日本赤十字社 大津赤十字病院 様

<医療×IT戦略>サーバー仮想化基盤の分散と統合管理で“止まらない医療”を支える強靭なIT-BCP環境を実現

滋賀県大津市にある日本赤十字社 大津赤十字病院は、中核病院・基幹災害拠点病院として地域医療の最前線を担いながら、院長直轄のDX推進室を設置し、医療現場のデジタル変革とセキュリティ強化を積極的に進めている。部門システムの増加にともない、既存の仮想化基盤の容量がひっ迫するなか、アライドテレシスの提案によりNutanix Cloud Platform(NCP)を利用した新たなサーバー仮想化基盤を導入。運用サポートやバックアップ統合も含む包括的な支援を受け、効率的かつ安定したITインフラ環境を実現した。(2025年8月公開)

医療・福祉 近畿 病床数:672床
目 的
ネットワークの安定稼働 通信の改善(高速化・帯域強化) サーバーの仮想化 運用・管理の効率化 データ保全 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 運用・管理・監視を外部委託 業務効率の向上 BCP対策
プロダクト・サービス
HCI Net.Monitor
規 模
500~999
課 題
・既存の仮想化基盤の容量がひっ迫
・障害発生時の業務継続性の確保
・部門システムの増加と運用管理の煩雑化
採用ポイント
・無停止でシステム拡張が可能
・仮想化基盤とネットワーク両方の対応スキルの高さと包括支援体制
・仮想化基盤もネットワークもまとめて24時間体制の遠隔監視で安心運用
効 果
・仮想化基盤の増設で容量不足を解消
・2つの仮想化基盤の並行運用により障害ポイントを分散
・仮想化基盤の統合管理と統合バックアップで運用性と信頼性を向上

DX推進とセキュリティ強化に取り組む基幹災害拠点病院

 滋賀県大津市に位置する日本赤十字社 大津赤十字病院(以下、大津赤十字病院)は672床を有する県内最大級の地域の中核病院。高度救命救急センターや総合周産期母子医療センターを備え、24時間365日体制で、大規模災害の初動から医療支援を行う基幹災害拠点病院として、地域住民の安心と命を支える医療を提供している。
 2024年に院長直轄のDX推進室を設置し、国の方針である全国医療情報プラットフォームへの対応をはじめ、医療DXと病院DXの両面で本格的なデジタル改革に取り組んでいる。メンバーには医療情報部門に加え薬剤師、看護師、放射線技師、医師など多職種の職員が参加。中堅層を中心に、業務効率化やサービスの高度化を目指す取り組みが進められている。設立間もないながらも成果は着実に現れており、「毎月会議で課題を洗い出し、ITを活用して業務改善を図っています。例えば、職員間のコミュニケーションを充実させる目的として、スマートフォンの導入に向けた作業を現在進めています」と大津赤十字病院 事務部 医療情報課長の橋本 智広氏は語る。
 さらに医療機関を標的としたサイバー攻撃の脅威が依然として続くなか、EDR(Endpoint Detection and Response)の導入やバックアップ体制の強化、ランサムウェア対策などセキュリティ強化にも注力しているという。

障害ポイント分散も視野に新たなサーバー仮想化基盤を導入

 大津赤十字病院は以前から仮想化基盤を活用し、部門システムを集約・運用してきた。しかし年々システム数が増加したことで、容量がひっ迫し、既存基盤だけでは対応が難しくなっていた。
 この課題に対して既存基盤にノードを追加して拡張するか、新たな仮想化基盤を構築して今後の増加分を分散させるか、複数の案を比較検討。その結果、既存基盤はそのまま維持し、新たな仮想化基盤を別途構築する方針が採られた。障害ポイントを分散して、どちらかの基盤に障害が発生しても一方で運用を継続できるためである。
 新たな基盤の選定にあたってはHCI(Hyper-Converged Infrastructure)を前提とし、複数ベンダーからの提案を慎重に検討。HCIはサーバーとストレージ、ネットワークをソフトウェアで一体化し、1つの筐体(アプライアンス)に集約したITインフラ。従来の3階層型インフラと比べて構築や拡張、管理が容易で、ノード追加がシステム無停止で可能なことも特長である。既存の仮想化基盤にも同様に他ベンダーのHCI製品が採用されている。
 橋本氏はアライドテレシスを採用した理由について、「院内ネットワークを20年近く任せてきた実績があり、信頼感があります。今回も仮想化基盤の提案内容が優れており、院内ネットワークとの親和性や将来的な拡張性も高く評価しました」と語る。また仮想化基盤の運用支援やバックアップの統合管理など、システム全体を見据えた包括的な提案であることも高く評価された。

NutanixとVeeamを中核に仮想化環境を一元的に運用管理

 仮想化基盤の導入は順調に進み、現在は部門システムの仮想化および基盤への搭載が進行中である。「通常は仮想化基盤とネットワークで別々のベンダーが必要ですが、アライドテレシスは両方対応できるスキルと実績があり、設定や調整もとてもスムーズです。」と橋本氏は話す。
 今回新たに構築した仮想化基盤は、「Nutanix Cloud Platform(NCP)」を採用。4ノード構成により高い信頼性とスケーラビリティを実現しており、医療機関に求められる可用性や拡張性にも対応している。ノード間接続とサービス系接続に10Gbpsネットワークを導入し、サービス系ネットワークは院内ネットワークと接続している。
 2025年5月時点で新基盤には3つの部門システムが仮想化されており、最終的には約30システムの搭載を予定しているという。既存基盤上でも30程度のシステムが稼働しており、両者を合わせると、今後は約60の部門システムが仮想化環境上で運用される見通しだ。
 運用管理面ではNutanixの統合管理ツール「Nutanix Prism」の使いやすさに対する評価が高い。「導入前からPrismの操作性や見やすさに定評があると聞いていましたが、実際に使ってみると本当に直感的で、状況もすぐに把握できます。運用負荷の軽減に大きく貢献しています。」と橋本氏は語る。
 またアライドテレシスが提供する運用支援サービス「Net.Monitor」は、これまではネットワークに活用していたが、仮想化基盤にも適用。24時間365日の監視が可能になり、より安心して運用を継続できる体制が整った。
 バックアップ環境については以前より既存の仮想化基盤にVeeamを活用していたが、今回アライドテレシスの提案により、新たに構築した仮想化基盤にも同様にVeeamを導入。その上でこれら2つのバックアップ対象を一元的に管理できる「Veeam ONE」を採用した。これによりバックアップの可視性と運用効率が向上し、各システムの保護と復旧の信頼性がさらに高まっている。

「選択肢が多いこと」が重要。拡張性と継続支援体制を見据えたIT戦略

 今後Nutanixの仮想化基盤の容量が再びひっ迫する可能性について橋本氏に尋ねたところ、「ノードを増設したりクラスターを分割して拡張したり、あるいは別のベンダーの仮想化基盤を導入したりすることも選択肢のひとつです。ITを運用していく上で、“選択肢が多いこと”が非常に重要です」と強調する。状況に応じて最適な手段を選択することで、より使いやすく、より安全なIT環境の実現が可能になるという考えである。
 仮想化基盤の導入が一段落し、アライドテレシスへの評価についても聞いた。「長くお付き合いしていることが、信頼の証だと思います。対応もとても迅速で親身ですし、“導入して終わり”ではなく、いつも新しい提案をしてくれるのが本当にありがたいです。」と橋本氏は語る。
 また、厚生労働省のガイドラインに基づき、サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)の策定にも積極的に取り組んでいる。「IT-BCPについては策定だけでなく、定期的な訓練も実施しています。サイバー攻撃が続く限りは対策も止めることはできません」という。一方で、病院としての次なる課題として、職員の働きやすさにも注力する構えだ。「今後は職員一人ひとりの働きやすさにも目を向け、ITを活用してより良い病院づくりを進めていきたいと思います」と展望を語った。
 アライドテレシスはこれからも製品や技術、サポートなどの提供を通じて、大津赤十字病院のIT環境の課題解決を積極的に支援していく。

導入ネットワーク構成イメージ図

導入企業基本情報

大津赤十字病院
事務部 医療情報課長
情報処理安全確保支援士試験合格
上級医療情報技師育成指導者
上級医療情報技師 診療情報管理士
橋本 智広氏

病院名
日本赤十字社 大津赤十字病院
所在地
滋賀県大津市長等一丁目1-35
院長
病院長 小川 修
開設
1876年
病床数
672床
標榜診療科目
37診療科
URL
https://www.otsu.jrc.or.jp/

日本赤十字社滋賀県支部が開設した滋賀県大津市の医療機関。基幹災害拠点病院のほか高度救命救急センター、地域医療支援病院、がん診療連携拠点病院、総合周産期母子医療センター、一次脳卒中センターなどの承認・指定も受けている。

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