富士市 上下水道部 様

上水道施設監視システムの基盤となるネットワークをAMFで構築

静岡県富士市では、上水道の水源や配水池施設を監視するシステムの基盤となるネットワークを、 アライドテレシスのAMF(Allied Telesis Management Framework)対応機器で構築した。 AMFにより、約90カ所の施設を結ぶネットワークの一元管理を実現するとともに、万一の際に は素早い切り分けと復旧を可能とする、耐障害性の高いネットワークを構築した。(2018年9月公開)

官公庁・自治体 中部 人口:254,203人
目 的
ネットワークの安定稼働 運用・管理の効率化 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化 業務効率の向上
プロダクト・サービス
スイッチ VCS AMF ルーター UTM&VPN
規 模
200,000~499,999

富士山が生み出す豊富で良質な地下水

 富士市は静岡県東部に位置する中核都市だ。富士市では、あらゆる世代が幸せを実感できるまち富士市の魅力を市民が共有し、市内外に発信していくシティプロモーションを推進。さらに、ブランドメッセージとして、「いただきへの、はじまり富士市」を掲げ、ブランド力の向上に取り組んでいる。
「海抜0メートルから富士山までを市域に持つ唯一の市という、富士市のオンリーワンの魅力を一言で表したブランドメッセージです。世界遺産である富士山と海を市内に持つのは富士市だけです」と話すのは、富士市上下水道部水道維持課原水施設担当統括主幹の渡辺徳夫氏だ。さまざまな富士山の恵を受ける富士市。豊富な地下水もそのひとつだ。「富士市の水道は、水源のほとんどが地下水です。
水道水を100%地下水でまかなっている自治体は多くありません。地下水はそのまま飲めるほど良質ですので、揚水した後、消毒での処理のみをしていますが、おいしい水を各家庭にお届けしたいため、注入量を抑えています」と渡辺氏は言う。

システムのIP化と90拠点のネットワークを刷新

 富士市内には120カ所を超える上水道施設があり、上水道管理センターで集中監視を行っている。富士市上下水道部水道維持課原水施設担当上席技師の飯田和浩氏は、「市内には水源となる井戸80本のほか、浄水を蓄える配水池などもあります。これら全ての施設を24時間365日監視しています」と話す。水位や流量、水質などを常に監視して、各家庭へ安全な水を送っているのだ。
富士市では今回、この水道施設の監視システムおよびネットワークの刷新を行った。従来の監視システムは管理センターと各拠点をアナログ専用線で結んで情報を収集していたが、さまざまな課題が生じていた。「システム自体は20年程前に構築して改修を続けてきました。
ただ、システムがメーカー独自のもので、様々な対応をすべてメーカーに任せなければなりませんでした。システムのちょっとした変更でも大きな改修作業が必要でした」と渡辺氏は課題を語る。加えて、ネットワークがツリー型になっていたため、途中の経路で障害が発生するとその配下の拠点からの情報がすべて止まってしまうことも課題だったという。そこで、監視システムとネットワークを新たに構築することを検討し始めた。ネットワークの要件について飯田氏は、「社会インフラですからサービスが停止することがあってはなりません。
管理センターのネットワークはフォールトトレランスであること、各拠点については万一の障害に素早く対応できるよう、耐障害性をとくに重視しました」と語る。加えて渡辺氏は、「緊急対応を職員や地元の業者で行えることが重要なポイントでした。そのため、システム、ネットワークともに仕様がオープンで汎用的な機器で構築したいと考えました」と言う。

AMFによる素早い復旧、耐障害性強化を高く評価

 さまざまな検討を経て、新たなネットワークに導入されたのがアライドテレシスの機器である。管理センターに設置されるコア・スイッチには、アライドテレシスのAMF(Allied Telesis Management Framework)対応の「CentreCOM AT-x930シリーズ」を2台、VCS(バーチャルシャーシスタック)機能を使った冗長構成で設置。
センタールーターはVPNルーター「AT-AR4050S」、各拠点にはVPNルーター「AT-AR2050V」が採用され、各拠点のエッジ・スイッチには「CentreCOM AT-x230シリーズ」が設置されている。AMFは、複数のネットワーク機器の一括設定や一括アップデート、遠隔地からの管理・設定変更、事前設定不要の機器交換といった運用を可能とするアライドテレシスが独自開発した機能である。
飯田氏は、「AMFのオートリカバリー機能を使えば、機器が故障しても予備機に入れ替えるだけで復旧できますが、90もの拠点の耐障害性、復旧を考えたときにこれは大きなメリットだと考えました」とAMFを高く評価する。監視ツールとして「AlliedView NMS Standard Edition」も導入しており、素早い検知と切り分け、障害対応が可能だ。
「管理センターについてはVCSでコア・スイッチを二重化しフォールトトレランスとしています。管理センターを含む各拠点についてはNMSで監視を行い、ネットワーク全体が万全の監視体制となりました」と飯田氏は語る。

セキュリティを担保しつつランニングコストを大幅削減

 約90拠点を結ぶ新たなネットワーク構築の作業は約7ヶ月に及んだ。渡辺氏は、「これほど多拠点での工事ですので、本来はもっと時間を要しますが、アライドテレシスの支援も受け、約7ヶ月で完了することができました」と語る。ネットワークの構築と同時に、監視システムの刷新も2017年度内に無事完了した。新システムの稼働開始後、ネットワークは安定して稼働している。
「一度だけ機器トラブルがありましたが、AMFを使って予備機と交換し10分もかからずに復旧することができました。従来とは比較にならないほどの時間短縮です」と話すのは、富士市上下水道部水道維持課原水施設担当主査の小山修一氏だ。飯田氏も、「従来はシステムとネットワークが一体化していたため、ユーザー側での障害切り分けには限界がありました。今回導入したAllied View NMSでは、障害の検知も切り分けも容易です」と評価する。
今回刷新した監視のシステムについても、「トレンドがリアルタイムで、どこでも見られるようになり、格段に監視能力が上がりました」と小山氏は語る。そして今回、大きな効果の1つとして現れたのがコスト削減の効果だ。「ハードウェア更新に係るランニングコストは約1/2になりました。
大きなコスト削減効果です」と渡辺氏。また、管理センターと各拠点との接続回線は、従来のアナログ専用線からIP-VPNに変更しており、通信に掛かるランニングコストも2/3になり、削減効果は大きいという。更に、「通信はトンネリングと暗号化を行っています。セキュリティについては専用線と同等以上のレベルを確保できています」と飯田氏は言う。

さらに耐障害性、耐災害性を高めていく

 管理センターと岩本山公園にある配水施設との間に無線のバックアップ経路を用意し、回線障害を動的に回避できるようにした。同時に岩本山公園側にコールドスタンバイ構成を準備したことで、万一管理センターが被害を受けた場合でも、監視が継続できるようになった。「回線障害だけでなく、管理センター自体の被災にも対処できるようになったことは、水道インフラの管理として非常に大きな意味があります」と渡辺氏。システム全体をIPに対応させたことにより、ネットワークトポロジーは論理的に自由な構成がとれるようになった。
富士市のネットワークでは、回線インフラとしてNTTのIP-VPNを採用したが、他の回線インフラをルーティングに介在させることも可能だ。今後のさらなる展開について「無線ブリッジのバックアップ経路を重要拠点から順次追加し、さらに耐障害性、耐災害性を高めて、堅牢なネットワークを構築していく計画です」と飯田氏。「無線によるバックアップは、ランニングコストが掛かりません。これもIP化による恩恵のひとつだと考えています」と渡辺氏は言う。
安全な水道供給の基盤となる監視システムの刷新を行った富士市。そのシステムを支えるネットワークを担うアライドテレシスについて、飯田氏は次のように評価する。「システムの運用ポリシーから私たちが求めるネットワーク要件について十分な打ち合わせを持ち、それを設計に落とし込んでいただきました。AMFやVCSはもとより、高可用性で障害に強いネットワークは、用途に合ったトポロジーやシステムを構成する機器の配置、また障害復旧の対応方法など、慎重な検討による総合的な基本設計の上で成り立つものだと思います。
アライドテレシスの支援により、これらを満たした質の高いネットワークが構築でき、非常に満足しています」と飯田氏は語った。渡辺氏は、「従来は監視項目一つ増やすにも大規模な改修が必要でした。今回完全にIP化したことで、将来的に、多様なICT技術を導入可能なシステムの基本形を完成することができました。これらは低コストで、しかも容易に、機能的な拡張も可能と考えています。
今後も更なるネットワークの整備と監視体制の効率化を図り、市民の皆様に安全でおいしい水をお届けしたいと思います」と最後に展望を語った。アライドテレシスではこれからも、富士市の水道施設監視ネットワークを、製品や技術、サポートなどの提供を通じて、積極的に支援していく。

導入ネットワーク構成イメージ図

導入企業基本情報

富士市
上下水道部 水道維持課
原水施設担当
統括主幹
渡辺 徳夫氏

地域名
静岡県富士市
所在地
静岡県富士市永田町1丁目100番地
面積
244.95平方キロメートル
人口
254,203人
URL
http://www.city.fuji.shizuoka.jp/

静岡県東部に位置する。豊富な水資源、原料である木材の供給地や製品の消費地への近接などを背景に、全国有数の「紙のまち」として発展してきた。近年では、新しい素材である「セルロースナノファイバー(CNF)」の実用化支援なども行っており、産業振興にも注力している。

※人口は、2018年4月1日現在の情報

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