北九州高速鉄道 様
高い耐障害性が求められる駅務機器ネットワーク基盤を、 アライドテレシス製品で構築
「安全・正確・快適」を合い言葉に、北九州市で安心な移動を提供する北九州モノレール。2015年で開業30周年を迎えた同路線を運営する北九州高速鉄道株式会社では、交通系ICカード(以下、ICカード)およびQR乗車券の導入にあたり、駅務機器の専用ネットワークを構築。アライドテレシスのネットワーク製品を採用し、耐障害性の高い、安定した交通インフラを支える駅務機器ネットワークを構築した。(2015年1月公開)
- 業種・業務
- 公共インフラ
- ソリューション
- スイッチソリューション VCS セキュリティ UTM&VPN
- 導入製品
- コアスイッチ ディストリビューションスイッチ エッジスイッチ ルーター(有線LAN)
- 導入目的
- ネットワークの改修・増築・刷新 安定稼働・安定通信 セキュリティの強化 ネットワーク監視の強化
北九州市の南北を結ぶ、日本初の都市型モノレール
北九州高速鉄道株式会社が運営する北九州モノレールは、福岡県北九州市小倉北区の小倉駅から、小倉南区の企救丘駅まで、総営業距離8.8km、13の駅を擁する都市型モノレールだ。営業開始は1985年で、1998年にはJR九州との連絡運輸を開始。現在、1日の平均利用客は約3万1千人となっており、小倉南区から北区への通勤・通学を中心に、土日には小倉競馬場の最寄りとなる競馬場前駅も多くの人々に利用されている。
同社では、多くの乗客を輸送する交通インフラとして、「安全・正確・快適」を合い言葉として掲げている。北九州高速鉄道株式会社 施設課 総括主任の柳瀬 勉氏は、「中空を走るモノレールですので踏切もなく、事故が少ないことが北九州モノレールの特徴です。開業以来30年、大きな事故は起こっていません。ダイヤの乱れも少なく、他の交通機関が麻痺してしまうような降雪などがあっても北九州モノレールは運行可能です。加えて今年は、お客様にさらに快適にご利用いただけますように、ICカードとQR乗車券を導入しました」と話す。
2015年10月1日から導入されたのが、ICカード「mono SUGOCA(モノスゴカ)」とQR乗車券だ。北九州モノレールでは従来、磁気式の切符・定期券に対応してきたが、今回、自動改札機や券売機を一新し、タッチするだけで改札機を利用できるICカードとQR乗車券に対応した。
柳瀬氏は、「IC化とともに従来の磁気券は廃止しました。QR乗車券は、これまでの磁気券とは異なり、QRコード※1が印字された面を改札機にタッチして通過する切符です。全国相互利用できるICカードとQR乗車券の組み合わせは、全国初の導入となります」と言う。
※1 QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。
利用客の利便性向上のため、ICカードとQR乗車券を導入
ICカードとQR乗車券の導入にともない、自動改札機や券売機、窓口の機器など、駅務機器が一新され、同時に、各駅の駅務機器を結ぶ専用ネットワークが構築された。
同社の駅務機器ネットワークは、開業当初には各駅の駅務機器をオンラインで接続していたものの、その後の更新の際に、コストなどの理由によりオフラインとなってしまい、駅務機器からの情報をメディアで運んでいた。その後、駅の監視モニターネットワークを利用して、データの送信を行う方式に変更されたが、それでもなお多くの課題を抱えていた。
「各駅の駅務機器、パソコン、ネットワーク、本社の集計用パソコンと、すべてが異なるベンダー製のものでした。これでは何か起きた際に切り分けができず、迅速な対応が困難な環境でした」と、柳瀬氏は当時を振り返る。
さらに、全国の交通機関で急速にIC化が進み、同社においても将来的にIC化、他の交通会社との接続といったことも検討していく必要が生じてきた。そこで、そうした将来も見据えて、まずは駅務機器専用のネットワークを新たに構築することを決定した。加えて、これを機に駅務機器およびネットワークを柳瀬氏が所属する施設課で一元管理することとした。
この要件をもとに、柳瀬氏がネットワーク構築の相談をしたのが、オムロン フィールドエンジニアリング九州株式会社(以下、OFE九州)だ。
「今回、導入する駅務機器がオムロン製ということもあり、ネットワークに関しても一元管理したいということで、オムロンさんにご相談しました」と柳瀬氏は話す。
高い耐障害性が求められるネットワークにアライドテレシス製品を採用
新ネットワークの要件としては、「障害が発生するとお客様へのサービスが制限されるだけでなく、お客様のICカードが使用できなくなる恐れもあります。ネットワークは、影響規模に応じた光ケーブルおよび機器の冗長化を図ることで、コストを抑えつつ、お客様へのサービス低下を最小限に留めることが求められました」と柳瀬氏は語る。
ネットワークの中心となる光ケーブルを冗長化した上で、本社に設置するファイアウォールやコア・スイッチ、小倉駅や平和通駅、競馬場前駅といった利用客の多い駅のディストリビューション・スイッチは、故障などによる影響が非常に大きいため、機器を冗長化する。また、故障などのトラブルから迅速に復旧できるようにOFE九州の運用保守サービスを、機器の冗長化とミックスさせることで影響規模に応じたネットワークの障害対策が取られることとなった。
OFE九州は、これらコア・スイッチ、ディストリビューション・スイッチなどにアライドテレシスのネットワーク製品を提案した。その理由について、OFE九州の中原 裕介氏は、「交通インフラを支えるネットワークとして、止まってはいけない、万が一止まっても迅速に復旧することが求められるということで、導入から稼働後のメンテナンスまで、対応の素早さ、手厚さを重視しました。アライドテレシスとはこれまでも一緒に多くのネットワーク構築を行っており、そうした部分の信頼性が非常に高いということでご提案しました」と話す。
今回導入されたのは、コア・スイッチに、イーサネットモジュラースイッチ「SwitchBlade x908」、ディストリビューション・スイッチには、イーサネットスイッチ「CentreCOM AT-x600-24Ts」、エッジ・スイッチには、インテリジェント・スイッチ「CentreCOM AT-x200-GE-28T」などのアライドテレシス製品だ。SwitchBlade x908、CentreCOM AT-x600-24Tsは、VCS(バーチャルシャーシスタック)機能を用いて冗長化され、ネットワークの耐障害性を高めている。
導入にあたってのアライドテレシスの対応も高く評価
ネットワークの導入工事は、OFE九州が中心となり、大きなトラブルもなく、ネットワーク機器の設置などが順調に行われた。2015年3月には、平和通駅に新たな駅務機器を設置しての教育場兼テスト環境が作られ、駅係員への新機器の紹介や教育、本稼働に向けてのネットワーク動作試験や設定変更が進められた。
「平和通駅のテスト環境では、ネットワーク上に仮想の駅を作り、設定変更などの試験を行いました。アライドテレシスの機器はとても使いやすく、ネットワークの分割やセキュリティーの設定などもスムーズに行うことができました」と話すのは、OFE九州の濱脇 香奈江氏。
自動改札機や券売機などの駅務機器の入れ替えが行われたのは2015年9月末。全駅トータルで、券売機が40台、自動改札機が52通路。既存の機器を撤去して、新機器の設置を約1週間かけて実施されたが、乗降客の特に多い小倉駅については、9月30日の一晩で入れ替えが行われた。
「一番緊張したのは、機器を設置し、LANケーブルを挿して、上流のJR九州様のサーバーと確かに接続ができるかというところでした。全く問題なく接続できて安心しました」と柳瀬氏は振り返る。
アライドテレシスでは新駅務機器への切り替えにあたり、なにか起きた時のために、予備の機器を現地に用意して待機していたが、10月1日の切り替えは大きなトラブルもなく完了した。「実際に稼動した時に、機器の故障があってはどうにもなりません。なにごともありませんでしたが、準備をしてもらっていたことが心強く、切り替えの不安要素をなくすことができ、感謝しています」と柳瀬氏はアライドテレシスの対応を評価する。
安定したネットワーク稼働を実現、ICカードの普及も進む
10月1日の正式稼働後も、駅務機器、ネットワークともに安定して稼働している。なお、ネットワークの監視については、アライドテレシスのネットワークマネージメント・ソフトウェア「Swim Manager」を利用し、OFE九州が遠隔で監視を行っている。中原氏は、「故障などのトラブルが発生していないかをビジュアル的に確認することができます。障害が起きたら検知してアラートを出してくれるので、分かりやすいです」とSwim Managerについて話す。
今回の駅務機器専用ネットワークの構築について、柳瀬氏はアライドテレシスへの評価を次のように語る。「駅務機器ネットワークで障害が発生すると、お客様や他の鉄道事業者様にもご迷惑をおかけすることになります。ネットワークの要件はかなり厳しいものでしたが、十分に対応してもらうことができました。また、ネットワークの構築から、実際の駅務機器の稼働まで若干時間が空きましたが、保守・サポートなどについても柔軟に対応してもらいまして、そうした部分も高く評価しています」
新駅務機器導入によるIC化を果たした北九州モノレール。導入初日には、ICカードの利用率が約4割という数字だったが、14日目には約7割まで上昇している。
柳瀬氏は、「滑り出しとしては、想定していた以上にスムーズにシフトしていただいているのではないかと思います。ICカードを利用すれば、券売機で切符を買わなくても、ワンタッチで入場いただけますので、お客様の利便性も向上します。また、改札機に切符の搬送部がなくなりましたので、切符の取り違えや、切符が詰まるなどといったトラブルもなくなりました。そうしたメリットなどもご説明しながら、お客様のご理解、ご協力をいただきつつ、ICカードの普及に努めていきます」とこれからの展望を話した。
アライドテレシスでは今後も、製品や技術の提供を通じて、北九州モノレールの「安全・正確・快適」なモノレール運行を支えるインフラを支援していく。
導入ネットワーク構成イメージ図
導入企業基本情報
お客様プロフィール
北九州高速鉄道株式会社
施設課 総括主任
柳瀬 勉氏
- 会社名
- 北九州高速鉄道株式会社
- 所在地
- 北九州市小倉南区企救丘二丁目13番1号
- 創立
- 1976年7月31日
- 代表者
- 代表取締役社長 斉藤 淳
- URL
- https://www.kitakyushu-monorail.co.jp/
取り組み
北九州モノレールを運営する鉄道事業者。小倉駅から企救丘駅までを結ぶ8.8kmで都市型モノレールを運行。社員一丸となって事故の芽の根絶に全力で取り組み、開業からこれまで事故「0」を守っている。
パートナー企業基本情報
お客様プロフィール
オムロン
フィールドエンジニアリング
九州株式会社
エンジニアリング部
エンジニアリング技術課 リーダ
中原 裕介氏
- 会社名
- オムロン フィールドエンジニアリング九州株式会社
- 本社所在地
- 福岡市博多区東比恵一丁目2番12号 R&Fセンタービル4F
- 設立
- 1975年11月11日
- 資本金
- 4000万円(2015年3月)
- URL
- https://socialsolution.omron.com/field-engineering/index.html
取り組み
全国140箇所の拠点と1,200名のカスタマエンジニアを擁するOFEグループの一員として九州のお客様へ、エンジニアリングサービス/フィールドサービス/コールセンタサービスを24時間365日提供する。