香川県三豊市 様
- 目 的
- 自治体三層の対策 ネットワークの安定稼働 クラウドサービスの利活用 運用・管理の効率化 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 運用・管理・監視を外部委託 業務効率の向上
- プロダクト・サービス
- UTM&VPN Allied SecureWAN インターネットブレイクアウト
- 規 模
- 50,000~99,999
- 課 題
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・クラウドサービスが使いにくい三層分離環境
・業務量の増加や働き方の多様化に対応できる環境整備
・セキュリティ確保とインターネット利用の両立
- 採用ポイント
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・三層分離を維持したクラウド利活用モデル
・運用性と拡張性に優れたクラウドUTM
・設計から構築、運用までを一気通貫で行う技術支援体制
- 効 果
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・三層分離のままクラウド活用環境を実現
・職員の業務効率向上と組織全体におけるITツール利活用の定着
・パソコンやスマートフォンから安全にクラウドアクセス
働き方の多様化に向き合い、自治体DXで公務の質を高める三豊市
香川県三豊市は県西部に位置する自治体として、2006年に7つの町が対等合併して誕生した。人口は5万7千人余りで、豊かな自然環境を背景に国内外から多くの観光客が訪れる地域でもある。
しかし近年、三豊市も他の多くの自治体同様にさまざまな社会的課題に直面している。「人口減少や少子高齢化、厳しい財政状況、そして働き方の多様化です」と市の課題を話すのは、三豊市 総務部総務課デジタル推進室 副主任の北岡 千宙氏。
そうした中でデジタル推進室が重点的に取り組んでいるのが、「働き方の多様化」への対応だ。法制度の煩雑化や増え続ける業務量、民間企業とのギャップ、ライフプランや価値観の多様化、テレワーク・モバイルワークなどの問題が、「地方公務員としてのやりがい低下に繋がります」と北岡氏は指摘する。
これら課題を解決すべく、職員の業務効率化と働き方への対応を目的として、さまざまな自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)施策を推進している。合併当初から自治体ネットワークの「三層分離」を実施。シングルサインオン対応や内部情報ソリューション、文書管理システム、画面転送システム、モバイルPCやデュアルディスプレイの導入に加え、複合機の統合、議会のICT化、本庁舎のWi-Fi整備なども実現してきた。なおネットワーク機器や無線LANアクセスポイントには、アライドテレシス製品が導入されている。
さらに2020年3月には「三豊市デジタルファースト宣言」を策定。フリーアドレス導入によるオフィス改革やクラウド型電話交換機の採用、庁内LANの刷新などを進め、2024年には「シン・ワークスタイルプラットフォーム」の構築に至った。
市民情報保護を最優先に、α'モデルでクラウド活用と安全性を両立
三豊市が構築したシン・ワークスタイルプラットフォームは、「新」しい、そして「真」のワークスタイルを実現するための基盤である。その実現手段の一つがローカルブレイクアウトの導入だ。
「グループウェア更新時に、他の自治体の事例などもを参考に使いやすさを追求した結果、ローカルブレイクアウトが有効だと考えるようになりました」と北岡氏は語る。
検討の結果、クラウドUTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)を採用し、ローカルブレイクアウトを実現。これにより、三層分離を従来のαモデルから「α'モデル(*)」へと移行し、セキュリティを担保しながらもパブリッククラウドを活用できる構成とした。
なぜβモデルではなくα'モデルを採用したのかとの問いに対し、北岡氏は私見ではあるが、と前置きしながらこう語った。「行政が行うべき仕事はインターネット業務ではなく、9割は申請主義の行政手続きです」とし、行政と申請者との接点はオンライン手続きやプッシュ通知にあると強調する。「すべてにおける最優先は市民の個人情報を守ることです」としたうえで、あらゆる接続を疑って確認、認証するゼロトラストの考え方は、現段階の自治体業務においてはコストと運用面の負担が大きく、現実的な選択肢とは言いがたいと判断。それでもクラウド活用の利点は享受したいとの思いから、「コストや手間がかかるβモデルではなく、現実的な運用と安全性を両立できるα'モデルを選択しました」と北岡氏は言う。
α'モデルの採用にあたっては、クラウドUTMとオンプレミスUTMを比較し、コストや運用面を多角的に検討。その結果、メンテナンスや現地対応が不要であり、将来的なネットワーク変更にも柔軟に対応できるクラウドUTMが適していると判断。そして最終的に採用されたのが、「Allied SecureWAN(アライド セキュアワン)」である。
Allied SecureWANはクラウド型UTMの利点を生かしつつ、拠点間接続やインターネット接続といったネットワーク機能も提供するSASE(Secure Access Service Edge)サービス。従来は拠点単位で設置していたUTM機器をクラウド上に統合することで、安全かつ効率的な運用を実現し、ローカルブレイクアウト環境にも対応可能だ。
クラウドUTMの導入に際しては、庁内のプロキシ設定をPACファイル(プロキシ自動設定ファイル)に切り替え、特定SaaS宛の通信のみクラウドUTMを経由し、それ以外の通信はLGWANプロキシへ転送する構成とした。「庁内パソコンの設定を本当に少し変えただけで、切り替え自体は非常にスムーズにいきました」と北岡氏は振り返る。
* α'モデルは既存のαモデルのまま一部のクラウドサービスを安全に使う方式。
一方、βモデルはゼロトラストを前提に全ての業務をクラウドに移行する構成。
クラウド活用とI T環境改革の先に職員育成と次のDXステップへ
三豊市は今回、グループウェアの接続先をクラウドUTMに切り替えるとともに、ローコード開発ツールやユーザー認証を提供するIDプロバイダーをローカルブレイクアウトで利用可能とした。
またセキュアブラウザ機能を備えた業務用スマートフォンを職員に配布し、安全に特定クラウドサービスへアクセスできる環境を整備。
さらに中継アプライアンスを経由することで、インバウンド通信を許可することなくメールサーバーへの接続も実現した。これにより庁内のパソコンに加え、スマートフォンを活用した業務でも、パブリッククラウドを安全かつ快適に利用できるようになっている。
北岡氏は次のように語る。「人事や計画、財政などの部署でも、パソコンやスマートフォンを通じて引継書や業務の最新版などが見られるため、多くの職員が積極的に利用しています」。2025年度には、
特定クラウド接続系ネットワークにMicrosoft 365を追加し、さらなる業務効率化を目指す計画だと言う。
クラウドUTMの設定や運用については、アライドテレシスのパートナーである株式会社四電工と連携し、積極的な支援を行っている。「ひととおりやりたい事は全て洗い出し、最適な構成を考えてもらったうえで構築しています。職員からの問い合わせもなく、問題なく使えています」と北岡氏は評価する。
三豊市は、長い時間をかけてボトムアップで自治体DXを推進してきた。そして現在は、パブリッククラウドや業務用スマートフォンの活用といった段階を経て、次なる段階へと歩みを進めようとしている。「平成の時代から進めてきたインフラや環境の改革はひと段落したと思います。これからは職員のITリテラシー向上やBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング:業務改革)などです。ローコードツールなどのITツール活用ができる人材の育成を進め、また業務効率化を現場で取り組んでもらえるような職員を育成していきたいと考えています」と北岡氏は展望を語った。
アライドテレシスはこれからも、三豊市の業務効率化やサービス高度化の実現に向けて、製品や技術、サービスの提供を通じ、積極的な支援を続けていく。
導入ネットワーク構成イメージ図
導入企業基本情報
三豊市
総務部総務課デジタル推進室
副主任
北岡 千宙氏
- 自治体名
- 香川県三豊市
- 市役所所在地
- 香川県三豊市高瀬町下勝間2373番地1
- 行政面積
- 222.69平方キロメートル
- 人口
- 57,377人
- 世帯数
- 23,285世帯
- URL
- https://www.city.mitoyo.lg.jp/
香川県西部に位置し、瀬戸内海に面した自然と歴史の豊かな都市。紫雲出山の絶景や浦島太郎伝説の地など、神話と風土が調和した景観を有する。四国八十八箇所の札所を含む寺院も多く、巡礼地としても親しまれている。交通アクセスにも恵まれ、JR予讃線や高松自動車道が市内を通る。温暖な瀬戸内海式気候のもと、農水産業も盛んで、暮らしやすさと観光資源を兼ね備えた地域である。
人口は、2025年5月1日現在の情報
パートナー企業基本情報
- 会社名
- 株式会社四電工
- 本社
- 香川県高松市花ノ宮町2丁目3番9号
- 設立
- 1963年
- 代表
- 代表取締役社長 関谷 幸男
- URL
- https://www.yondenko.co.jp/
香川県高松市に本社を置く総合設備企業で、電気・空調・給排水・通信などの建築設備工事を中心に、再生可能エネルギーや農業分野にも事業を展開している。四国電力グループの一員でもある。