学校法人ものつくり大学 様
数億円規模のコスト削減と全域Wi-Fi化を両立させた就職率95%超の工科系大学の情報基盤戦略─モバイル前提の学習環境とSINET接続を見据えたネットワーク基盤へ
少子化による経営環境の変化と、BYODを前提とした学習スタイルの定着。高等教育機関を取り巻く状況が大きく変わるなか、学校法人ものつくり大学は情報基盤の抜本的な刷新に踏み切った。有線中心の構成を見直し、無線強化やSINETに必要となる高速通信を軸にキャンパス全体のネットワークを再設計。そのネットワークシステム刷新を支援したのがアライドテレシスである。戦略基盤へと進化した次世代キャンパス環境の取り組みを紹介する。
- 目 的
- キャンパスネットワークの整備 無線LANの導入 ネットワークの安定稼働 通信の改善(高速化・帯域強化) 運用・管理の効率化 働き方改革
- プロダクト・サービス
- 無線LANアクセスポイント AWC スイッチ VCS Vista Managerシリーズ AMF
- 規 模
- 1,000~4,999
- 課 題
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・有線中心の設計で不足するWi-Fiエリア
・機器分散管理による運用負荷と障害対応の遅延
・複数サービス併用による認証管理の煩雑化
- 採用ポイント
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・無線測定に基づくアクセスポイント増設と最適配置設計
・少人数運用を支える一元管理と自動復旧の仕組み
・認証を一本化するSSOとIDaaSの基盤統合
- 効 果
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・全域カバーWi‑Fiで教職員の働き方向上と学生交流の活発化
・障害特定と復旧の迅速化で運用負荷を軽減
・操作性の向上とアカウント関連問い合わせの削減
未来の経営を見据えた“戦略としての情報基盤”
高等教育機関にとって、情報基盤は単なる設備ではない。教育と研究を支える基幹インフラそのものである。とくにBYODが前提となった現在、キャンパスのどこでも安定して高速通信が使える環境は、教育の質を左右する重要な条件となっている。
埼玉県のものつくり大学は、理論と実技を融合した教育を通じて、ものづくりで社会を支えるテクノロジストを育成する私立工科系大学だ。1学部2学科、1研究科で構成され、少人数制による実践教育を展開している。
同大学ではこの理念を支える取り組みとして、「情報基盤更新プロジェクト」を始動。開学以来、有線中心だった構成を抜本的に見直し、キャンパス全体のネットワークを固定型からモバイル前提型へと再設計する次世代情報基盤への転換を本格的に推進した。
このプロジェクトは、「教研システム」「統合認証基盤」「ネットワークシステム」の三領域に分けて進められ、そのうちキャンパス全体の通信基盤を担うネットワークシステム分野の刷新を支援したのがアライドテレシスである。
本プロジェクトでは、ネットワークを単なる設備から戦略的基盤へと再定義し、設計思想そのものの見直しを目標に掲げた。その中でも、性能向上はもちろん、コスト最適化を両立させることも重要なテーマとなっていた。具体的には、BYODを前提としたWi-Fi中心の構成への転換、キャンパス全域での通信死角の解消、そして将来の通信需要を見据えた基盤能力の強化である。また、学術情報ネットワーク、いわゆるSINETで求められる10Gの高速通信を実現しながら、クラウド活用推進、そして自前管理からの脱却による運用負荷の軽減も図っている。
この見直しの背景には、大学を取り巻く経営環境の変化がある。少子化により入学対象人口が減少するなか、固定費の圧縮と管理体制の効率化は避けて通れない課題であった。学校法人ものつくり大学 教務課参与 情報基盤担当の大田 義三氏は次のように語る。「少子化でそもそも高校生が減っている状況です。どこの大学も厳しい環境にあり、固定費を削減していかなければなりません。運用経費や構築費といった固定費の見直しと、管理体制の効率化・省力化が目的でした。小規模大学では専任担当者を置くことが難しいため、可能な限り自動化を進めたいと考えていました」。
BYOD対応のキャンパス全域Wi-Fiが学生の学びとペーパーレス化も後押し
開学当初に構築されたネットワークは、デスクトップPC利用を前提とした有線中心の設計で、現在の全学生がノートPCを持ち歩くBYOD環境とは大きく乖離していた。当時の状況について、「無線LANアクセスポイントは存在していたもののキャンパス全域を十分にカバーしておらず、学生からも“つながりにくい”という声がありました。職員も有線接続が前提で、端末を活用した会議は想定されていませんでした」と大田氏は振り返る。
こうした利用実態との不一致を解消するため、アライドテレシスによる事前調査と無線測定を踏まえ、まずWi-Fi環境の抜本的な強化に着手。無線LANアクセスポイントはAT-TQ6702 GEN2を採用。従来の約50台から190台へと大幅に増設し、設置場所も見直して高所設置へ切り替えることで、通信の死角を解消した。なお今回、無線LANアクセスポイントとの接続にはPoE対応のスイッチを採用しており、配線を簡素化しつつ安定稼働も実現している。利用密度や建物構造に応じた最適配置によって、キャンパス全域でシームレスに使える環境が整った。
なお、強化の効果はすぐに現れた。学校法人ものつくり大学 教務課情報係の森 直樹氏は次のように語る。「無線LANアクセスポイントの台数を増やしたことで、会議室などこれまでWi-Fiが使えなかった部屋でもパソコンを持ち込んで会議ができるようになりました。ペーパーレス化も進み、資料を紙で印刷して配布する必要がなくなり、準備時間を大幅に短縮できました」。
SINETとLAN接続の見直しで大容量データに強い通信基盤へ
基幹となる回線も強化された。全国の高等教育機関が利用するSINETは、従来から強化し10Gbpsへと高速化。これにより、実効通信速度は大幅に向上し、オンライン講義やWeb会議、高解像度ファイルなど大容量データ転送の安定性が飛躍的に高まった。「教員から学会のオンライン配信の相談を受けることがあり、回線が細いと映像が止まる不安がありました。SINETは10Gbpsでも追加費用なく利用できるため、学会開催などのニーズに応えるうえでも重要な基盤になると考えました」と大田氏。
さらに、建物内のLAN配線も刷新した。従来のCat5eから、より太い帯域を扱えるCat6Aへと全面的に入れ替えた。この回線の強化は、高速化したSINETの性能を学内でも余すことなく引き出すための“土台づくり”、そして将来のさらなる高速化も見据えた先行投資となった。
なお今回のプロジェクトにおいて、もともとは“スイッチだけを更新する”計画だった。しかし、設計思想を見直す目標を加味し、アライドテレシスは情報コンセント数の最適化や、無線主体の利用を踏まえたレイアウト変更、さらにはセグメント数を99から約20へ整理する再設計への拡張を提案した。このことで、ネットワークがシンプルで運用しやすい構造となり、同時にLANケーブルや光ファイバーの入れ替えを可能としている。結果、通信の安定性とコスト最適化を両立する基盤を実現した。
管理者・ユーザー双方にメリットが広がる学内ネットワークへ
物理・論理の両面からネットワーク構造を見直し再設計したことで、運用面にも大きな変化が生まれた。今回の刷新では、アライドテレシスの統合管理機能「AMF(Autonomous Management Framework)」を導入し、学内のネットワーク機器を一元的に管理できるようになった。設定の自動配布や障害箇所の可視化が可能となり、従来であれば担当者の経験に依存していた復旧作業も含め、日々の運用がよりシンプルで持続可能な体制となった。
大田氏は「非常に助かっています。スイッチが故障した際も、AMFのおかげで機器を接続するだけで設定が自動反映され、最短で復旧できました。どこに障害が起きているのかも把握できるため、原因特定が迅速になりました」とその効果を語る。
さらに、運用の改善は学生や教職員のユーザー体験の面でも大きな改善を実現している。IDaaSを活用した統合認証基盤(AD/SSO)の導入により、ユーザーは一度のログインで学内の各種クラウドサービスが利用可能となった。再ログインといったユーザーの手間が大幅に削減されただけでなく、パスワード紛失やアカウント関連の問い合わせも大幅に減少している。
こうした改善により、“つながっていて当たり前”の学内ネットワークを無理なく安定して運用できる体制へと近づき、運用者・利用者の双方にとって使いやすい環境が整いつつある。
学生体験向上と伴走支援が描く、ものつくり大学のこれから
学生からの反応は非常に良い。「どこでもWi-Fiに繋げられるようになったことを学生たちは非常に喜んでいます。教室や実習室には自然と学生が集まり、ネットを活用しながら議論している姿も増えました。これまでつながりにくかった場所でも快適に使えるようになりました」と大田氏は手応えを語る。
今回のネットワーク刷新は単なる通信環境の改善にとどまらない。“学びの風景そのもの”を変える効果をもたらした。その背景には、アライドテレシスによる継続的な伴走支援がある。森氏は「運用が始まった後も、不明な点などがあればメールやオンライン会議で都度対応していただいています。柔軟で迅速な対応に非常に助けられています」と話す。大田氏もその姿勢について、「親身になって相談に乗っていただき、ちょっとした要望にも素早く対応していただきました。ポート追加といった、通常ならまずは見積もりから、と時間がかかるような内容にもすぐ動いてくれ、フットワークの軽さをとても心強く感じました。」と語る。技術力だけでなく、こうした現場に寄り添う対応力もまた、今回の基盤刷新を成功に導いた要因となった。
今後について大田氏は、「ネットワーク自体は一段落していますが、周辺校でも高速化が進んでいますので、本学も今後の対応を継続して検討する必要があります。また、生成AIをはじめとした新たなデジタル活用の要望も出ています。ネットワークへの依存度が下がることはないと思いますので、予算の範囲内で段階的に更新を続けていきたいと考えています」と展望を語った。
固定前提からモバイル前提へ。今回の刷新は、ネットワークを単なる“設備”ではなく大学を支える戦略基盤へと再定義する契機となった。アライドテレシスではこれからも、ものつくり大学のネットワーク刷新とその先の発展を支えていく。
導入ネットワーク構成イメージ図

導入企業基本情報

学校法人ものつくり大学
教務課参与
情報基盤担当
大田 義三氏

学校法人ものつくり大学
教務課情報係
森 直樹氏
- 学校名
- 学校法人ものつくり大学
- 所在地
- 埼玉県行田市前谷333番地
- 設立
- 平成13年
- 代表者
- 会長 正井 健太郎 / 理事長 土屋 喜久
基本的技能と「ものつくり魂」を基盤に据え、そこに科学・技術の知識とマネジメント能力を加え、新時代を切り拓く感性と倫理観を備えた人材の育成を目指す。




