名古屋市 防災危機管理局 様
<防災DX>名古屋市内372か所の市立小中学校に災害時用Wi-Fi環境を整備
愛知県名古屋市では、災害用通信環境の整備を実施。ルーターや無線LANアクセスポイントなどをクリアケースにパッケージして、市内372か所の市立小中学校の体育館などに設置を行った。発災時には災害用SSID「00000JAPAN」を利用して、誰でも避難所で通信ができるWi-Fi環境を構築した。ネットワーク機器はアライドテレシス製品が導入されており、災害時の通信環境の基盤を担っている。(2023年7月公開)
- 業種・業務
- 自治体
- ソリューション
- UTM&VPN
- 導入製品
- 無線LAN ルーター(有線LAN)
- 導入目的
- 公衆無線LAN ICT活用 ネットワークの新規構築 環境の整備 セキュリティの強化 災害対策
- 課 題
-
災害時における避難所での通信環境の確保
誰でも簡単に使える通信手段の確立
- 採用ポイント
- 仕様要件を満たしながらも適正なコストとGIGAスクール構想で市内市立小中学校でも利用されている実績を応札業者が評価
- 効 果
-
発災時に避難所で誰でもスマートフォンなどを利用して情報収集が可能に
日頃から運用訓練などを行い、万一の時でも円滑な活用を可能に
「防災DX」への取り組みも進めている名古屋市
愛知県の県庁所在地、名古屋市は中部地方最大の政令指定都市だ。中枢中核都市にも指定されている。人口は約233万人(令和5年7月現在)。
名古屋市はこれまで伊勢湾台風や東海豪雨などの自然災害に見舞われ、また名古屋市を含む地域では東海地震や東南海地震などの大規模地震により甚大かつ広域的な被害を受けることが危惧されている。そのため自分で自分や家族を守る「自助」、市民や事業者が助け合って地域を守る「共助」、行政が市民や事業者の活動を支援し、それらの者の安全を確保する「公助」の理念を念頭に、市民、事業者及び市が協働して、安全で安心して暮らせる災害に強いまちづくりを推進している。その一環として、名古屋市では2006年10月16日に「名古屋市防災条例」を公布した。
さまざまな災害対策や危機管理の取り組みが進められるなかで、防災危機管理局地域防災室が担っている役割の一つが、避難所の環境整備だ。
「国の指針も参考に、とくに地域防災室が注力しているのが避難所の環境整備です」と言うのは、名古屋市防災危機管理局地域防災室主査(住民支援担当)の山本浩規氏だ。地域防災室では、お年寄りや身体が不自由な方など、いわゆる要配慮者の防災施策にも注力していると話す。
また近年は「防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」も進んでおり、災害対策本部用の部屋は通信設備や大型ディスプレイが設置され、緊急時のオンライン会議などが開催できるようになっている。
市内372か所の市立小中学校に災害用通信環境を整備
災害時の避難所環境にはさまざまな課題が存在するが、中でも通信環境は大きな課題となる。
「平成25年に内閣府が示した“避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針”に基づいて、さまざまな検討・取り組みを進めてきましたが、平成28年4月の熊本地震の際、情報収集やそのための通信環境といったところの重要性が確認されました」と山本氏。
名古屋市では避難所に専用のテレビや非常用発電池を設置し、情報収集を行う施策を進めてきたが、熊本地震の発生、さらに翌年の「熊本地震における被災地のWi-Fi利用状況等に係る調査研究」において、スマートフォンを利用した情報収集の比率が6割を超えたと報告されたことを受け、避難所の情報収集、通信環境を強化することを検討。総務省の「防災等に資するWi-Fi環境の整備計画」の主旨に基づき、避難所や避難場所として想定される拠点の情報伝達手段を確保するための施策を決定した。
「ちょうどGIGAスクール構想も進んでおり、避難所となる市立の小中学校のWi-Fi設備を災害時にも活用できないかなど、教育委員会とも話をして、仕様を決定しました」と山本氏。
決定した仕様は、市立小中学校の教育環境の整備の一環として構築を進めているネットワークを併用して、災害時に避難者に対してWi-Fi環境を提供できるよう災害用通信環境の整備を行うというもので、市内372か所の市立小中学校の主に体育館などに整備を行う。
Wi-Fi環境は災害用SSID「00000JAPAN」への参加を前提としている。「災害用のルーターと無線LANアクセスポイントを、校内学習用ネットワークに接続するだけでインターネット接続できるように予め設定し、それら機器をまとめてクリアケースに入れ保管し、発災時には体育館等の情報コンセントに機器を繋げば「00000JAPAN」が自動で使用可能になり、誰でもすぐ通信環境が使えるようになります」と話すのは、名古屋市防災危機管理局地域防災室主事の加藤良典氏だ。
「00000JAPAN」は、災害時に全国の公衆無線LANスポットにおいて無料で提供されるWi-Fiサービスで、その際のSSIDが「00000JAPAN」となる。これにより、発災時には避難所などで、スマートフォンで各種情報を取得したり、外部と連絡を取ったりすることができる。とくに大規模災害が発生した際には携帯電話の通信網が混雑したり、一部が利用できなくなったりすることがあるため、「00000JAPAN」のような無線LANサービスは、災害時の通信手段を確保する重要な要素の一つとなる。
ルーターや無線LANアクセスポイント、ACアダプター、LANケーブルなどをクリアケースに入れ、発災時に分かりやすく、容易に利用できるように説明書も同梱する。体育館までのLAN配線が無い市立小中学校については、必要に応じて体育館までの中継ハブスイッチの設置・設定なども要件とした。
学校ごとの事情に配慮しながらスケジュール通りに工事を完了
仕様書に基づいて入札が実施され、応札したのは西日本電信電話株式会社(NTT西日本)。NTT西日本では仕様書に沿って、導入機器を提案。その機器としてNTT西日本が選んだのがアライドテレシスのネットワーク機器だ。名古屋市の市立小中学校ではすでにアライドテレシス製のスイッチが採用されているケースもあったため、コストに加えて、そうした実績なども考慮して提案を行ったという。
設置工事については、2021年9月から実施し、スケジュール通りに完了した。「小中学校さんによって、学校行事や校舎のリニューアル工事を行っているなどありましたので、それぞれの都合に配慮して工事スケジュールを調整しました。一校一校の事情を勘案しないといけないこともあり、苦労しました」と山本氏は振り返る。工事はNTT西日本が中心となって行った。
各避難所では普段から、それぞれの地域と連携して訓練などを実施している。災害用通信環境についてもその際に点検をしているが、繋がらない・遅いといった声はこれまでとくに上がっていないという。
「もちろん災害が起きないに越したことはありませんが、発災時に確実に使えるように運用訓練を行っていきます」と山本氏は言う。
避難所生活環境向上に取り組む
市立小中学校における災害用通信環境の整備を完了した名古屋市。今後、運用訓練における感想や発災時における実際の利用から効果を確認するとともに、問題点を抽出し、改善を図っていきたいという。
「市民の方の防災に対する意識が薄れているとも言われていますので、まず避難所にはこうしたWi-Fi環境が入っていることを知ってもらうことも重要だと考えています。災害は起きないことが何よりですが、万一の際には導入してよかったなと思っていただけることを期待しています。もちろんWi-Fi環境に限らず、避難所のさらなる生活環境向上に取り組んでいきます」と山本氏は語る。
アライドテレシスはこれからもNTT西日本とともに、名古屋市の災害用通信環境をはじめとしたネットワークの課題に対し、製品や技術、サポートなどの提供を通じて、積極的に支援を行っていく。
導入ネットワーク構成イメージ図
導入企業基本情報
お客様プロフィール
名古屋市防災危機管理局
地域防災室
主査(住民支援担当)
山本 浩規氏
- 自治体名
- 名古屋市 防災危機管理局
- 所在地
- 愛知県名古屋市中区三の丸三丁目1番1号
- URL
- https://www.city.nagoya.jp/
取り組み
名古屋市の防災・危機管理について総合的な企画・調整を行う。
パートナー企業基本情報
お客様プロフィール
西日本電信電話株式会社 東海支店
ビジネス営業部
第二エンタープライズビジネス営業部門
公共営業担当
営業担当課長代理
野呂 義高氏
- 会社名
- 西日本電信電話株式会社
- 本社
- 大阪市都島区東野田町4丁目15番82号
- 設立
- 1999年
- 資本金
- 3,120億円
- 従業員数
- 1,500人
- URL
- https://www.ntt-west.co.jp/
取り組み
音声伝送サービス、データ伝送サービス、専用サービス、電報サービスのほか、電気通信コンサルティングなどの業務を行う。