県立安芸津病院 様

100床規模病院の医療ネットワークモデルケースを目指して ~組織コミットメントを強化してスタッフ一丸で医療DXを推進~

広島県の県立安芸津病院は、医療DXの推進に向けて院内LANの更新と仮想ブラウザの導入を実施。セキュリティ対策も将来のゼロトラスト導入を視野に入れ、トレーニングやリテラシー教育などを取り入れつつ、現場や事務方も含め病院全体で協力してネットワーク構築を行った。そして、このプロジェクトを提案から事前のサーベイ、構築、運用支援まで幅広く支援したのがアライドテレシスだ。(2024年3月公開)

業種・業務
医療
ソリューション
ネットワーク運⽤ AMF Vista Manager シリーズ スイッチソリューション VCS 無線LAN AWC セキュリティ UTM&VPN PoE
導入製品
システムインテグレーション ネットワーク運用 コアスイッチ ディストリビューションスイッチ 無線LAN ITサービス(Net.Service)
導入目的
ICT活用 VDI(仮想デスクトップ) 統合ネットワーク ネットワークの改修・増築・刷新 運⽤・管理の向上 環境の整備 統合管理 安定稼働・安定通信 無線LANの簡単導入 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 業務効率の向上 コスト削減
課 題
・老朽化や複雑化による通信パフォーマンス低下の解消
・職員や患者が利活用できるインターネット環境の整備
・業務効率化や働き方改革にもつながる医療DXの推進
採用ポイント
・製品のコストパフォーマンスの高さ
・将来のゼロトラスト導入に向けた拡張性の高いセキュリティ対策
・ネットワーク専門ベンダーならではの手厚いサポート
効 果
・統合ネットワークで院内LANの基盤強化
・職員の業務効率や医療サービスの質が大きく向上
・HMネットの活用による地域医療連携のさらなる強化

病院を挙げて医療DXを推進する県立病院

  広島県東広島市の県立安芸津病院は、「私たちは,地域の皆様の健康と暮らしを支えるために力を尽くします。」を理念に掲げる、地域の中核病院。病床数は98床で、うち29床は地域包括ケア病床だ。
 近年、医療機関は規模の大小にかかわらず「医療DX」を推進しており、県立安芸津病院も積極的に取り組んでいる。
 もともと県立安芸津病院はインターネット環境も整っているとは言えない状態だったという。「自分のスマートフォンでテザリングしてインターネットを使うといった状況でした。先生が論文を書くために何かを調べるにも不便で、患者さんからもインターネットを使いたいといった要望がありました」と話すのは、院長の後藤 俊彦氏。
 そこでインターネット環境を含め、さまざまな課題を解決し、同時に医療の質向上、業務の効率化などを実現する医療DXを進めることとした。
 2021年から22年にかけて院内LANを更新し、2022年から23年にかけては仮想ブラウザの導入も行った。県立安芸津病院のITを担う、放射線科医療専門員の守本 京平氏は、「どんなシステムやネットワークを導入するにしても、将来的にはゼロトラストがセキュリティ対策の基準となりますので、そこにあうものを導入したというのが前提です」と語る。
 また今回の院内LAN更新、仮想ブラウザ導入は、病院を挙げての取り組みとして進めた。「現場も事務方もみなで協力して、トレーニングやリテラシーの向上なども行いながら、配線から接続まで行いました。これによるDX効果は大きいと思います」と守本氏は言う。

院内LANにはアライドテレシスによる統合ネットワークを導入

  従来の院内LANは、2011年に電子カルテを導入した際にセットで整備したネットワーク機器が老朽化し、島ハブの増加による接続端末の把握が困難、障害発生時は早期に検知することも難しくなっていた。また無線LANについても医療系で導入はしていたものの、業務をさらに効率化し、患者満足度を向上するために整備が必要だった。
 そこで、信頼性の高さやさまざまな意見を言えることをポイントにネットワークベンダーを選定。医療関係者が集い意見交換を行えるコミュニティ「医療ユーザー会」を持つアライドテレシスが採用された。
採用の理由を守本氏は、製品のコストパフォーマンスが高いこと、拡張性が高いこと、導入資料(完成図書など)の品質が高いことを挙げた。「病院ネットワークはとにかく高性能で高価なものを導入しがちですが、アライドテレシスの機器は、必要十分な性能・機能を持っています」と守本氏。
 構築は病院一丸となって取り組み、島ハブによる分配廃止を徹底し、耐震化改修工事を想定して主要スイッチ類を全て新棟に設置。各フロアスイッチ、エッジスイッチを冗長化して、障害発生から復旧までの時間を最小限にできるようにしている。また院内どこにいても無線LANを利用できるようになり、患者用Wi-Fiも整備。医療機器ベンダーのメンテナンス回線はIPsec-VPNを導入してサーバー室に統合することでセキュリティリスクを大幅に軽減している。
 ネットワークはアライドテレシスのAMF(Autonomous Management Framework)による統合インフラとなっており、「ネットワークの基盤がしっかりしているからこそ積極的な利活用ができます。どこに繋がっているか分からない状態ではセキュリティは守れません」と守本氏は評価する。なお今回の更新で警告灯とも連動することで、不測の事態が発生しても、発生した異常をいち早く確認できる。

地域医療連携を加速させる仮想ブラウザを採用

翌2022年から23年にかけては、仮想ブラウザの導入を進めた。こちらもアライドテレシスの提案を採用したもので、地域医療連携の推進に向けてHMネット(ひろしま医療情報ネットワーク)に参加するための導入だ。「電子カルテ系の端末からもHMネットを安全に利用するための仮想ブラウザで、これにより先生方の利便性が大きく向上しました」と守本氏。ローカルコンテナ型の仮想ブラウザ「RevoWorks Browser」により、電子カルテ系とインターネット系で別々の端末を利用しなければならない手間から解放され、診療情報などを手軽に閲覧できるようになった。
 院内無線LANが整備され、仮想ブラウザも導入したことにより、「職員自身のPC・スマホや電子カルテ端末でもインターネットに接続できるためWeb会議に参加しやすくなったほか、看護の専門的情報収集や研修(eラーニング)などにも活用できるようになりました。また地域の医療機関に患者紹介する際は、紹介先の医療機関の診療時間や交通アクセスなどサクサク検索でき、患者さんにスピーディに情報提供できることで待ち時間の短縮にも繋がっています」と話すのは、副院長兼看護部長の胡 美恵氏。こうした業務の効率化やスピード向上は職員の働き方改革にも繋がると言う。
 今回のプロジェクトにおいて、アライドテレシスは積極的な支援を行ってきた。「無線LANの整備では導入前だけでなく、導入後にもサーベイを行ってもらっていますし、ネットワークのセグメンテーションなども支援してもらっています。ネットワーク専門ベンダーだからこそできることで、インテグレーターではそこまでできないと思います。高く評価しています」と守本氏は語る。

地方独立行政法人化も見据えて医療DXへの取り組みは続く

広島県は県立広島病院、JR広島病院など4施設を統合して、2030年に1000床の新病院を開設する。それに先立ち、2025年4月には地方独立行政法人を設立、県立安芸津病院のほか県立広島病院とJR広島病院が参画し、新病院開設に向けた準備を進めている。
 県立安芸津病院はこれにより運営母体が広島県から地方独立行政法人に変更となるため、これまでのシステムを変更する必要がでてくる可能性があるという。「今まで県庁LANを使っていた部分が使えなくなります。システム変更は県が主導して行いますが、県立安芸津病院としてもその実作業が必要になると思われます」と語るのは、副院長兼事務長の安井 聖二氏だ。
 運営母体が変わることにより、例えば県庁LANを使っている出勤管理や年休管理システム、医療系の電子カルテなど、変更の可能性もあるため、そうした準備や確認の作業が増える可能性もあると安井氏は言う。
 ただ、そうしたさまざまな変化が予測される状況でも医療DXの推進は継続していく。後藤院長に今後の展望を聞いた。「今回の院内LAN更新、仮想ブラウザ導入などは医療DXの推進に非常に大きな貢献をしてくれていると思います。ボタン一つで世界に繋がる今、私たちは多様な情報を的確につかみ、大いに活用していくことを目指しています。先生方が海外の論文を読んだり、海外の学会にもエントリーしてもらったりということも期待しています」と力強く語った。
 アライドテレシスはこれからも、製品や技術、サポートの提供を通じて、県立安芸津病院の課題解決を積極的に支援していく。

導入ネットワーク構成イメージ図

導入企業基本情報

お客様プロフィール

県立安芸津病院
院長
後藤 俊彦 氏

所在地
広島県東広島市安芸津町三津4388
病床数
98床(内訳)一般病床69床・地域包括ケア病床29床
設立
1944年
診療科目
12科
URL
https://www.hpakitu.jp/
取り組み

主に東広島市安芸津町、竹原市、呉市安浦町、豊田郡大崎上島町を診療圏域とする県の中核病院。地域医療連携にも注力しており、地域の医療機関等と連携を図り、患者の受診や転院などの支援を行っている。

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