を提供。研究と臨床の両面から医療の発展に貢献している。
福井大学病院は近年、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進。「とくにIoTの活用に注力しています」と語るのは、同病院 医療情報部 副部長で准教授の山下 芳範氏だ。医療機器のリアルタイムなデータ収集や遠隔モニタリングなど、最新技術を積極的に取り入れ、医療現場の高度化と効率化を実現している。またサーバーのクラウド化も積極的に進めており、一部の医療機器系を除き、ほぼすべての基幹系サーバーがクラウド上で稼働している。
ネットワーク統合で運用管理を簡素化
福井大学病院は2024年にネットワークを更新。当時抱えていた課題について、「新しい機能を盛り込んでいかなければならないと考えていた」と山下氏。新たな技術を取り込み、これまで利用してきた機器や機能も強化して、さらに医療の質や安全性、業務効率性などを高めていくことを目的にネットワークは更新された。
その一つがSDN(Software Defined Networking)の活用によるネットワーク管理負荷の低減だ。アライドテレシスのAMF(Autonomous Management Framework)を導入し、ネットワーク全体を仮想的に単一基幹網として統合管理。運用の自動化により大幅な業務効率の向上を実現した。またAMFと連携し、ネットワークの統合管理に必要な機能をパッケージ化した「VST-APLシリーズ」も導入。ネットワーク全体をマップやグラフで可視化することで、直感的に把握できる環境を構築した。「冗長化されたネットワークは障害が発生しても運用を継続できますが、故障機器は早急に交換が必要です。だからこそ“誰でも管理できる”環境が重要です」と山下氏。実際に情報部門では運用負荷の軽減を体感しているという。
なおネットワーク設計では、フロアスイッチと経路の冗長化に加え、EPSR(Ethernet Protected Switched Ring)を導入。EPSRはリング状に構成されたネットワークで、仮に一部の経路に障害が発生しても自動的に検知し、経路を逆方向に切り替えることで通信を継続できる仕組みだ。これにより配線がシンプルになるだけでなく、障害発生時にも業務への影響を最小限に抑え、ネットワークの可用性と信頼性を高める。
シングルチャンネル方式で電波干渉を防ぐ
院内のWi-Fi環境には、アライドテレシスのAWC-CB(Autonomous Wave Control-Channel Blanket)を採用している。AWC-CBは、エリア内で単一のチャンネルを用いるシングルチャンネル方式で、電波状況が変わりやすい場所でも、単一チャンネルのため電波干渉を考慮する必要はない。「IoTを実現するには絶対に電波干渉が起きますので、電波や周波数などを管理することは必須です」と山下氏。
福井大学病院はこれまでも、シングルチャンネル方式を導入してきた実績があり、「一度採用すると他の選択肢は選べません」と山下氏が語るように、今回の更新でもシングルチャンネル方式の無線LANアクセスポイントを選定。電波干渉を防ぐとともに、チャンネル設計・調整の煩雑さを解消している。
現代の医療機器はWi-Fi接続が前提であり、その安定性は医療の安全と直結する。「電波環境が不安定だと、Bluetooth機器にも影響を与えてパフォーマンスが低下します」と山下氏。こうした課題に対応するためIoTゲートウェイ(中継機)も含めたWi-Fi環境のインフラを整備。さらにPHSの後継として無線通信サービス「sXGP(*)」も導入しており、「5Gの本格運用を視野に入れ、今後も機能拡張を進めていきます」と語る。病院内ではLTEも併用されており、適切な電波環境整備は継続的な課題だ。
ネットワーク更改後も「AWC-CBは全く問題なく使えており、IoT機器への影響もみられません」と山下氏は高く評価している。
* sXGP(shared eXtended Global Platform):企業が自社で専用の通信ネットワークを構築できる通信規格。免許不要で高いセキュリティを提供し、広範囲をカバー可能。
IT-BCP強化と非常時対応体制の構築
近年、IT-BCP(ITシステムに特化した事業継続計画)が医療現場でも重要視されている。2024年6月には厚生労働省が「サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)策定の確認表」を公開し、医療機関にも対応が求められている。福井大学病院でもこれまで、地震など災害時のBCPを策定して訓練を実施してきたが、新たにサイバー攻撃を想定したマニュアルを整備し、実践訓練も行っている。「今回初めて、サイバー攻撃発生を前提とした訓練を実施しました。初動対応から復旧までの一連の流れを経験し、非常時にも医療が止まらない体制を強化しています」と山下氏。
最後に展望を伺った。「今後はすべてがワイヤレス化されていくと感じています。IoTだけでなく、蓄積された情報を活用して医療の質向上に繋げたいと考えています。周波数帯域をさらに拡張したいところですが、医療現場では古い規格の機器も多く、そこが課題です。引き続き新しい技術開発を期待しています」。
アライドテレシスはこれからも、製品や技術、サポートの提供などを通じて、福井大学病院のITインフラを積極的に支援していく。
導入ネットワーク構成イメージ図
導入企業基本情報
福井大学医学部附属病院
医療情報部 副部長
准教授
山下 芳範氏
- 病院名
- 福井大学医学部附属病院
- 所在地
- 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3
- 開院
- 1983年
- 代表
- 病院長 大嶋 勇成
- 病床数
- 600床
- URL
- https://www.hosp.u-fukui.ac.jp/
「最新・最適な医療を安心と信頼の下で」を理念に掲げ、福井県内唯一の特定機能病院として、日々、最先端医療の研究・開発・実践に努め、難治性の病気の克服に挑戦し続け、最適の医療を提供する最も信頼できる病院を目指す。
※病床の内訳:一般病床559床、精神病床41床